スポーツクラブに魔王討伐コースがあったのでダイエット目的で入会してみた

第二章 初級講習

８ 再挑戦！ スライムの討伐！

「あれ？　随分早かったですね。大丈夫ですか？　その……おなかの調子とか。もし、なんなら今日は早めに切り上げて」

「いえ、引っ込んだんで！　してないです！」（キリッ）

「あ、そ、そうですか」


　あからさまにホッとするインストラクター。まあ、そうだよな。水道も紙もない異世界でトイレして、洗いもしないその手にレンタルの剣を渡すの嫌だろうし。

　そう。俺は別にトイレに行きたかったわけじゃない。先に、２００ｇを逃がしたかっただけだ。

　別に後でもよかったが、ポケットに入れたままでは、スライムを討伐する姿を同じスライムであるアイツに見せることになってしまう。俺なりの優しさだ。

　あと、インストラクターに見つかって、倒せと言われるのも嫌だった。

　ただ、用は済んだので、不名誉な言い訳は否定しておいた方がいいだろう。これから長いこと、ここのクラブにはお世話になるのだから。


「ところでそれは……？」

「え？　あ！」


　インストラクターが指さすのは、俺が先ほど２００ｇに与えたプロテインバーの包み紙。ゴミをポイ捨てするのは性格上嫌なので、しっかりと握り締めていた。

　ポケットにしまえばよかった。本当のことを言う訳にはいかないし、余計な説明は面倒なのでさらりと流そう。


「小腹、空いたので」

「……！？　そう、ですか（痩せる気あるのかよ……）」


　あからさまにギョッとした顔をされた。あと、なんか聞こえた。自ら傷口を広げた気がする……。


　それはともかく。


　２００ｇを故郷に帰した後、俺は討伐をひたすらに頑張った。ここ一週間、スライムと共に生活をしていたのだ。おかげでその生態はある程度理解していた。

　岩と岩の隙間に。　――いた！　えいっ！
　程よい大きさの樹洞に。洞穴に。　――いた！　えいっ！
　木の陰に。大きな枝に。大岩の上に。


「す……すごいです太田様！　大量に見つけては……逃げられている！」


　驚き……呆れるインストラクター。その通りだった。

　あれだ。いくら生態が分かって大量に見つけても、俺の剣さばきが上達した訳ではない。しかも、２００gを無駄に痛めつけてしまった反省から、一撃必殺を狙っているので失敗すると一目散に逃げられる。全速力のスライムは無駄に早いので、とてもじゃないが追いつけない。

　それでも、食後のスライムやお昼寝中のスライムなどを中心に、今回は５匹ほどを討伐できた。