上 下
13 / 41
第二章 初級講習

13 朗報! 俺に女友達ができる

しおりを挟む
「ええと、ミス学祭の……」

「あ、海藤セツです。友達だからね。カイドーでも、セッちゃんでもいいよ」

「あーうん。えと、カイドーさん。さっきも言ったけど、俺、体験入会で気に入ったからさ、月が替わってすぐにスポーツクラブに入会しちゃったんだよね。そういう訳だから、俺と友達になってもメリットは……」

「そんなことないよ!!」

 力説する、美少女カイドー。

「他にも色々割引制度はあるし、情報交換できるじゃない! それに、プロテインとかサプリの共同購入とか共同購入とか共同購入とか!!」


 なるほど。美少女カイドーの説明によると、どうやらまとめ買いはお安くなるらしい。とは言っても。


「俺、当分何も買う予定ないけど? ただでさえスポーツクラブ入ったばっかで、そんな余裕ないし」

「ああ、それはいいのよ。いつか買うかもしれないでしょ? それに、私が一人でたくさん購入したいとき、名前だけ貸してもらえれば、キャンペーン次第で何かオマケとかつくかもしれないじゃない。あ、勿論その場合、代金は自分で払うわよ? そこは安心して頂戴」

「しっかりしてんな」

「まあね。でも、これだと私にしかメリットないわよね。とはいえ、私がしてあげられることなんて、いざというときの代返くらいしか」

「これからよろしく。心の友よ」


 手を出すと、美少女カイドーは何の迷いもなくギュッと握り返してきた。それだけでかなり彼女への好感度が上がる。

 俺の、まん丸グローブなお手てを嬉々として触ってくるのは姉ちゃんくらいだ。姉ちゃんは何が楽しいのか「相変わらず子供みたいな手~!!」とか言って俺の手をモミモミしてくるのだ。

 何はともあれ。


 朗報! 俺に女友達ができる!! しかも、念願の代返要員確保!!! いえーい♪♪


 ――と、ウキウキしていたら。


「じゃ、フトタ君これからよろしくね!」

「あ。俺、オータです……」


 悲報! 初めての女友達に名前を呼び間違えられる!!


「えっ!? あっ! ごめんなさい。名前分からなくて周りに聞いたらあれは『フトタ』だって言われて」


 更に衝撃事実発覚! 俺は知らないところで見知らぬ誰かに悪意あるあだ名をつけられているようだ!!

 ……しかしまあ、目の前の彼女には悪気はなかったようなので、それは安心した。


「大変! 皆、間違って覚えているんだわ!! 今度ちゃんと訂正しておくから大丈夫よ。あれは、『オータ』君ですよって」


 ああ、いい子ですね。でも、皆は確信犯だと思うよ?
 ただの悪口。俺の外見をからかって、小馬鹿にしているだけ。

 それにしても……悪口って、自覚なくこうして広まっていくこともあるんだなあ。覚えておこう。


 もう少し話していたそうだったが、午後の講義を取っているからと、美少女カイドーは名残惜しそうに食堂を後にした。周囲がチラチラとこちらの様子を窺っているのが分かる。

 ああ。まあ、そら気になるわな。何の接点もなさそうな2人が話していたら。

 片や100キロ超えの存在感デブ。片やミス学祭の大学一の人気者。使用前・使用後の販促チラシくらいでしか隣り合うことはなさそうだ。

 ……って、アレ? そう考えてみたら意外とよく見る組み合わせだし接点は多そうだ。


 ようやくゲットした貴重な友達兼、代返要員。


 とはいえ性別もあるが、それ以上に今の体型差では代返してもらっても一目でバレる。
 実際にお願いするにはもう少し痩せる必要があるだろう。


 今日は午後の講義はない。

 悩んでいたデザートのアイスを諦めて、俺は決意も新たにスポーツクラブへと向かうのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...