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17 王子様は見た

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「で……殿下?」

「アスク様??」


「不敬だ。お前に私の名を呼ぶ権利を与えた覚えはないし、そもそも妹の方には発言すら許していない。大体、伯爵家で虐げられていたのもいじめられていたのも、姉であるノーラの方だろうが。ああ、二人とも下らぬ言い訳などはせぬように。伯爵は先ほど『どこでノーラの情報を得たのか』と言っていたな。見たんだよ、私がこの目でな」

「――は? な、何を……」

 苛立ちを隠すことなく、二人を睨みつけながら言い放つ王子様。突然の豹変に二人が戸惑っているが、王子様は止まらない。


「自分たちは食べきれぬほどの御馳走を日々食べながらノーラには一人分にも満たないひどい食事を与え、それすら与えぬ日も多かっただろうが。日当たりの悪い、狭く何もない人目に付きにくい部屋に住まわせていたのも調べがついている。ああ、そうそう。0点のテストはいい加減、隠し場所を変えた方がいい。そのうち天井が落ちてくるぞ。あれでよく王子妃になるなどと言えたものだな。恥を知れ」

「は? え? な、何でそれを」

「言っただろう。『私が』『この目で』『見た』のだと」


 王子様はそう言ってニヤリ……と嗤うと。



パサパサッ……



「…にゃ~ん!」



 その場で毛並みも艶やかな黒猫に変化した




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