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41 同僚獣人からの誘い
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「レーベンさん。大丈夫? ここのところ、ずっと顔色が悪いようだけど」
「え……ああ……ちょっとね。でも、大丈夫よ。ええと、交通費の申請よね? すぐにやるわ。あ……」
「危ないっ!!」
仕事中。アナリーズは貧血を起こしてふらついてしまった。倒れそうになったアナリーズにサッと駆け寄り支えてくれたのは、日頃から色々とお世話になっている同僚の獣人商会員だ。
「…………あのさ、悩み事を抱えているなら聞くよ。その……実は僕も少し、君に話したいことがあるんだ。だから、お昼は久しぶりにあの店に行かない?」
「え? でも……」
あの店……というのは獣人御用達のあの店だろう。
今日は家にある食材が減ってきたため、昼休みを使って買い出しをするつもりだった。なので、ジョイにはいつも通り弁当を作って持たせたが、自分の分は用意していない。
買い物途中でパンか何かを齧って適当に済ませるつもりだったが……今の体調を考えると、しっかりと食べた方が良さそうだ。
それに、あの店だったらお値段もお手頃だし家計への負担も少ないだろう。
「そう、ね。久しぶりに贅沢しちゃおうかしら」
「たまには僕がご馳走するよ。話があるのは僕の方だし。ほら、この前取引先とのゴタゴタでかなり遅くまで残業をさせちゃっただろう? そのお詫びというか、お礼をさせてよ」
「でも――」
「…実は、もう一件、君に迷惑をかけちゃいそうでさぁ……」
ポリポリと、耳の後ろを掻く同僚獣人。耳が寝てしまっている。
「ふふ、そうなの? 分かったわ。だったら今日はお言葉に甘えてご馳走になっちゃおうかしら。でも、残業はむしろ助かるから本当に気にしないでいいのよ?」
「……うん。じゃあ、昼休みに」
しょんぼりと。耳を垂らす姿についジョイの姿を重ねてしまい、アナリーズは同僚からの誘いを受けることにした。
「――さてと! 美味しいお昼ごはんの為に、もうひと踏ん張りしますか!」
この日の同僚との昼食で。アナリーズは大きな衝撃を受けることになる。
「え……ああ……ちょっとね。でも、大丈夫よ。ええと、交通費の申請よね? すぐにやるわ。あ……」
「危ないっ!!」
仕事中。アナリーズは貧血を起こしてふらついてしまった。倒れそうになったアナリーズにサッと駆け寄り支えてくれたのは、日頃から色々とお世話になっている同僚の獣人商会員だ。
「…………あのさ、悩み事を抱えているなら聞くよ。その……実は僕も少し、君に話したいことがあるんだ。だから、お昼は久しぶりにあの店に行かない?」
「え? でも……」
あの店……というのは獣人御用達のあの店だろう。
今日は家にある食材が減ってきたため、昼休みを使って買い出しをするつもりだった。なので、ジョイにはいつも通り弁当を作って持たせたが、自分の分は用意していない。
買い物途中でパンか何かを齧って適当に済ませるつもりだったが……今の体調を考えると、しっかりと食べた方が良さそうだ。
それに、あの店だったらお値段もお手頃だし家計への負担も少ないだろう。
「そう、ね。久しぶりに贅沢しちゃおうかしら」
「たまには僕がご馳走するよ。話があるのは僕の方だし。ほら、この前取引先とのゴタゴタでかなり遅くまで残業をさせちゃっただろう? そのお詫びというか、お礼をさせてよ」
「でも――」
「…実は、もう一件、君に迷惑をかけちゃいそうでさぁ……」
ポリポリと、耳の後ろを掻く同僚獣人。耳が寝てしまっている。
「ふふ、そうなの? 分かったわ。だったら今日はお言葉に甘えてご馳走になっちゃおうかしら。でも、残業はむしろ助かるから本当に気にしないでいいのよ?」
「……うん。じゃあ、昼休みに」
しょんぼりと。耳を垂らす姿についジョイの姿を重ねてしまい、アナリーズは同僚からの誘いを受けることにした。
「――さてと! 美味しいお昼ごはんの為に、もうひと踏ん張りしますか!」
この日の同僚との昼食で。アナリーズは大きな衝撃を受けることになる。
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