24 / 61
閑話:マリアリールの生前4
しおりを挟む
摘んだ薬草を煎じたり、患者を癒やしたり時にラファエルに新しい施術や薬草を教わったり。頻度の増えたルシフェルの治癒に力を注いだり。
そうしてマリアの日々は過ぎていった。マリアはこれが平穏だと思っていたしこの日常が続いていくものだと信じていた。
それが破られたのは、ルシフェルが天界に現れた歪を視察に行ってから半月ほど経った頃であった。
突如として現れた堕天使の群れに、前準備の出来なかった天使たちが立ち向かえるはずがなかった。天使にとっては急襲であるが堕天使にとっては慎重に準備をした上での襲撃であったからだ。
それでも攻撃特化の聖魔術で王宮騎士たちが応戦するも、相手は命を奪うのも人質を取るのも躊躇いがない為思ったように戦う事が出来ず次々と凶刃に倒れる。
王が不在の王宮も制圧され、マリアのいる治癒院にはひっきりなしに重軽傷患者が運び込まれていた。
薬草や包帯にも限度がある。次第に焦燥感にかられながらも懸命に治療にあたっていたマリアであったが、ふいに腕を引かれて治癒院から外に連れ出された。
自分の腕を掴む相手を見て驚く。王宮に偵察に行っていたラファエルであった。酷く顔色が悪い。状況はマリアが思っているよりもひどいのかもしれない。
「マリア、天界から逃してあげます」
「ラファエル様・・・?」
森の中を走りながら告げられた言葉をマリアは理解できなかった。治癒院にはまだけが人が多く居た。マリアの治療を待っている人がまだまだ居たのだ。
だがラファエルは戻れない、とマリアをまっすぐに見据える。その眼差しはマリアの否定の言葉を簡単に封じるほどの気迫を感じさせた。
「マリア、今回の襲撃の目的は君です」
「わ、たし?何故そんな」
「陛下が堕天しました」
混乱するマリアの呟きを遮る形で齎されたのはあまりにも酷い現実。
「へいか」
「陛下は・・・ルシフェル様は君をずっと望んでいました。でも叶わなかった。それは君の高すぎる魔力が原因です。同じ属性で魔力の高い者同士では交わる事が出来ない。魔力の暴発が危惧されたのです」
足は止まらない。マリアはラファエルの話を纏まらない頭で必死に聞きながら先に進んでいくラファエルに付いていく。
「だけどルシフェル様は諦められなかった。それほど君を愛していたのです。徐々に追い詰められた彼はとうとう禁忌に手を出してしまった」
「きんき」
「そうです。属性を無理やり変えたんですよ。聖から闇へ。堕天する事で」
そうしてマリアの日々は過ぎていった。マリアはこれが平穏だと思っていたしこの日常が続いていくものだと信じていた。
それが破られたのは、ルシフェルが天界に現れた歪を視察に行ってから半月ほど経った頃であった。
突如として現れた堕天使の群れに、前準備の出来なかった天使たちが立ち向かえるはずがなかった。天使にとっては急襲であるが堕天使にとっては慎重に準備をした上での襲撃であったからだ。
それでも攻撃特化の聖魔術で王宮騎士たちが応戦するも、相手は命を奪うのも人質を取るのも躊躇いがない為思ったように戦う事が出来ず次々と凶刃に倒れる。
王が不在の王宮も制圧され、マリアのいる治癒院にはひっきりなしに重軽傷患者が運び込まれていた。
薬草や包帯にも限度がある。次第に焦燥感にかられながらも懸命に治療にあたっていたマリアであったが、ふいに腕を引かれて治癒院から外に連れ出された。
自分の腕を掴む相手を見て驚く。王宮に偵察に行っていたラファエルであった。酷く顔色が悪い。状況はマリアが思っているよりもひどいのかもしれない。
「マリア、天界から逃してあげます」
「ラファエル様・・・?」
森の中を走りながら告げられた言葉をマリアは理解できなかった。治癒院にはまだけが人が多く居た。マリアの治療を待っている人がまだまだ居たのだ。
だがラファエルは戻れない、とマリアをまっすぐに見据える。その眼差しはマリアの否定の言葉を簡単に封じるほどの気迫を感じさせた。
