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第二章 初級講習

17 安定供給! 香車ウサギの角 前編

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 ぼよよんっ……!!
 カッコン☆

 ぼよよんっ……!!
 カッコン☆
 
 ぼよよんっ……!!
 カッコン☆


「あの……太田様。ギルドから苦情がきてます。その、値崩れが起きると」

「すいません、わざとじゃありません、すいません……っ!!」


 困惑気味のインストラクターに謝る俺。


 あれから数週間。数回の討伐に挑戦したのだが。

 香車ウサギの加護は絶大だった。遠くから気配を感じた瞬間、超高速で俺を串刺しに来るウサギたち。まあ、狙われるわ、狙われるわ。

 そして、そのたび200gが敏感に殺意を察知し、


 ぽよよんっ……!!(あぶないっ……!!)


 と渾身の力で避けて俺を救ってくれる。

 角を折られたウサギは動けなくなる。俺に加護を与えてくれた最初の3kgがそうだった。その時点で討伐すればよいのだが。

 ふわっふわ、モフモフのお目目ウルウルに見つめられると、どうしても止めをさせない。

 そのうえ、おそらくウサギ絡みと思われる『逃げ足』とかいうスキルが発生したせいで俺の回避速度が若干早くなり、動ける程度にはウサギに角が残されるようになった。

 なので、わざわざ俺が手加減するまでもなく。今では角を折った後も、普通~に香車ウサギには逃げられている。

 それにしても。

 3kgのときは角が根元から折れていたのに、今は数センチ程度の長さが残っていることを考えると、当初はかなりギリギリ避けられたんだな、ということが分かる。


 俺の意識高い系有能スライム、200gにマジ感謝!!


「――さてと、太田様。こうなったら仕方ありません。本日も『ランニング』に切り替えますか☆」

「はい……」


 なかなかの速さで逃げていく角無し香車ウサギを見送って、残された角を拾い上げているとインストラクターが言ってきた。

 香車ウサギは臆病なうえ縄張り意識が強いので、範囲内にいる数には限りがあるそうだ。加護でウサギから喧嘩を売られやすくなった俺は、転移直後に突進されるようになっていた。つまり周囲の香車ウサギはこれだけだ。
 今日はこれ以上の討伐は無理だろう。

 時間が経つと角の価値が下がるので最初はインストラクターに納品を任せていたが、これでは運動にならないからと注意され、今は自分の足でギルドまで走って直接納品をするようになった。勿体なさそうにしながらも、そこはダイエット優先。インストラクターを見直した。




「申し訳ありません、この素材の買取は本日分までとさせていただきます。その、在庫が多いと保管中に価値が落ちてしまいますので。入金しますので、そこにカードをお願いします」


 買取窓口のギルド職員に言われて魔法陣に会員証をかざせば隣の機械に更新された情報が表示される。


ポイント:900250 
魔王討伐コース会員:太田
身長176 体重●●● 魔力15 レベル1
スライムの加護  スキル:煽り
            :言語理解
香車ウサギの加護    :逃げ足


 おおお、すげえ。集団で襲われるようになってからポイントの上がり方がすごいな。

 直接納品だと全ポイント自分にもらえるとはいえ、俺の足ではギルドに着くまでに半額くらいまで価値が下がるから先は長いと思っていたが。
 これなら思ったより早くポイントで月会費が支払えるんじゃないのか?

 ……って、あれ? 表示をよく見たらあることに気が付いた。


「なんか、魔力が上がってる?」

「串刺しラビットの角は魔力の塊ですからね。直接触れているだけで多少取り込まれることがありますよ。新鮮な物に限られますが」


 不思議がっていたらギルド職員のお姉さんが解説をしてくれた。なるほど、直接納品にはそういうメリットもあるのか。


 後ろを見ると数人の冒険者が並んでいたので、慌てて会員証を受け取りインストラクターと共に買取窓口を後にした。



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