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本編

5 悪役令嬢と手打ちうどん

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 自称ヒロインの我が儘から始まったお茶会は三年の二学期になってもまだ続いていた。ただ、何度目からか自称ヒロインが嫌がるからと、悪役令嬢が参加を辞退した。そのあたりから自然と参加者が減ってしまい、その影響で大分規模は縮小されている。

 完全に学校の女子を敵に回した彼女のお茶会に参加するのはもはやギャル達だけだ。

 マナー無視のお茶会は見るに堪えないが、楽しそうではある。意外なことにギャル達と自称ヒロインは気が合うようで、たまに揃って学校をサボることが増えてきた。

 彼女の世話係である面倒見のいい委員長は、そんな自称ヒロインを心配そうに見つめていた。


 自称ヒロインと違いあまり我が儘を言わない悪役令嬢だったが、一度だけ「うどん作りをしてみたい」とリクエストしてきた。

 帰国の日程が決まった頃のことだ。

 予算もたいしてかからないし、学校の調理室も使えるのですぐに希望者による手打ちうどん講習会が開かれた。

 悪役令嬢と手打ちうどん。

 字面のギャップに興味を引かれたのか、かなりの人数が参加した。悪役令嬢は自らが希望しただけあって、かなり真剣にうどんを打っていた。小麦粉が顔についても気にもしていない。
 その姿を見て、美しいな、と思った。

 出来上がったうどんを味見してほしい、と言われたのでありがたくいただいた。初めてにしては上出来だと思う。見た目に多少バラつきはあるが、程よい塩味が食欲をそそる、優しい家庭的な味だ。

「おいしいよ」

 と言うと、悪役令嬢は少しはにかんだ笑顔を見せた。しかし、自らも出来上がったうどんを口にした途端、

「太さがバラバラだと食感に偏りがでますわね。コシも弱いしまだまだですわ。帰国までに練習しなくては」

と、真剣な顔でぶつぶつ言いながらメモを取っていた。

 どんだけ極めるつもりなんだ。



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