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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*九十・日常と息抜き・咲希とロベルト教師

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「小春、ロイ。列が前に進んでいるわよ」

 早苗にそう言われて、小春は列がかなり前へと進んでいることに気付いた。
 急いで、前へとつめるロベルト教師・小春・花梨・咲希・早苗・ロイ。

 それから、まずロベルト教師が整理券を受け取った。
 小春は整理券を受け取ることを断って、花梨も断ろうとしたが良く見たら見知った人。蓮と、そのお母さんだった。

「あら、お久しぶり」
「お久しぶり、お姉ちゃん」

「今日はわたしも、やっぱり見学でいいや。雷鳴の指輪は、魔力ゼロのわたしには使いこなせそうにないし」

 蓮は瞳をウルウルさせる。

「お姉ちゃん、強いのに」

「そのかわり、わたしが頑張りますよ」

 咲希にそう言われて、蓮は咲希お姉ちゃんの存在を思い出した。ちょっとしか会ってない上に、あの魔白曜石の試験管である鈴木成と花梨との戦いの後ではさらに印象が薄かったからだ。

「咲希お姉ちゃんも魔力を失ったって聞いたけど、もしかして花梨お姉ちゃんみたいに強いの?」

「まあ、そこそこは強いですよ」

「そっか、咲希お姉ちゃん頑張ってね」

 蓮はあまり期待してなかったけど、応援の声をかけた。というか蓮の目からは規格外すぎて、花梨お姉ちゃんみたいな人がそんなにいて堪るかという心境だった。
 それだけに花梨お姉ちゃんが出場しないのは残念でならなかった。

 それからことは進み、早苗も整理券を受け取らないで。雷鳴の指輪をめぐる対戦の形式は、予選の十ブロック同時進行から本選へという流れとなった。

 ーーそして、今。
 広い草原に十の、簡易的な魔法陣が描かれて結界が張られている。その結界の中、ロベルト教師と咲希は対面している。

 ロベルト教師は、咲希が火属性と月属性を失なって、さらには元Aランクという情報まで得ていた。
 自身は、SSランク。

「咲希、悪いな。この勝負勝たせてもらうぞ」

「そう簡単に勝てると思いますか?」

「俺は、SSランクだ」

「ならわたしは、元Aランクです。それでも負けてますが……今はギルド側がどう判断しているか分かりませんが……わたしを、あまりめない方がいいですよ」

「確かにそうかもな。だけど俺はSSランクなんだぞ。SSランクの俺はSSSランクに勝てないまでも、そう簡単に負けることもないんだぞ。なのにその自信はどこからくるんだ?」

「それはこの月の指輪と、」
 咲希が右人差し指を胸元まで持ち上て、
「この二本のナイフからですよ」

地竜ちりゅうのナイフと水竜のナイフ……そして月の指輪か……まさか」

「そのまさかです。聖と闇属性の代わりに異世界の魔力を使いますが」

 咲希は地竜のナイフと水竜のナイフの水と土属性、指輪の月属性と、自身の異世界の魔力を合成。
 二本のナイフへその合成した魔力を纏わせ、自身の背中へ蒼白い翼を作り上げた。
 その姿は、蒼白い翼を持つ天使のように見えなくもない。

 ロベルト教師は頭の中では理解が出来ても、感覚的には絵空事に近い。
 だけど認めるしかない。 

「異世界の魔力というのは、意外と万能なんだな」

 ロベルト教師は魔法陣を描こうするが。
 小百合は蒼白い翼をはためかせ一瞬にして距離をつめて。その翼でロベルト教師を、描きかけの魔法陣ごといだ。
 それは一瞬で。咲希の勝利だった。
 それは、蓮の見る目が明らかに変化した瞬間でもあった。

 咲希は順調に勝ち進んでいく。
 ーーそして。
 咲希のブロックの決勝の相手は、

「久しぶりだな。お前もあの技を使えるとは夢にも思っていなかったよ。ボクのとは、毛色ちょっと違うようだがな。いや、まったく違うか」

 咲希よりに頭一つ分低く、真っ白な衣服を身に付つけている。
 元SSSランク、魔鍛冶師の火野だ。

 咲希はかすかに笑みを浮かべる。

「原理そのものは、アナタの技とそんなに変わりませんよ」

 火野もかすかに笑みを浮かべる。

「そうか? ボク的には、魔族の血が関係していると思うんだが」

 正解でなくとも、そんなに遠くない。火野はそう思わずにはいられない。

「わたしの魔族の血は、まったく関係ありません」

「なら、どういう原理なんだ?」

 咲希は、こことはまったく違う異世界の魔力と指輪の月属性をクッションとして使っている訳だが、異世界の魔力の知識はほとんどゼロだ。

「正直、詳しい原理はわたし自身分かりませんが」
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