上 下
15 / 41
第二章 初級講習

15 即断! 『リザレクション保険』

しおりを挟む
「えっ!? 角無し香車ウサギに逃げられたんですか!?
あんなのやたらと遅い、ただのウサギと変わらないのに!? 子供大喜びの遊園地の動物型の乗り物よりも遅いですよ!?」

「あーすんません。すばしっこくて」

「はあ……(あれを逃がすとか)」


 あの後。ほくほく顔で商業ギルドから帰ってきたインストラクターにドン引きされた。

 まあ、あれだ。結論だけ言えばプロテインバーで元気を取り戻したウサギは超高速で逃げてった。

 めでたしめでたし。元気に暮らせよ3kg(命名)。


 そして、その後は収穫のないままスポーツクラブへと帰還した。




「角の方は鑑定が必要になりますので商業ギルドへと預けておきました! レアアイテムの場合は専門の鑑定が必要となるため時間がかかるのですが、これは期待度大ですね! 次回の討伐の際には太田様のカードの方へと振り込まれていると思います」


 どうやら会員証にはお財布機能がついているらしい。

 と、いうか。たとえダイエット目的とはいえ討伐報酬のようなものがあって、魔物を倒した分だけちゃんとポイントとして付与されるそうだ。

 そしてそのポイントを使って、異世界での飲食やお買い物が楽しめるらしい。それを聞いて、俄然俺はやる気になった。


「討伐報酬の他に、今回のような素材の買取もありますし、薬草等の採取系で運動したい方には採取したモノの買取なんかもありますからね。ポイントを貯めれば当クラブの会費もポイントで支払うことができますよ」


「マジですか!?」


 すげえ! 上手くいけば金かからずにスポーツクラブに通い続けられるじゃないか。いや、むしろ儲けられるかもしれない。


「勿論です。ただし、異世界とは通貨格差がありますのでこちらで使用する際はかなり目減りしてしまいますが。それでも討伐する魔物のランクが上がれば、月会費くらいは支払えるようになりますよ! 当然、太田様がご加入の『置いてけぼり保険』などの保険料のお支払いもできます。各種保険は入っておくと色々と安心ですよ! そして、本日ぜひお勧めしたいのが」


 え。なんか勧誘始まった?


「じゃん!! 死んでも安心『リザレクション保険』です。初級はインストラクターも同伴なので、本日のように串刺しにされて死亡しても魔道具で蘇生できましたが、フリー討伐になればそうもいきません。今回のように、初見ではほぼ即死系の魔物も数多くいますから、加入しておくと安心ですよ!!」

「え? 俺、今回別に死んでいませんけど」

「あ! しまった!! これ通常時のAパターンの勧誘だった!! 今回のようなケースは……前例無いなあ、どうしよう。ブツブツ……」

 マジかよ。死亡も織り込み済みかよ。ってか、本気で200gいなかったら一度死んでたのか俺。

 脂肪減らすために死亡とか洒落にならない。


「…ええと、それでどうなさいますか? 今なら特別に月会費に1000円プラスするだけで、通常1回の所、2回まで蘇生のサービス付きで『リザレクション保険』にご加入いただけますが」

「……っ! 加入します!!」


 即断した。よく分からんが、死亡前提で保険の加入を薦めてくるあたり、インストラクターの本気度を感じる。
 断る選択肢などないだろう。……というか、断る勇気が俺にはない。


「あっ! そう言えばポイントで保険料も支払えるんですよね? それで、少し安くなったりとか」

「ええ、勿論です。太田様には現在、前回討伐分までのポイントが入っていますので、スライム5体分。合計250ポイントがお使いになれますよ」

「えっ! 250円引き!? すごい!!」

「あっ、いえ。通貨格差がありますので、2円引きで998円になります。ポイントをお使いになりますか?」

「……貯めたままで」


 ……どうやら異世界と日本の通貨格差は思いのほかでかいらしい。月会費無料までの道は遠そうだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...