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続編

6 結婚式は異世界で

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 そう。結婚式は国外は国外だけど、海外ではなくて異世界挙式だった。

 せめてヴィーナの花嫁姿をあちらの両親に見せてあげたいと、オカルト研究会の連中に相談したのだ。気のいい奴らはノリノリで先方に連絡を取ってくれた。

 ヴィーナは「国外追放」になっているから、元の国には戻れない。そうしたらこちらとあちらの窓口になっていた神官長が隣国に移っていることが分かり、そこがヴィーナの母親の出身国でもあったことから、隣国で式を挙げることができた。

 面倒ごとを避けるためにひっそりとした結婚式だったが、ヴィーナの両親や、母方の祖母にもこっそりと出席してもらえて、ヴィーナは嬉しそうだった。あちらの家族にもとても感謝された。

 彼女をもう一度家族に会わせてあげられたのは彼らの協力があってこそだ。だから、とても感謝している。

 ただ、オカルト研究会の連中が悪ノリして作ってくれた「新婚さん用異世界転移往復魔法陣」は、今日使われた魔法陣のように神々しい感じはなく、転移するときにはピンク色の光に包まれ、ハート型の花びらが舞い散るバカップル仕様になっていて、実際に使った時には羞恥でめまいがした。
 あれは正直どうかと思うが、花嫁は幸せそうに笑っていたので、あれはあれでよかったのかもしれない。

「新婚さん用」ということで、復路の有効期限は一カ月ほどあり新婚旅行も異世界だった。そのお陰でヴィーナをしっかりと両親と共に過ごさせてあげられたし、しかも、行きの定員は二名だが、帰りには一人増えてても大丈夫という安心設計。しっかりと利用させてもらった身としては、その配慮はただただありがたかった。

 今後も何かと世話になることもあるかもしれないし、ちゃんと挨拶をしておくかと黒ずくめの連中の様子を窺えば、何度目かの乾杯をしようとビールを七杯ほど運んでいる。

 席には六人。あれ……?そういえば何やら呼び出していたし、目には見えないけどもしかして……。いや、酔ってるんだな、俺。邪魔しても悪いし挨拶はいいや。


「うっふっふ~。茂呂生徒会長飲んでる~?」
 すっかりと出来上がった委員長が絡んできた。先ほどまでは嫁と一緒に盛り上がっていたはずだ。ヴィーナはどこにいるのかと思えば、座って大好物のうどんを食べていた。

「ヴィーナさん、喜んでたよ~。初めて、旦那様にフルネームで呼んでもらえたって」

「それは……」

 そう。俺はずっとヴィーナの名前を呼ぶことを避けていた。
 君、とか。コイツ、とか。頭の中では悪役令嬢とか呼んでた。結婚してからはなおさら避けてた。

「だって、言えないだろ。茂呂ヴィーナスなんて」

 もろ、愛と美の女神。
 俺のヴィーナス。俺の愛と美の……なんて恥ずかしくて言えるかっ。

 ただの照れ隠しだ。でも、それが本心である以上、一度気にしてしまうと恥ずかしくて口に出せなかった。
 さっきはあのバカ王子への怒りで我を忘れていたから普通に言えたけど、思い出すとやっぱりちょっと恥ずかしい。でもあいつ……ヴィーナの奴、思っていたより気にしてたのか。まあ、あのバカ王子のお陰できっかけはできたし、これからは普通に呼べそうだ。



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