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13 爆弾発言

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「…は……? え。別れ……る?」


 突然。義母から言われたひと言にアナリーズの理解が追いつかない。これまで義母との間に直接の交流はなかったが、特に嫌われたりはしていないはずだ。何なら今日初めてお会いしたが、義母からは気遣うような言葉をかけて貰えていた。


 それとも、もしやアナリーズが自分でも気づかぬうちに、今日のこの僅かな時間で義母を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか?


 そう思って、アナリーズが確かめようと口を開くも。


「あ……の、お義母様。もしかして私が何か失礼なことを」

「ああ、違うの。誤解しないで! 貴女には何も問題はないわ。むしろ、何か問題でもあってくれれば、もう少し言い出しやすかったのだけど……。こうして実際お会いしてみても貴女はとてもいいお嬢さんみたいだし、息子が貴女を選んだのも良くわかる。私も気に入ったしね。それだけに、貴女には申し訳ないと思っているのよ。――でもね、どうやら息子は『番』に出会ってしまったらしいのよ」


 気遣うような義母の声が、アナリーズの耳を通り抜けていく。

 まるで意味をなさない音のように。
 けれど、決して無視することの出来ない重みを持って。


「つが……い……?」


 アナリーズの呟くような言葉を拾った義母の耳がピクリと動く。痛ましい物を見るような表情が、それが聞き違いなどではないことを物語っている。

 獣人と人生を歩むことを決めた以上、それは絶対に避けられない問題であることは理解している。常識としても知っている。勿論、その遭遇率の低さについても。

 昔に比べて増えてきたとはいえ、国内において獣人の人口はまだまだ少ない。

 まるで何かに導かれるように、獣人国へと旅立った夫。


 ――だとすれば。


「それは……獣人国内で………?」

「あ、ううん。そうじゃなくて……と、言うか私達もハッキリとは聞いていないの。ただ、どうやらジョイが『番持ち』について調べまわっていたみたいなのよね。それでピンと来たの」


 義母によると。獣人国へ戻ったジョイは、親戚や友人の伝手を頼って番と出会った獣人に接触を図ろうとしていたらしい。ジョイから番について話を聞かれた親戚から『もしやジョイは番と出会ったのでは?』と言われて義母は確信したのだとか。


「あの子は否定していたけれど、母親だから解るのよ。それに、ウチにやってきた時から様子がおかしかったから、おそらく見つけたのはこちらの国内でだと思うわ。貴女であれば……と願っていたのだけど、そうだったらとっくに報告をしていると思うし、何より私に聞かれて否定する理由がないもの。本来、こうして独り立ちした子供の生活に口出しするのはマナー違反なんだけど……『番』を見つけることは一族にとっての悲願でもあるの。獣人の間では結婚後に番が見つかった場合、別れて番と再婚するのが一般的ね」

「そん……な」


 アナリーズの理解が何一つ追いつかぬままに、どんどん話だけが進んでいく。気遣うような声とは対照的に、義母の口から語られる内容はどうしようもないほど残酷だった。




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