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周囲から見えたのは、まずは白く小さな手だった。そしてカインにエスコートされてフワフワの愛らしい妖精の如く微笑みを讃えた少女。
きょとりと周りを見渡すその様は初めて人間界に降り立った好奇心旺盛な妖精そのもので、参加者付き添い関係なく周囲に居た少年たちが見惚れて固まっている。
それも含めて少女たち機嫌は一気に下降しているが側にいる少年たちは気付かない。先程まで自分の機嫌を取っていたのに態度の変化を妬ましく睨んでいた。
「何よあの子・・・」
「ちょっと可愛いからって調子に乗ってない?」
「どうせ性格ブスよ。無理やり一緒に居るに決まってるわ」
「そうよね、きっと性格悪いよね」
憧れて、婚約者になって欲しいと思っていた双子の少女を見る蕩けるような優しい眼差しに少なからずショックを受けた周りの少女たちは自分の付き添いである少年たちや親に八つ当たりをし始めた。
そんな周りのざわついた声と視線に少し怯えたのかマリアはカインの手をキュッと握った。それに気付いたアベルがカインとは反対側の手を握ってマリアの耳元に唇を寄せる。
「マリア怖いか?俺たちが居るから大丈夫だ」
「アベルの言う通りだよ。僕たちが守るからね」
双子の心強い言葉にマリアの縮こまった気持ちが暖かくなった。改めて二人が兄で良かったと思いながら。
「怖くないわ。兄様たちが居るもの」
ふわりと花が綻ぶように笑みを浮かべたマリアに一瞬目を見張ると双子は慌てて王宮内にある神殿へと向かった。マリアの余りにも愛らしいさきほどの笑顔に危機感を感じたからである。
あの笑みを一体何人が視界に入れてしまっただろうか。カインはマリアに向けた目を全員潰したいと唸りアベルは頭を殴れば記憶が飛ぶかなと二人共物騒な事を考えていた。
実際顔を真っ赤にしている子息が何人か居た。どこの家の者か全て把握済みだ。余計な事をすればすぐに家ごと潰す気満々である。
自分の笑顔にそんな威力がある事など欠片も分かっていないマリアは二人の素敵なナイトに護られて幸せにニコニコしっぱなしだ。
いかにも高価そうな調度品が並べられた厳かな廊下をルークに連れられて歩いていくとやがて大きな扉に辿り着いた。
重厚な木製の扉にルークが手をかける。重たそうな音と共に開かれるとそこはまさに教会のような雰囲気のある静かな部屋であった。
高い場所にあるステンドグラスから陽の光が差し込みキラキラと空気中を煌めかせている。マリアはまるで天界にあった王宮の王座の間のようだと見惚れていた。
最奥にある祭壇のような場所に大人の両手でも持てないような大きな水晶が鎮座し、神官であろう男が側に立っている。それで魔力値を測定するらしい。
今の自分にどれほどの魔力があるのか。マリアはドキドキと高揚する気持ちを抑えられずにいたのだった。
きょとりと周りを見渡すその様は初めて人間界に降り立った好奇心旺盛な妖精そのもので、参加者付き添い関係なく周囲に居た少年たちが見惚れて固まっている。
それも含めて少女たち機嫌は一気に下降しているが側にいる少年たちは気付かない。先程まで自分の機嫌を取っていたのに態度の変化を妬ましく睨んでいた。
「何よあの子・・・」
「ちょっと可愛いからって調子に乗ってない?」
「どうせ性格ブスよ。無理やり一緒に居るに決まってるわ」
「そうよね、きっと性格悪いよね」
憧れて、婚約者になって欲しいと思っていた双子の少女を見る蕩けるような優しい眼差しに少なからずショックを受けた周りの少女たちは自分の付き添いである少年たちや親に八つ当たりをし始めた。
そんな周りのざわついた声と視線に少し怯えたのかマリアはカインの手をキュッと握った。それに気付いたアベルがカインとは反対側の手を握ってマリアの耳元に唇を寄せる。
「マリア怖いか?俺たちが居るから大丈夫だ」
「アベルの言う通りだよ。僕たちが守るからね」
双子の心強い言葉にマリアの縮こまった気持ちが暖かくなった。改めて二人が兄で良かったと思いながら。
「怖くないわ。兄様たちが居るもの」
ふわりと花が綻ぶように笑みを浮かべたマリアに一瞬目を見張ると双子は慌てて王宮内にある神殿へと向かった。マリアの余りにも愛らしいさきほどの笑顔に危機感を感じたからである。
あの笑みを一体何人が視界に入れてしまっただろうか。カインはマリアに向けた目を全員潰したいと唸りアベルは頭を殴れば記憶が飛ぶかなと二人共物騒な事を考えていた。
実際顔を真っ赤にしている子息が何人か居た。どこの家の者か全て把握済みだ。余計な事をすればすぐに家ごと潰す気満々である。
自分の笑顔にそんな威力がある事など欠片も分かっていないマリアは二人の素敵なナイトに護られて幸せにニコニコしっぱなしだ。
いかにも高価そうな調度品が並べられた厳かな廊下をルークに連れられて歩いていくとやがて大きな扉に辿り着いた。
重厚な木製の扉にルークが手をかける。重たそうな音と共に開かれるとそこはまさに教会のような雰囲気のある静かな部屋であった。
高い場所にあるステンドグラスから陽の光が差し込みキラキラと空気中を煌めかせている。マリアはまるで天界にあった王宮の王座の間のようだと見惚れていた。
最奥にある祭壇のような場所に大人の両手でも持てないような大きな水晶が鎮座し、神官であろう男が側に立っている。それで魔力値を測定するらしい。
今の自分にどれほどの魔力があるのか。マリアはドキドキと高揚する気持ちを抑えられずにいたのだった。
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