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12 プロポーズと結婚の条件

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「……私もあのまま王子様とずっと一緒に暮らしたかったわ。今もその気持ちは変わらない。でも、無理よ。私は伯爵家出身ではあるけれど、そんなの名ばかりだもの。貴方だって知っているでしょう? 母が生きていた頃はともかく、今の両親から愛されなかった私は貴族に必要な社交もしていない。栄養だけでなく教養だって足りていないわ。妹と違って、私は学校にも通っていないもの……」

「だけど、学ぶことは好きだろう? 君と一緒に暮らす中で見てきたからね。あの過酷な環境の中で、君が何よりも学ぶ機会を欲していたのを僕は知っているよ。大丈夫。僕の父と母、それに王妃様への根回しも済んでいるんだ。君と僕は結婚できる……君がこれから2年以内に王子妃教育を終わらせることが条件だけど」

 そう言うと第三王子殿下は私の手を取りその場に跪いた。


「ノーラ・ラッテ伯爵令嬢。この先も僕はずっと君と一緒に居たい。だから、どうか僕と結婚してください。ごめん……実はどうしても君と結婚したくて、勝手に王妃様が出したその条件を飲んでしまったんだ。……怒ってる?」


 王子様の言葉に驚いた私は目を見開いた。

 プロポーズの為に片膝をついているせいで、王子様の目線はベッドに身を起こしている私よりも下となっている。

 ビクビクと。私の機嫌を窺うような上目遣いの目は、猫だった時の王子様が何かイタズラをした時のことを思わせる。


 勝手に部屋を抜け出して。

 私を笑わせるために妹が隠している0点のテストを盗って来たり……危険を冒してまで厨房からおかずを盗んで来たり。


 王子様の身体を張ったイタズラはいつだって私の為を思ってのもので、彼の身を案じる以外の理由で怒ったことなど一度もない。

 ……今回のことだってそう。


「……まさか。だって、王子様はわざわざ私に勉強する機会を与えてくれたのでしょう? どこまで出来るか分からないけれど……せっかく王子様が王家の方々と大変な取引をしてまで私を迎えに来てくれたのだもの。大好きな王子様とこの先ずっとずっと一緒に暮らすためにも、私だって必死に勉強を頑張るわ」

「……ありがとう。君ならそう言ってくれると思っていたよ」


 嬉しそうな顔でスッと立ち上がる王子様。

 優しく笑んだ大好きな王子様の柔らかな青い目が私に近づいてきて――唇が触れ合う寸前でそっとその目が閉じられる。私も目を閉じてそれを受け入れた。




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