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第二章 初級講習

6 加護持ち! 驚きの能力値測定結果

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「すごい! 魔力がありますよ!」

 体験入会の翌月。俺は正式にスポーツクラブに入会した。申し込んだのは当然『魔王討伐コース』だ。

 その、入会の為の能力値の測定で、俺はびっくりすることを言われた。なんと、俺には魔力があるらしい。

 俺が今いるのは測定ブースにある、魔王討伐コース用の魔法陣。検査結果が、次々とカードキーに表示されていく。

 これは入館証であると同時に、異世界へ飛ぶ際にも絶対に必要な物らしい。

 失くしたら帰ってこられませんよ? 失くしたら帰ってこられませんよ? とインストラクターにしつこく言われたが、むしろフラグを立てているような気がして落ち着かないからやめて欲しい。

 いや、それよりも。


「魔力があるって……ソレ、すごいことなんですか?」

「ええ、ええ! それはもう。滅多にいらっしゃいません」

「じゃ……じゃあ、向こうで伝説の勇者とか伝説の魔法使いとか呼ばれちゃったりするような……?」


 マジか。俺、体脂肪が高すぎますねとか、コレステロール値がどうこうとか、マイナス方面でしか特別扱いされたことないぞ。

 これ、来るか? 実は俺が伝説の勇者……みたいなパターン、くるか? とか若干いい気になっていたら。


「あーいえ。そこまでは。確かに魔力持ちは珍しいですが、お客様……太田様がお持ちの魔力は初心者用フィールドのスライム程度なので。まあ、頑張れば初級の回復魔法を一、二回かけられるようになるかな……ってとこですかね。でも、すごいことですよ!」


 持ち上げられて下げられて上げられた。

 正直どんな反応していいのか分からないが、魔法を使えるようになるかもしれないというのは純粋に嬉しい。だから、ここは喜んでおこう。


「魔力持ちで良かったです。で、俺どれくらいの魔力を持ってるんですか」


 スライム程度、って言われても正直よく分からない。


「『10』くらいですかね。レベルが上がれば少しずつ増える可能性もありますし、本当にすごいことです」


 思ったより高かった。これは、もしかしたら努力次第ではやっぱり英雄コース……。


「まあ、夏休みの水泳教室に通ってたお子さんが遊びで測って『500』の数値をたたき出したうえ、聖女スキルをお持ちだったのでそれと比べると見劣りしますが」


 勝負にならなかった。


「すごいですね。その子供も、魔王討伐コースに?」

「あ、いえ。流石にこれは凄いと思ってしつこく勧誘したら退会されてしまいまして」


 大丈夫か、ここのスポーツクラブ。心配しつつも計測は続く。

 続いてのスキル検査で真っ先に表示されたのは『煽り』。これは敵を怒らせる効果があるらしい。ネットを長時間やる人間には割と出るスキルだそうだ。

 ああ、はい。多少思い当たる節はありますよ。……ふう。


「ああっ! すごい! 加護もありますよ」

「えっ! 何の?」


 もう騙されないぞ、期待なんてしない……そうは思うものの、つい期待してしまう。

 だって、あれだろ? 加護って神様とか女神様とか、中二を期待していいんなら邪竜とかそういう、かっこいい奴に守られてて……。


「これは、珍しい! 見たことないです」

「何の!? 俺、どんなすごい加護を持ってるんですか!?」

「……スライムです(ププッ)」

「へ?」

「いや、これは本当に珍しい! 加護って、強いものが弱いものに与えるものなんですよ。よっぽど気にいられたか、スライムより弱いと思われたか……」

「もういいです……」


 その後は無駄口を叩かず、粛々と計測を進めた。





 そうして、判明した俺の初期スペックは。


魔王討伐コース会員:太田
身長176 体重●●● 魔力10 レベル1
スライムの加護 スキル:煽り
           :言語理解



「ああ、言語スキルをお持ちですね。これは、結構いらっしゃいますが、便利ですよ。レベルが上がれば、現地の人との会話も可能です。スキルはこちらでの影響が出やすいんですよ。何か、専門的な語学の学習でもされてました?」

「いえ。大学生ですけど英語苦手なんで」

「あ、そ、そうですか……あれえ? おかしいな」


 インストラクターの説明によると、あくまでこれは初期値。なので、この先どんどん変化していくそうだ。

 そう、主に体重とか体重とか体重とか。


「とりあえず、初級はインストラクター同伴で、3種類の魔物を倒していただきます。そこからは、個人の自由です。個人コーチを雇ってパーティーを組んでもいいし、フリー討伐でのびのびと冒険を進めてもらってもいい。このコースは本当に自由度が高いんですよ。多いのはフリー討伐メインで、行き詰ったら現地インストラクターを雇用して限界突破、ですかね(あと、大怪我を負っての戦線離脱……)」


 最後に何か聞こえた気がしたが……まあ、いい。体験入会ではなく、今日からは正式なスポーツクラブの会員だ。

 入会金、月会費。それを回収するためにも、どんどん魔物を討伐して、どんどんどんどん体重を減らしてやる!


「あ、太田様。こちら、試供品のプロテインバー詰め合わせです。入会記念に差し上げます」


 とりあえず、コレを食ってから!!





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