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第三章 初級フリー討伐

33 交流! 異世界助け合い運動 前編

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 5月。大学生活も二年目に入り新生活の環境変化にも少し慣れてきた所での大型連休。これ幸いとゲームをしたり異世界に行ったりとリフレッシュし過ぎたたせいか、休み明けになっても大学へ行くのが面倒臭くて仕方ない。

 よし! ここは思い切って大学休んで異世界行って冒険(という名のダイエット)しよう!!



 ――とサボるような勇気もないので、いつも通りしっかりと講義を受けてからの、まだ日が高いうちの冒険です。


 異世界でのダイエットは相変わらずスライムの生け捕りがメイン。見つけて捕まえて運んで、見つけて捕まえて運んで……の、森からスライム養殖場までの往復ウォーキング運動ですね。

 いや、ホラだって。俺としても自分で殺さずにすむならそれが一番いいしさ。可愛がっている200gと同じ種族を攻撃するのは、やっぱ飼い主として、それちょっとどうよ……って思っちゃうし。

 まあ、当の200gは、


 ぽよ~…、ぽよよよん?


 え~…、殺んないの? …と、不満そうにぽよぽよ言っているけど。
 ……いや、お前。同種族として、それちょっとどうよ?


 発光スライム討伐のときから少し思っていたけど、スライム同士って仲間意識とかないのかな? 200gが仲間に対してやたら好戦的過ぎる……まあ、自分で手を下さないだけで捕まえたスライムの行く末は変わらないから、余計な罪悪感を持たなくて済むのは助かるが。


 俺もそろそろ真面目に討伐を進めようか…とも思ったんだけどさ。ダイエット目的って考えると、このスライムの生け捕りって意外といい運動になってるんだよね。

 小さいサイズのはそうでもないけど、大きいのは重量すごいから筋トレにもなるし。しかも、友達としてザッツさんが始めた事業の応援にもなるし。

 あとは……。


「あ、オータだ!」
「オータ、こんにちは~」
「オータ! あっちに中型スライムいたよ! 壊れたツボの中」


「おっ、サンキュー子供達。そっちに魔除けの草あるぞ」


「マジで!? どこ、どこ?? あった!! やりぃ、これで今週のノルマ達成!!」
「待って、待って~」
「皆で山分けだからな!」


 ボロボロの籠を持ち、嬉しそうに草を摘んでいく近所の子供達。

 ……まだ、日本でいうところの小学生くらいかな。この子供達は生活費の足しにと薬草を集めに森へ来ているそうだ。年齢的にまだギルド登録は出来ないため、冒険者に直接薬草を売って親を助けているらしい。あまり褒められたことではないが、貧困対策にギルドも子供達のこの行為を黙認している。

 彼らとは森でのスライム生け捕り中に声をかけられて親しくなった。

 それ以来、子供達は森でスライムを見つけると俺に教えてくれる。――で、そのお返しにお金になりそうな薬草を見かけると教えてあげているのだ。


 日本と違い義務教育制度が無いため、こちらは就学率も低い。と、言うか現実問題としてほとんどの学校が有料なので、家計状況的に全ての子供に教育を施すことは難しいそうだ。

 その結果、コチラでは学校に通っているのはある程度家計に余裕のある家の子供か貴族の子供に限られている。残りはこうやって小さいうちから働いて親兄弟を助けているらしい。

 こんな小さなうちから労働を……とか思うと胸が痛む。

 なので、子供達に見つけてもらった分のスライムの売却分をポイントで渡すのも考えたが、それもちょっとな……ってことで、少しまわりくどいが俺からのお返しはこういう形となった。

 子供でまだ冒険者カードを持っていないとなると、ポイントでのやり取りは難しいし。何より、稼げるからと森の奥まで魔物探しに行かれるのも危ないし。

 俺もまだ森の奥には行ってないからな。…実は、まだ早いと200gに止められているのだ。ってことで、子供達に何かあっても俺は助けに行けない。そこまでの責任はとれない。


 子供達よ。オータのお兄ちゃん弱くてスマン!!



 あまりのふがいなさに少し落ち込んでザッツさんに相談してみたところ、それくらいでいいと言われた。

 スライムは子供にとっては危険なので、駆除するだけで子供からすれば十分ありがたいのだそうだ。子供達もそれが分かっているから、近くの冒険者に積極的に場所を教えてあわよくば討伐してもらえればラッキーくらいにしか思っていないとの事。実際、スライムは討伐報酬も少ないのでガチの冒険者には取り合ってもらえないことの方が多いらしい。

 ――で、ザッツさんにもお墨付きをもらった俺から子供達への『お返し』についてだが。
 実はこれは俺にとってもかなりのメリットがある。

 子供が大喜びしている買取価格の高い草だが、俺はとある事情からソレに触れないのだ。




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