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委員長side

4 10年後の委員長

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 その後。色々あったけど、10年たって無事に同窓会ができて本当によかったって思っている。


 卒業式の翌日。二人を迎えに来た王子の護衛に生徒会長が刺された時は本当にびっくりした。このまま死んじゃうんじゃないかって。

 でも、悪役令嬢のヴィーナさんが卒業式の時と同じように不思議な力で治してくれた。必死に自分を律して感情を見せないようにしていたから、このままフラグ回収せずにおわるのかなって心配していたけど、冷静な彼女が取り乱す様子を見て、ああ良かったうまくいくパターン来たってホッとした。ちょっと胸は苦しかったけど、ヴィーナさんいい子だし。

 彼女も彼女で幸せ掴みにくいタイプだと思ったからちゃんと落ち着くところに落ち着いてくれて良かったわ。今の時代、悪役令嬢だって幸せになっていいって思うのよ。


 それにしても、問題はあのクソ第一王子と護衛よ。ウチの生徒会長に何してくれてんの? お陰でその後の乙女ゲー人生で王子ルートと護衛騎士ルートに苦手意識が出ちゃったじゃないの。まあ、普通に攻略はするけど。隠しキャラとか出ないと嫌だし。自称ヒロインもあんな奴選んじゃっていいのかしら。

 流石に托卵はやりすぎじゃないかってドン引きしたけれど、生徒会長の件があったからむしろ王子ざまぁって思ったのは内緒。でも彼女とは友達だし、バレたらどうするのかなって心配していたら同窓会の冒頭で自称ヒロインが第一王子から全速力で逃走するんだもの。ああ、彼女何も変わってないなって分かってビックリした。

 あの子、あれだ。ちゃんと私が見ててあげないと駄目だ。


 同窓会終わったらギャル達に連絡先を聞こう。なんか既にやらかしてそうな予感はするけど、貴重な乙女ゲーム友達だしね。あり得ない変な選択肢ばかり選ぶトラブルメーカーなお花畑だけど、私は見捨てたりしないわよ。

 私がモブで碌な恋愛イベントない分、ちゃんと最前線で見守ってあげる。ちゃんと、ハッピーエンドにたどり着けるようにね。


 同窓会の途中、そんなことを考えていたら、懐かしい人たちが近寄ってきた。相変わらず全身真っ黒だわ。全員が隠しキャラみたい。でも、街中で結構見かけるのよね。この間も、昼休みにコンビニにお弁当買いに行ったときに見かけたし。会社近いのかしら。

 会社近くにオシャレなお店いっぱいあるけど、給料は生活費と老後の貯蓄分以外は乙女ゲームに極振りしたいから行ったことないのよね。アフター5は即帰宅でゲーム機ОN! あー出会いないわぁ。


「委員長、その……」
「萩原君久しぶり。ビール取りに来たの?」

「!! やっぱり識別できてる……」

「委員長! 私! 私は!?」
「荻原さんすっかりきれいになって」

「あの……」
「秋原君、久しぶり」

「……どうも」
「あ、荘原君、この間は忘れ物届けてくれてありがとう」

「「「「!!!!」」」」


「ちょ、何抜け駆けしてるのよ。私だってもっと認識されたい! 名前呼ばれたい!」
「うるさい、コンビニで傘忘れてたから届けただけだ。あ、名前は呼ばれた(ニヤリ)」
「ズルいぞ!! ちゃんと、俺に許可を取れと」
「部長はいいじゃないですか。一応、クラスでは『部長』って認識されていたんだから。俺なんて、一番影が薄かったんですよ」

「まあまあ、落ち着けよ。名前呼ばれたぐらいで」
「そうだそうだ。いいなー、もう」

「今日は隣のクラスの2人も来ていたのね。薮原君と苑原君だっけ。下の学年の子は残念だったわね。7人とっても仲良かったのに。あれ? さっきの子は誰かの子供じゃないの?召喚したときに居た気がしたけど」

「「!!」」

 話してたら、なんか全員固まった。酔っちゃったのかしら。そうね、結構みんなで盛り上がっていたし。お水持ってきてあげよう。一人減っちゃって六人しかいないけど、一応七杯持ってくるか。なんかそんな空気だし。


 何か、この日を境に彼らと顔を合わせる頻度が増えた。私の会社と勤め先が近いらしい。皆、一緒に仕事をしているんですって。部活仲間で会社まで作っちゃうって仲良しね。

 今度、一緒に働かないかって誘われた。うーん。でもなー。今の会社待遇そこそこいいし、ゲームやる時間取れるから気に入っているのよ。そう言ったらゲームにも関係する仕事だって言われた。

 なんかね、手広くやっていて不満を解消するとか世界の垣根を越えて幸せをどうとか……。シナリオの穴をついてどうとか。よく分からないけど、とりあえず食事しながら話しませんかって言うから行こうかなって思ってる。

 でも、来月は気になっている乙女ゲームの発売日が被るから無理ね。クリアしてから連絡しよう。はあ。仕事の話ばっかり。

 私も素敵な出会い欲しいわぁ。



 そんな私が大好きな眼鏡さんばかりの乙女ゲーム紛いの恋愛イベントにいつの間にか巻き込まれているのに気が付くのは少し先の話。




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