6 / 40
第二章 初級講習
6 加護持ち! 驚きの能力値測定結果
しおりを挟む
「すごい! 魔力がありますよ!」
体験入会の翌月。俺は正式にスポーツクラブに入会した。申し込んだのは当然『魔王討伐コース』だ。
その、入会の為の能力値の測定で、俺はびっくりすることを言われた。なんと、俺には魔力があるらしい。
俺が今いるのは測定ブースにある、魔王討伐コース用の魔法陣。検査結果が、次々とカードキーに表示されていく。
これは入館証であると同時に、異世界へ飛ぶ際にも絶対に必要な物らしい。
失くしたら帰ってこられませんよ? 失くしたら帰ってこられませんよ? とインストラクターにしつこく言われたが、むしろフラグを立てているような気がして落ち着かないからやめて欲しい。
いや、それよりも。
「魔力があるって……ソレ、すごいことなんですか?」
「ええ、ええ! それはもう。滅多にいらっしゃいません」
「じゃ……じゃあ、向こうで伝説の勇者とか伝説の魔法使いとか呼ばれちゃったりするような……?」
マジか。俺、体脂肪が高すぎますねとか、コレステロール値がどうこうとか、マイナス方面でしか特別扱いされたことないぞ。
これ、来るか? 実は俺が伝説の勇者……みたいなパターン、くるか? とか若干いい気になっていたら。
「あーいえ。そこまでは。確かに魔力持ちは珍しいですが、お客様……太田様がお持ちの魔力は初心者用フィールドのスライム程度なので。まあ、頑張れば初級の回復魔法を一、二回かけられるようになるかな……ってとこですかね。でも、すごいことですよ!」
持ち上げられて下げられて上げられた。
正直どんな反応していいのか分からないが、魔法を使えるようになるかもしれないというのは純粋に嬉しい。だから、ここは喜んでおこう。
「魔力持ちで良かったです。で、俺どれくらいの魔力を持ってるんですか」
スライム程度、って言われても正直よく分からない。
「『10』くらいですかね。レベルが上がれば少しずつ増える可能性もありますし、本当にすごいことです」
思ったより高かった。これは、もしかしたら努力次第ではやっぱり英雄コース……。
「まあ、夏休みの水泳教室に通ってたお子さんが遊びで測って『500』の数値をたたき出したうえ、聖女スキルをお持ちだったのでそれと比べると見劣りしますが」
勝負にならなかった。
「すごいですね。その子供も、魔王討伐コースに?」
「あ、いえ。流石にこれは凄いと思ってしつこく勧誘したら退会されてしまいまして」
大丈夫か、ここのスポーツクラブ。心配しつつも計測は続く。
続いてのスキル検査で真っ先に表示されたのは『煽り』。これは敵を怒らせる効果があるらしい。ネットを長時間やる人間には割と出るスキルだそうだ。
ああ、はい。多少思い当たる節はありますよ。……ふう。
「ああっ! すごい! 加護もありますよ」
「えっ! 何の?」
もう騙されないぞ、期待なんてしない……そうは思うものの、つい期待してしまう。
だって、あれだろ? 加護って神様とか女神様とか、中二を期待していいんなら邪竜とかそういう、かっこいい奴に守られてて……。
「これは、珍しい! 見たことないです」
「何の!? 俺、どんなすごい加護を持ってるんですか!?」
「……スライムです(ププッ)」
「へ?」
「いや、これは本当に珍しい! 加護って、強いものが弱いものに与えるものなんですよ。よっぽど気にいられたか、スライムより弱いと思われたか……」
「もういいです……」
その後は無駄口を叩かず、粛々と計測を進めた。
そうして、判明した俺の初期スペックは。
魔王討伐コース会員:太田
身長176 体重●●● 魔力10 レベル1
スライムの加護 スキル:煽り
:言語理解
「ああ、言語スキルをお持ちですね。これは、結構いらっしゃいますが、便利ですよ。レベルが上がれば、現地の人との会話も可能です。スキルはこちらでの影響が出やすいんですよ。何か、専門的な語学の学習でもされてました?」
「いえ。大学生ですけど英語苦手なんで」
「あ、そ、そうですか……あれえ? おかしいな」
インストラクターの説明によると、あくまでこれは初期値。なので、この先どんどん変化していくそうだ。
そう、主に体重とか体重とか体重とか。
「とりあえず、初級はインストラクター同伴で、3種類の魔物を倒していただきます。そこからは、個人の自由です。個人コーチを雇ってパーティーを組んでもいいし、フリー討伐でのびのびと冒険を進めてもらってもいい。このコースは本当に自由度が高いんですよ。多いのはフリー討伐メインで、行き詰ったら現地インストラクターを雇用して限界突破、ですかね(あと、大怪我を負っての戦線離脱……)」
最後に何か聞こえた気がしたが……まあ、いい。体験入会ではなく、今日からは正式なスポーツクラブの会員だ。
入会金、月会費。それを回収するためにも、どんどん魔物を討伐して、どんどんどんどん体重を減らしてやる!
