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「やだ、かわいそー」
「ほんと、誰か助けてあげたら?」
遠巻きに何かを見ながら少女たちがそれぞれを突き合いながら騒いでいる。どうやら木の下には助けが必要な「何か」が居るらしい。
マリアがもう少しだけ近づくと、その「何か」が見え始める。それは泥で汚れた小さな仔犬のようだった。丸くなって目を閉じているが浅く呼吸はしているらしい。
仔犬の周りにいる少女たちは自分で助ける事も誰か大人を呼ぶ事もせず「汚いモノを憐れむ事の出来る優しい自分」を装うのに必死なのが良くわかる。
だがマリアは周囲を見渡して大人の姿が見えないと分かると、真っ直ぐ仔犬に近づく。そして躊躇いもせずにそっと抱き上げたのだ。
これには周囲の少女たちも少し遠目に観察していたジェラルドも瞠目する。少女たちはマリアの行動に気まずく思い、またそれが自分たちが憧れどうにかして欲しいと思っていた双子を誑かす女だと気付くと途端に意地悪い考えが沸き起こった。
「やだ、見てあの子汚い」
「本当ね。優しい女アピールかしら意地汚い」
「ドレスも泥だらけだわみっともない」
自分たちを棚に上げ倒し言いたい放題である。しかもジェラルドの方をチラチラと見ながら言っているところを見ると王子様の前で貶めるという目的もあるらしい。
マリアは少女たちの言っている事が良くわからなかった。目の前に弱っているらしい生き物(もしくは人間)がいれば手を差し出すのがマリアの普通だったからだ。
ただ、たしかに今自分が来ているドレスは仔犬の泥が付いてしまっている。思わずマリアの眉尻が下がった。
「汚くなんかねぇよ」
ここまで黙っていたジェラルドが口を開いた。そのままマリアに近づきマリアの抱いた仔犬の様子を確認する。どうやら衰弱しているようだ。
キョトンとしているマリアに気付きついて来いとだけ言ってさっさと歩き出した。中庭ではジェラルドにきつい言い方で咎められて顔を青ざめたり悔しさに真っ赤になっている少女たちだけが取り残された。
仔犬を連れた二人は、やがて王宮の医務室に辿り着いた。何種類かの動物を飼っている王宮なので動物用の薬やミルクなんかが常備しているためだ。
マリアとジェラルドがミルクを用意している間に医務室に常駐している治癒師が仔犬を洗ってくれていた。
薄汚れた仔犬はあっという間に真っ白でフワフワの可愛らしい仔犬に変貌していた。相変わらず弱ってはいるが見た感じで怪我はなさそうで二人はホッとした。
しかしすぐに二人の表情が曇る事になる。仔犬が一向にミルクを飲もうとしないからだ。意識はあるようで薄く眼を開けるのだがミルクを口元に持っていっても拒否するようにまた眼を閉じてしまう。
途方に暮れる二人に対して治癒師が思ってもみなかった事を告げる。
「あぁ、やはり普通のミルクは口にしませんねぇ。幻獣ですからねぇ」
「ほんと、誰か助けてあげたら?」
遠巻きに何かを見ながら少女たちがそれぞれを突き合いながら騒いでいる。どうやら木の下には助けが必要な「何か」が居るらしい。
マリアがもう少しだけ近づくと、その「何か」が見え始める。それは泥で汚れた小さな仔犬のようだった。丸くなって目を閉じているが浅く呼吸はしているらしい。
仔犬の周りにいる少女たちは自分で助ける事も誰か大人を呼ぶ事もせず「汚いモノを憐れむ事の出来る優しい自分」を装うのに必死なのが良くわかる。
だがマリアは周囲を見渡して大人の姿が見えないと分かると、真っ直ぐ仔犬に近づく。そして躊躇いもせずにそっと抱き上げたのだ。
これには周囲の少女たちも少し遠目に観察していたジェラルドも瞠目する。少女たちはマリアの行動に気まずく思い、またそれが自分たちが憧れどうにかして欲しいと思っていた双子を誑かす女だと気付くと途端に意地悪い考えが沸き起こった。
「やだ、見てあの子汚い」
「本当ね。優しい女アピールかしら意地汚い」
「ドレスも泥だらけだわみっともない」
自分たちを棚に上げ倒し言いたい放題である。しかもジェラルドの方をチラチラと見ながら言っているところを見ると王子様の前で貶めるという目的もあるらしい。
マリアは少女たちの言っている事が良くわからなかった。目の前に弱っているらしい生き物(もしくは人間)がいれば手を差し出すのがマリアの普通だったからだ。
ただ、たしかに今自分が来ているドレスは仔犬の泥が付いてしまっている。思わずマリアの眉尻が下がった。
「汚くなんかねぇよ」
ここまで黙っていたジェラルドが口を開いた。そのままマリアに近づきマリアの抱いた仔犬の様子を確認する。どうやら衰弱しているようだ。
キョトンとしているマリアに気付きついて来いとだけ言ってさっさと歩き出した。中庭ではジェラルドにきつい言い方で咎められて顔を青ざめたり悔しさに真っ赤になっている少女たちだけが取り残された。
仔犬を連れた二人は、やがて王宮の医務室に辿り着いた。何種類かの動物を飼っている王宮なので動物用の薬やミルクなんかが常備しているためだ。
マリアとジェラルドがミルクを用意している間に医務室に常駐している治癒師が仔犬を洗ってくれていた。
薄汚れた仔犬はあっという間に真っ白でフワフワの可愛らしい仔犬に変貌していた。相変わらず弱ってはいるが見た感じで怪我はなさそうで二人はホッとした。
しかしすぐに二人の表情が曇る事になる。仔犬が一向にミルクを飲もうとしないからだ。意識はあるようで薄く眼を開けるのだがミルクを口元に持っていっても拒否するようにまた眼を閉じてしまう。
途方に暮れる二人に対して治癒師が思ってもみなかった事を告げる。
「あぁ、やはり普通のミルクは口にしませんねぇ。幻獣ですからねぇ」
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