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第三章 初級フリー討伐

29 感動! 発光スライム

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 来てよかった――目の前に広がる神秘的で美しい光景を見て、俺は心底そう思った。


 辿り着いたダンジョンの最奥。
 少し開けたその場所には、色とりどりに光り輝くスライムがいた。


 赤。青。黄色。ピンク。緑。


 暗い洞窟の中。
 美しい光の筋を残しながら。

 俺と200gのすぐ目の前で。


 発光スライムがザッツさんだけを襲っていた。





「えっ! ちょっ!! なんで俺だけ!? ってか、何だ、この数っ。オータ、とにかく数を減らすぞ!」

「えっ。でも200gの前でそんな残酷な……。しかもこんなキレイなのに」

 ……ぽよん?(……キレイ?)


 一緒に見惚れていた200gが何故か俺の言葉に反応し、俺の手の上でぽよんっと二本の突起を生やすとシャドーボクシングを始めた。ん? 攻撃態勢?
 なるほど。……やっちまえってことらしい。


 今さらだけど、考えてみれば同じスライムの前。
 この状況で討伐はどうかと思ったが、本人(?)が気にしてないようなので、お言葉に甘えてやっちまうことにした。


 200gを定位置のポケットに戻して。いざ、戦闘開始!!


 ――が。


 まあ、あれだよね。ここ2カ月ほど魚釣りばっかしていたじゃないですか。剣とか持つの久しぶりじゃないですか。

 ぶっちゃけ、勘とか鈍るよね!


 ダンジョン内とはいえ討伐対象が光っている分、暗くてもすごく見やすいんだけど。ぽよんぽよんと、とにかく避ける。

 それでも俺が攻撃を始めても何故か反撃をされることはなかったので、なんとか10匹ほどが討伐できた。インストラクター付きの初級講習では5匹だったから、そのときの倍。新記録だ。ちなみにその間にザッツさんは30匹ほど倒していた。

 すげえ! 流石は先輩冒険者。


「はー。あらかた片付いたな。いつもは多くても10匹くらいしかいないのに。でも、今の時期は需要が多いから買取価格もすごいんだ。ツイてるぞ!」


 ――と、ザッツさんはホクホク顔だった。何でも、今の時期は修道女の引退コンサートで応援に使う携帯型ライトの原材料として発光スライムの需要があるらしい。

 ……って、アイドルか!!


「でも、こんなに運べますかね?」

「ははは。お前、何も知らねーのな。見てろ」


 ザッツさんから言われるがままに眺めていると、討伐したはずの発光スライムたちが突然姿を消した。ダンジョンには飛び散った色とりどりの体液だけが光り輝いている。


「えっ!? 発光スライムが消えた! せっかく倒したのに」

「安心しろ。登録武器での討伐は、たいていがこうやって自動回収されるんだ。これで討伐報酬の他に買取報酬も入る。あとでちゃんとポイントを確認しておけよ。ちなみにお前が使っているレンタル武器もギルドで登録されているから扱いは一緒だ。マジックバッグはレアだから、大物討伐したときにコレがないと困るんだ」

「へー。便利だな」


 なるほど。せっかく大きな魔物を仕留めても、持って帰る手段がないと無駄になる。そこから考え出された魔法を使ったシステムらしい。

 ちなみに。前回までの魚は自動回収制度はないそうだ。魚は痛みやすいから需要と供給のバランスが難しいんだって。納得。

 ぽよぉん~?

『終わった~?』とでも言いたげな200gがポケットから顔を出した。周囲を確認するとぽよん、と飛び降り、身体を丸くしてダンジョンの壁へと転がっていく。

 そして。


 ぽよ、ぽよ、ぽよ。
(もしゃ、もしゃ、もしゃ)


 何か、壁からこそげ落として食べている。不思議に思ってよく見れば、そこだけうっすらと青く光り輝く苔のようなモノが生えていた。そして。


 ぽっよ~ん。


 ぴっか~ん。と200gが青色に輝きだした。

 ――えっ! なにコレ!?



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