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リリーside
19 同窓会のお知らせ
しおりを挟むクリスの愛を失った私は、子育てに生きがいを見出そうとした。しかし、私のことは信用できないからと産まれたばかりの娘は取り上げられ、まだ幼いユージンは政略で隣国へと送られた。嘘がバレてしまった以上、この国に息子の居場所がないのは分かる。でも、こんなのはあんまりだと思う。あんなに可愛がって溺愛していたのに、クリスはもう、ユージンを見ようともしなかった。
それからのことは正直あまり覚えていない。淡々と公務をこなし、クリスと共に義務的に眠りにつく日々。
何がいけなかったのだろう。どこで間違えたんだろう。そうして思い出すのは召喚されてしまったあの世界での、ユージとのキラキラした楽しい毎日。ああ、そうだ。あの頃が一番楽しかった。今はもう、夢の中でしかユージに会えないけれど。
だから眠るのだけが唯一の楽しみだったのに、気が付けばいつも彼に謝っていた。謝りながら目が覚める。
大事な子供を守れなくてごめんなさい。
手元で育てられなくてごめんなさい。
彼との愛の結晶であるユージンは隣国に送られたから、同じ世界だというのに、もう気軽に会うこともできない。手紙を出しても返事がないから届いているのかも分からない。
そんな風に抜け殻のように過ごしていたときに届いたのが――同窓会のお知らせだった。
以前は手紙一つやり取りできなかったというのに、ここ数年で随分技術が進歩したようだ。送り主はギャル達だろう。見覚えのあるくせ字に勇気をもらった。
「あのね、向こうで同窓会があるから行かせてほしいの。心配ならついてきても構わないわ。同行者も一人までなら連れて行けるんですって。それに、終わったら送り届けてもらえるから大丈夫よ。ね、いいでしょう? みんなに会いたいの」
私はクリスに頼み込んだ。すっかり信用を失った私はどこへ行くにも監視が付いていて、外出も制限されている。普通に考えれば無理だろう。でも、これを逃したらもうチャンスはない。それに……私には切り札があった。
夜、うなされて起きるとなかなか寝付けない。そうなると朝まで寝たふりをしながら考え事をして過ごしていたのだが。
そうした夜中。ベッドを抜け出しこっそりと自室に戻って、刺繍入りのハンカチを手にして物思いにふけっているクリスを何度も見た。ハンカチには見覚えがあった。悪役令嬢が、あちらの世界で刺していたものだ。
だからこれはゲームの知識ではなく、私自身がこの目で見て、確信したこと。
クリスは悪役令嬢に未練を残している。
ならばそこをついてやればいい。
「もちろんヴィーナスさんも出席するわ」
予想通り、この一言でクリスは落ちた。
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