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19 幸せになるための提案

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「あ、ご、ごめん! 何か色々限界だった!! 息して、息! ええと……ごめん、ラシーヌ。こういうの、嫌、だった……?」


 フルフルと首を振る。苦しかったが、嫌ではない。
 と、言うか……。


「ううん、嬉しい。自分の番って判る前から好きだった幼馴染に、番と判ったから『愛してる』って言ってよくなって、その愛している人と初めてのキスを出来たのだもの。でもね、幸せになればなるだけ、やっぱりお母様にこの先別れさせられると思うと辛くって。……やっぱり、私もどこかお母様に似ているのかしら? ねえ、ファンゲン。幸せなのに不安を感じるって、私もどこか拗らせている?」

「ああ、もう。素直でかわいいな。……まあ、確かに拗らせてはいるけれど、君のお母様ほどではないし、何より君には僕がいるからね。拗れないよう、手っ取り早く君の愁いを取り払ってあげるから大丈夫だよ。簡単だ。このまま番だって黙ったまま婚姻しちゃえばいい。君の番は僕だから、本物の番なんてものは生涯現れる筈がないんだから。君と僕は、現れるはずのない番が現れるまで限定の夫婦。そうしたら別れなくてもいいし、思い悩まなくて済むだろう?」

 私は幼馴染の言葉に大きく目を見開いた。確かにいたってシンプルだ。それなら別れる、別れないで思い悩まなくて済む……けれど。


「周囲に『番』と公表できなくなっちゃうわ。そうすると優遇措置が受けられないけど……ファンゲンはいいの?」

 番は番というだけで評価が上がる。番の獣人はお互いの幸せの為に努力をするし、子供が出来たら愛する番との子を守るために、さらに身を粉にして働く。

 その為、周囲からの信頼が厚いのだ。昇進するにも何をするにも有利になる。結婚や出産での番休暇も約束される。番ならではのメリットがいっぱいあるのに、公表できないとなると、その全てを諦めざるを得ない。




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