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33 心配いらないよ

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「ゴメン。しっかり者の君が泣いていたから、心配で」

「……言ってくれれば良かったのに」

「言えないよ。故郷が恋しいから帰る――なんて言われたらと思うと心配で心配で」

「えっ! 心配って、そっちなの!?」

「もちろん。だって――これはどう考えたって里帰り用の魔法陣だしね」


 建国神話に出てきた女神は間違いなく竜人だろう。そして、遠く離れた故郷を思い、作られたのが魔法陣。オネストは枕を涙で濡らすリベルタを見てそう判断した。

 あれさえあれば、リベルタをいつでも家族に会わせてあげられるかもしれない。そうすれば里心がついて泣くこともなくなるだろう。オネストも余計な心配から解放される。

 とはいえそれらすべては推論に過ぎないのだ。

 もう一度実際に宝物庫へと入って、あのカーペットを確かめないことには始まらない。しかし、冤罪をかけられ、国から追放された今のままでは城にさえ入れない。
 宝物庫へと自由に入る権利を手に入れる必要がある。

 その為には……!!


「ちょ……、待って待って! オネスト、その……っ」

 リベルタへの愛と気遣いに溢れたオネストの説明を照れながらも大人しく聞いていたのだが。彼が下した決意の方向に、ふと一つの疑念が浮かんで話を止める。


「ええと……。もしかして、急に貴方が冤罪を晴らすのにやる気を出してくれたのって」


 オネストが創る国を見たいと思ったのはリベルタだ。王位に興味がなかったオネストは最初、あまり積極的ではなかった。それが突然やる気を出した。

 きっと、王子という立場にありながら社会の底辺を実体験したことで、使命感のような物が産まれたのだろう――とばかり思っていたのだが。


 もしや――と愛しい人を見上げればニッコリと満面の笑みで。


「あ、うん。正直、地位に未練はなかったけど、王族に戻らないと宝物庫には入れないし。ああ、でも安心して。やるからには全力でいい国を作るつもりだから。その分、リベルタの国の言語を覚えたりだとか、古語を覚えたりだとか、休憩時間を使ってコツコツ魔法陣の解明をしていたせいで、今日まで時間がかかっちゃった訳だけど。まあ、でも、おかげで新獣人国の言語も覚えられたから、リベルタのご両親にもしっかり挨拶ができるからよかったよ。ああ、そうそう、僕の僅かな魔力にも反応したくらいだから、君の魔力を使えば家族全員を魔法陣で連れて来られるんじゃないかな。これで結婚式にも参加してもらえるね」




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