「マリア、今回の襲撃の目的は君です」
「わ、たし?何故そんな」
「陛下が堕天しました」
混乱するマリアの呟きを遮る形で齎されたのはあまりにも酷い現実。
「へいか」
「陛下は・・・ルシフェル様は君をずっと望んでいました。でも叶わなかった。それは君の高すぎる魔力が原因です。同じ属性で魔力の高い者同士では交わる事が出来ない。魔力の暴発が危惧されたのです」
足は止まらない。マリアはラファエルの話を纏まらない頭で必死に聞きながら先に進んでいくラファエルに付いていく。
「だけどルシフェル様は諦められなかった。それほど君を愛していたのです。徐々に追い詰められた彼はとうとう禁忌に手を出してしまった」
「きんき」
「そうです。属性を無理やり変えたんですよ。聖から闇へ。堕天する事で」
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
姫金魚乙女の溺愛生活 〜「君を愛することはない」と言ったイケメン腹黒冷酷公爵様がなぜか私を溺愛してきます。〜
水垣するめ
恋愛
「あなたを愛することはありません」
──私の婚約者であるノエル・ネイジュ公爵は婚約を結んだ途端そう言った。
リナリア・マリヤックは伯爵家に生まれた。
しかしリナリアが10歳の頃母が亡くなり、父のドニールが愛人のカトリーヌとその子供のローラを屋敷に迎えてからリナリアは冷遇されるようになった。
リナリアは屋敷でまるで奴隷のように働かされることとなった。
屋敷からは追い出され、屋敷の外に建っているボロボロの小屋で生活をさせられ、食事は1日に1度だけだった。
しかしリナリアはそれに耐え続け、7年が経った。
ある日マリヤック家に対して婚約の打診が来た。
それはネイジュ公爵家からのものだった。
しかしネイジュ公爵家には一番最初に婚約した女性を必ず婚約破棄する、という習慣があり一番最初の婚約者は『生贄』と呼ばれていた。
当然ローラは嫌がり、リナリアを代わりに婚約させる。
そしてリナリアは見た目だけは美しい公爵の元へと行くことになる。
名前はノエル・ネイジュ。金髪碧眼の美しい青年だった。
公爵は「あなたのことを愛することはありません」と宣言するのだが、リナリアと接しているうちに徐々に溺愛されるようになり……?
※「小説家になろう」でも掲載しています。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
皇帝陛下の寵愛なんていりませんが……何か?
当麻月菜
恋愛
「異世界の少女、お前は、私の妻となる為に召喚されたのだ。光栄に思え」
「……は?」
下校途中、いつもより1本早い電車に飛び乗ろうとした瞬間、結月佳蓮(ゆづき かれん)はなぜかわからないけれど、異世界に召喚されてしまった。
しかも突然異世界へ召喚された佳蓮に待っていたのは、皇帝陛下アルビスからの意味不明な宣言で。
戸惑うばかりの佳蓮だったけれど、月日が経つうちにアルビスの深い愛を知り、それを受け入れる。そして日本から遙か遠い異世界で幸せいっぱいに暮らす……わけもなかった。
「ちょっ、いや待って、皇帝陛下の寵愛なんていりません。とにかく私を元の世界に戻してよ!!」
何が何でも元の世界に戻りたい佳蓮は、必死にアルビスにお願いする。けれども、無下に却下されてしまい……。
これは佳蓮を溺愛したくて、したくて、たまらない拗らせ皇帝陛下と、強制召喚ですっかりやさぐれてしまった元JKのすれ違いばかりの恋(?)物語です。
※話数の後に【★】が付くのは、主人公以外の視点のお話になります。
※他のサイトにも重複投稿しています。
※1部は残酷な展開のオンパレードなので、そういうのが苦手な方は2部から読むのをおすすめさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる