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13 リベルタのいないデビュタント(竜王視点)

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「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」

 年に一度のデビュタントの日。新成人の娘たちを前に、義務的にこなす、番の判別――。

 だが、この日はいつもと違った。


「はあ……。今年は随分と長いのだな。まだあるのか……」

「いえ。今年は先ほどの娘で最後です」

「――は? まだ、リベルタ……ああいや、アシュランス伯爵令嬢の判別をしていないぞ?」


 成人の儀にあたっての番の判別作業。まずはこの年に成人年齢を迎える令嬢たちの判別作業を行い、最後に翌年回しになっている者の再判別を行う。

 ここ何年か……少なくともリベルタが最初のデビュタントを迎えてからはずっとそうだったはず。

 不思議に思ったヴァールは慌てて傍に控える側近に確認を取った。


「ああ。アシュランス伯爵令嬢は、今年は不参加のようですね。彼女は伯爵家の一人娘ですから、跡継ぎ教育や引継ぎなどで予定が合わないこともあるのでしょう。彼女は竜人ですが、両親は猫獣人ですからね。現伯爵もいい年齢ですし、代替わりをする上での時間的な制約もあります。流石に十年もの間、成人の儀に無理矢理参加させてきましたから、国としてもあまり無理は言えません」

「時間的な制約……。そうか、そうだったな……」


 王族は例え政略で人間の血を多く取り入れてきたとしても、代々血を繋いできたのは竜人種として生まれた者のみ。

 それゆえ同じ竜人といえど、王族と先祖返りのリベルタでは寿命が違う。500年を生きるだろうヴァールとは時間の感覚自体が違うのだ。


「まあ、そういうことなら仕方がない。なに、先祖返りとはいえ、彼女も竜人だ。人間とは違い、一年や二年は大した時間じゃない。焦らずともそのうちまた、落ち着いて参加できるようになるだろう」


 そう。時間の感覚が違うのだ。


 先祖返りの竜人と王族の竜人とは寿命が違うように。
 王族と人間の寿命も遥かに違う。

 ヴァールからすると短い一生を懸命に生きる人間は特別なものに思えてくる。


「ヴァール様、人間国からの使者の方たちがご挨拶をと――」

「――ああ。人間にとって貴重な時間を無駄にしてしまっては申し訳ないな。すぐに行こう」


 少しばかりの寂しさと物足りなさを感じながらも、ヴァールは煌びやかに着飾った令嬢達との会話にのめり込んでいった。



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