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13 俺の番が家にいない(ヴァイス視点)

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『まあキレイ! 王女様、お幸せにー!!』
『王女様! お元気でー!!』


 結婚式の後に行われたパレード。光り輝くような笑顔を向ける王女様に手を振る国民達。優しく気さくな王女様の国民からの人気は健在だ。

 そのまま辺境の地へと旅立って行った王女様を見送って、ようやく肩の荷が下りた。


 隣国王子からの一方的な婚約破棄により最初こそ同情を集めていたものの、なかなか次の婚約者が決まらず、婚期が遅れるにしたがって、イケメン好きだの行き遅れだのと貴族からは口さがない影口を叩かれていた王女様。

 王女様自身、結婚を諦めかけていた頃にとある夜会で運命の出会いを果たし、辺境伯様の元へと嫁ぐことになった。王女様の好みとは大分違うから心配ではあったけれど、王女様が幸せそうだったのでこれで良かったのだと思う。

 王女様から俺は残るようにと言われたので、彼女とはここでお別れだ。

 王女様の降嫁により、俺は王女様付き近衛騎士の任は解かれたが、これからも騎士団には残れるように王女様が話をつけてくれた。

 俺と、俺の番のことを気にかけてくれてのことだと思う。


「私のことは彼が守ってくれるから大丈夫よ。だから貴方は安心してココに残って、早く可愛い番ちゃんと結婚して幸せになってね!」

――と言ってくれた。


 近衛騎士でなくなることで給料は下がるが、これで時間はできる。それに、城や街を警備する騎士団だって平民にしては十分高給取りだ。フルールには苦労をかけた分、これから十分に愛を伝えなければ。

 顔が見たい。声が聴きたい。抱きしめたい。

 そして――。


 婚約してからずっと――いや、出会ってからずっと俺と飼い主の為に耐えていてくれた愛しい番。ようやく彼女と正式に、本当の意味で結ばれることが出来るのだ。


 すぐにでも帰りたいけれど、明日までに近衛騎士用に与えられた部屋を引き払わなければならない。片付けを済まし、荷物を自宅へと送る手配を整えて、その日は休んだ。

 そして翌朝。


 花屋に寄り、フルールの大好きな花を買った。給料が下がるから今までのような贅沢はできないけれど、今日だけは特別だ。近衛騎士として働いた分の貯蓄もあるし、これくらいはいいだろう。彼女の喜ぶ笑顔が見たい。

 記憶とは様変わりした道を進むと懐かしの我が家が見えてきた。ああ、ようやく帰ってきたんだ。

 そして、これからはコレが毎日言える。


「フルール! ただいま!!」


 そうして数年ぶりに帰った家に彼女の姿はなかった。




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