「あ、太田様。こちら、試供品のプロテインバー詰め合わせです。入会記念に差し上げます」
とりあえず、コレを食ってから!!
体験入会の翌月。俺は正式にスポーツクラブに入会した。申し込んだのは当然『魔王討伐コース』だ。
その、入会の為の能力値の測定で、俺はびっくりすることを言われた。なんと、俺には魔力があるらしい。
俺が今いるのは測定ブースにある、魔王討伐コース用の魔法陣。検査結果が、次々とカードキーに表示されていく。
これは入館証であると同時に、異世界へ飛ぶ際にも絶対に必要な物らしい。
失くしたら帰ってこられませんよ? 失くしたら帰ってこられませんよ? とインストラクターにしつこく言われたが、むしろフラグを立てているような気がして落ち着かないからやめて欲しい。
いや、それよりも。
「魔力があるって……ソレ、すごいことなんですか?」
「ええ、ええ! それはもう。滅多にいらっしゃいません」
「じゃ……じゃあ、向こうで伝説の勇者とか伝説の魔法使いとか呼ばれちゃったりするような……?」
マジか。俺、体脂肪が高すぎますねとか、コレステロール値がどうこうとか、マイナス方面でしか特別扱いされたことないぞ。
これ、来るか? 実は俺が伝説の勇者……みたいなパターン、くるか? とか若干いい気になっていたら。
「あーいえ。そこまでは。確かに魔力持ちは珍しいですが、お客様……太田様がお持ちの魔力は初心者用フィールドのスライム程度なので。まあ、頑張れば初級の回復魔法を一、二回かけられるようになるかな……ってとこですかね。でも、すごいことですよ!」
持ち上げられて下げられて上げられた。
正直どんな反応していいのか分からないが、魔法を使えるようになるかもしれないというのは純粋に嬉しい。だから、ここは喜んでおこう。
「魔力持ちで良かったです。で、俺どれくらいの魔力を持ってるんですか」
スライム程度、って言われても正直よく分からない。
「『10』くらいですかね。レベルが上がれば少しずつ増える可能性もありますし、本当にすごいことです」
思ったより高かった。これは、もしかしたら努力次第ではやっぱり英雄コース……。
「まあ、夏休みの水泳教室に通ってたお子さんが遊びで測って『500』の数値をたたき出したうえ、聖女スキルをお持ちだったのでそれと比べると見劣りしますが」
勝負にならなかった。
「すごいですね。その子供も、魔王討伐コースに?」
「あ、いえ。流石にこれは凄いと思ってしつこく勧誘したら退会されてしまいまして」
大丈夫か、ここのスポーツクラブ。心配しつつも計測は続く。
続いてのスキル検査で真っ先に表示されたのは『煽り』。これは敵を怒らせる効果があるらしい。ネットを長時間やる人間には割と出るスキルだそうだ。
ああ、はい。多少思い当たる節はありますよ。……ふう。
「ああっ! すごい! 加護もありますよ」
「えっ! 何の?」
もう騙されないぞ、期待なんてしない……そうは思うものの、つい期待してしまう。
だって、あれだろ? 加護って神様とか女神様とか、中二を期待していいんなら邪竜とかそういう、かっこいい奴に守られてて……。
「これは、珍しい! 見たことないです」
「何の!? 俺、どんなすごい加護を持ってるんですか!?」
「……スライムです(ププッ)」
「へ?」
「いや、これは本当に珍しい! 加護って、強いものが弱いものに与えるものなんですよ。よっぽど気にいられたか、スライムより弱いと思われたか……」
「もういいです……」
その後は無駄口を叩かず、粛々と計測を進めた。
そうして、判明した俺の初期スペックは。
魔王討伐コース会員:太田
身長176 体重●●● 魔力10 レベル1
スライムの加護 スキル:煽り
:言語理解
「ああ、言語スキルをお持ちですね。これは、結構いらっしゃいますが、便利ですよ。レベルが上がれば、現地の人との会話も可能です。スキルはこちらでの影響が出やすいんですよ。何か、専門的な語学の学習でもされてました?」
「いえ。大学生ですけど英語苦手なんで」
「あ、そ、そうですか……あれえ? おかしいな」
インストラクターの説明によると、あくまでこれは初期値。なので、この先どんどん変化していくそうだ。
そう、主に体重とか体重とか体重とか。
「とりあえず、初級はインストラクター同伴で、3種類の魔物を倒していただきます。そこからは、個人の自由です。個人コーチを雇ってパーティーを組んでもいいし、フリー討伐でのびのびと冒険を進めてもらってもいい。このコースは本当に自由度が高いんですよ。多いのはフリー討伐メインで、行き詰ったら現地インストラクターを雇用して限界突破、ですかね(あと、大怪我を負っての戦線離脱……)」
最後に何か聞こえた気がしたが……まあ、いい。体験入会ではなく、今日からは正式なスポーツクラブの会員だ。
入会金、月会費。それを回収するためにも、どんどん魔物を討伐して、どんどんどんどん体重を減らしてやる!
「あ、太田様。こちら、試供品のプロテインバー詰め合わせです。入会記念に差し上げます」
とりあえず、コレを食ってから!!
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
華麗に離縁してみせますわ!
白乃いちじく
恋愛
【第14回恋愛小説大賞受賞作:本編完結済:ただ今番外編投稿中】
「お前ほど醜い女はいないな」
これが新婚初夜でわたくしに言い放った旦那様の言葉です。
どう言葉を返せば良いのやら。まぁ、旦那様はお金のために身売りしたようなものなので、気持ちは分かりますが、新妻にあたりちらすのはどうかと思います。こちらも被害者ですしね。
でしたら、その男優も顔負けの美貌を生かして、金持ちのパトロンでもひっかければ良かったのでは? と思います。愛でお腹は膨れませんよ? 甲斐性なしの朴念仁と心の中で罵っておきます。
とにもかくにも、白い結婚は確定したようなので、離婚を目指して奮闘していたら、何やら私に対する旦那様の態度が変わってきたような? おやあ? 気のせいですよね?
*******申し訳ありません、名前を変更します*******
ウォル・バークレア →ウォレン・バークレアになります。ニコルとウォルを同時に出すと、何故か両者がごっちゃになるという珍現象が。そこまで似ている名前ではないはずなのですが、ニコルの元気でやんちゃな顔と、ウォルの優しくぽわぽわした顔が時々入れ替わる、うーん……
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
婚約破棄からのリスタート ~私は商人を目指します。戻って来いと言われても知りません~
藍田ひびき
恋愛
ファレル子爵令嬢アデラインは、アシュバートン侯爵令息ルーファスから突然に婚約破棄を言い渡された。彼はアデラインの妹クリスティーナと浮気していたのだ。
しかもルーファスは、婚約者はクリスティーナとするが、アデラインにはこのまま館へ残るようにと言い出した。
自分の仕事を押し付けようとしている。そう悟ったアデラインは、ルーファスの提案を断ってアシュバートン侯爵家を去り、その足でハズウェル商会の門を叩く。
働きたいと述べる彼女に商会の若き支部長スタンリーは困惑しつつも、一時的に彼女を受け入れることを決める。アデラインの新しい生活が始まった。
※ なろうにも投稿しています。
妹に騙され性奴隷にされた〜だからって何でお前が俺を買うんだ!〜
りまり
BL
俺はこれでも公爵家の次男だ。
それなのに、家に金が無く後は没落寸前と聞くと俺を奴隷商に売りやがった!!!!
売られた俺を買ったのは、散々俺に言い寄っていた奴に買われたのだ。
買われてからは、散々だった。
これから俺はどうなっちまうんだ!!!!
身体検査が恥ずかしすぎる
Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。
しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。
※注意:エロです
庶民のお弁当屋さんは、オオカミ隊長に拾われました。愛妻弁当はいかがですか?
ろいず
恋愛
=2021年4月書籍化致しました=
勇者召喚に巻き込まれたお弁当屋さんで働く七和日南子(ななわひなこ)
勇者の暁炎路(あかつきえんじ)が魔王を討伐したら一緒に元の世界に戻してもらえると言われて、暁の旅が終わるまでの間、せっせと毎日城下でバイトに明け暮れる日々を送っていたが、暁が魔王を倒したが___日南子は帰れるどころか、異世界に置いてけぼりにされてしまう。
黒目黒髪の珍しさから貴族に売り飛ばされ、船に乗せられていたが、イカの化け物に襲われ死を覚悟した時、獣人の国の船に助けられる。
獣人の国で行く当てもない日南子は途方に暮れてしまうが、警備隊長の狼獣人グーエンに拾われる。
グーエンに生活が出来るまで居候していいと家を提供され……
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
気がついたら無理!絶対にいや!
朝山みどり
恋愛
アリスは子供の頃からしっかりしていた。そのせいか、なぜか利用され、便利に使われてしまう。
そして嵐のとき置き去りにされてしまった。助けてくれた彼に大切にされたアリスは甘えることを知った。そして甘えられることも・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる