14 / 41
第二章 初級講習
14 入手! レア素材
しおりを挟む
「さあ! 今日から新たな討伐ですよ」
いつも通り、魔法陣のある部屋でカードキー機能付きの会員証を指定の場所にかざすと、次の瞬間には異世界だった。
そして、活舌の良いインストラクターの声が響く。
急に開けた草原のような場所に飛ばされるのは相変わらず脳がついていかないが、そのうちゲームのように慣れるだろう。それはいいとして。
「前回までは『スライム』でしたが、今回からは『香車ウサギ』の討伐です。武器はこちらです」
異世界につくなりインストラクターから討伐対象についての説明を受けるが、イマイチ討伐相手の正体がつかめない。そして、渡された武器は前回と同じ軽めの剣だった。
「香車ウサギ……ですか?」
スライムは思ったよりはバカでかかったが、外見は割と想像通りだった。知能は想像以上に高かったが。
しかし、次はウサギと言われても、可愛い姿しか思い浮かばない。
「ええ。現地では串刺しラビットとも呼ばれていますね。その特徴として」
ぼよよんっ……!!
インストラクターの話が終わる前に、ポケットの中の200gが渾身の力で後ろへと跳ねた。
引っ張られる形でバランスを崩した俺はしりもちをつきながら重力のまま渡された剣を振って――。
カッコン☆
かすかな手ごたえを感じたと思ったら、虹色に輝く長いつららの様な何かが俺の目の前、さっきまで俺が立っていた場所へと転がった。そして、その横にはふわっふわの可愛いウサギが倒れている。
ウサギはハッと気が付くと俺を見た。そして、大きな目をウルウルとさせながら震えている。
えっ! なにコレ。
「えっ、ちょ……! まさか、生きている香車ウサギの角を折ったんですか!? 見つかったら最後、串刺し確定って言われている現地でも恐れられている超高速モンスターなのに!!??」
「超高速……!? 串刺しって……! 名前より先にそっちを教えてくださいよ!!」
やべえ、200gが避けてくれなかったら俺、直撃コースだった!!
「ああ、いやそんなことよりも!!」
「ちょっ、そんなことよりって!!!」
俺の生死がかかっているんですが!?
「太田様、コレは超、超レアアイテムですっ。しかし、時間と共にコレの商品価値は下がります。そして、消えます。そこで提案です。僕がひとっ走り商業ギルドまで納品してきますので、売り上げ山分けしませんか!?」
「!!! お任せします」
よく分からんが、ここはプロに任せた方がよさそうだ。買ってくれる場所なんて知らんし。ってか、倒した後の素材って売れるのか。後でインストラクターに詳しく聞いてみよう。
「ではっ!」
虹色の角を拾い、リレーのバトンのように手に持ったまま、すごい速さで駆けていくインストラクター。
おお、流石に速い。
……って、えっ? 待って、このまま置き去り!?
俺は慌てて後ろから声をかけた。
「――あのっ! 俺はどうすればっ!??」
「そいつのとどめを刺して待っていてください! 大丈夫! 角を失った香車ウサギはただの動きの遅い、寂しがり屋のウサギです!!」
……とか、言われても。
ぷるぷるぷるぷる……。
「なあ、お前さ」
びくっ!!
ぷるぷるぷるぷる……。
うるうるうるうる……。
――いや、いや、いや、いや、無理だろ、コレ。
震えてるし何か動きトロイし、目はウルウルだし。こんなの倒すとかできねえよ。
むしろ相手の防御力が爆上がりしているんですが!!
可愛いは正義ってホントだな。
俺、悪です。無理です。殺せません。
しかし、どうしよう。インストラクターが戻ってきたら、絶対倒せって言われるよな。そして、俺もノリで倒しちゃうよな。駄目だ、そんなことをしたら絶対、夢に見る。
とはいえ、相手は弱ってて自力で動けそうもないし。
手負いで弱ったその姿は、俺についてきちゃったばかりの頃の200gを思わせる。ああ、そういやあのときはたこ焼きを食わせたらやたらと元気になったんだっけ。
コイツも何か食わせたら少しは元気になるだろうか?
「食べ物、食べ物……」
ゴソゴソと。ポケットを探れば出てきたのはプロテインバー(人参味)。
あ、これ試供品でもらったやつだ。人参味だしいけるかな?
いつも通り、魔法陣のある部屋でカードキー機能付きの会員証を指定の場所にかざすと、次の瞬間には異世界だった。
そして、活舌の良いインストラクターの声が響く。
急に開けた草原のような場所に飛ばされるのは相変わらず脳がついていかないが、そのうちゲームのように慣れるだろう。それはいいとして。
「前回までは『スライム』でしたが、今回からは『香車ウサギ』の討伐です。武器はこちらです」
異世界につくなりインストラクターから討伐対象についての説明を受けるが、イマイチ討伐相手の正体がつかめない。そして、渡された武器は前回と同じ軽めの剣だった。
「香車ウサギ……ですか?」
スライムは思ったよりはバカでかかったが、外見は割と想像通りだった。知能は想像以上に高かったが。
しかし、次はウサギと言われても、可愛い姿しか思い浮かばない。
「ええ。現地では串刺しラビットとも呼ばれていますね。その特徴として」
ぼよよんっ……!!
インストラクターの話が終わる前に、ポケットの中の200gが渾身の力で後ろへと跳ねた。
引っ張られる形でバランスを崩した俺はしりもちをつきながら重力のまま渡された剣を振って――。
カッコン☆
かすかな手ごたえを感じたと思ったら、虹色に輝く長いつららの様な何かが俺の目の前、さっきまで俺が立っていた場所へと転がった。そして、その横にはふわっふわの可愛いウサギが倒れている。
ウサギはハッと気が付くと俺を見た。そして、大きな目をウルウルとさせながら震えている。
えっ! なにコレ。
「えっ、ちょ……! まさか、生きている香車ウサギの角を折ったんですか!? 見つかったら最後、串刺し確定って言われている現地でも恐れられている超高速モンスターなのに!!??」
「超高速……!? 串刺しって……! 名前より先にそっちを教えてくださいよ!!」
やべえ、200gが避けてくれなかったら俺、直撃コースだった!!
「ああ、いやそんなことよりも!!」
「ちょっ、そんなことよりって!!!」
俺の生死がかかっているんですが!?
「太田様、コレは超、超レアアイテムですっ。しかし、時間と共にコレの商品価値は下がります。そして、消えます。そこで提案です。僕がひとっ走り商業ギルドまで納品してきますので、売り上げ山分けしませんか!?」
「!!! お任せします」
よく分からんが、ここはプロに任せた方がよさそうだ。買ってくれる場所なんて知らんし。ってか、倒した後の素材って売れるのか。後でインストラクターに詳しく聞いてみよう。
「ではっ!」
虹色の角を拾い、リレーのバトンのように手に持ったまま、すごい速さで駆けていくインストラクター。
おお、流石に速い。
……って、えっ? 待って、このまま置き去り!?
俺は慌てて後ろから声をかけた。
「――あのっ! 俺はどうすればっ!??」
「そいつのとどめを刺して待っていてください! 大丈夫! 角を失った香車ウサギはただの動きの遅い、寂しがり屋のウサギです!!」
……とか、言われても。
ぷるぷるぷるぷる……。
「なあ、お前さ」
びくっ!!
ぷるぷるぷるぷる……。
うるうるうるうる……。
――いや、いや、いや、いや、無理だろ、コレ。
震えてるし何か動きトロイし、目はウルウルだし。こんなの倒すとかできねえよ。
むしろ相手の防御力が爆上がりしているんですが!!
可愛いは正義ってホントだな。
俺、悪です。無理です。殺せません。
しかし、どうしよう。インストラクターが戻ってきたら、絶対倒せって言われるよな。そして、俺もノリで倒しちゃうよな。駄目だ、そんなことをしたら絶対、夢に見る。
とはいえ、相手は弱ってて自力で動けそうもないし。
手負いで弱ったその姿は、俺についてきちゃったばかりの頃の200gを思わせる。ああ、そういやあのときはたこ焼きを食わせたらやたらと元気になったんだっけ。
コイツも何か食わせたら少しは元気になるだろうか?
「食べ物、食べ物……」
ゴソゴソと。ポケットを探れば出てきたのはプロテインバー(人参味)。
あ、これ試供品でもらったやつだ。人参味だしいけるかな?
1
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる