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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*八十四・魔白曜石の洞窟・謎の美女Xの正体

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 ーー花梨は思う。

「ふと思ったけど、言葉は喋れないという設定だったよね?」

 ドラゴンはあきれた表情になる。

「元もとバレているし、その設定に意味はないからな。謎の美女Xの趣味だからな」

 小春はどうでも良いことに突っ込む。

「あっ! 謎の美女Xという設定はまだ続いているんだ」

 ドラゴンは我慢出来なくなって、

「ごっちゃごっちゃ言うよりは、戦った方が早いはずだ」

 そう言って、花梨へ超高速で突っ込んできた。EやDランクなら、消えたと錯覚しそうなスピードで。

「ち、ちょっと待てぇ~~!」と、花梨は叫ぶが、結果は余裕をもって一歩足をずらすだけで避けた。

 花梨は内心戦ってみたいという気持ちはあったが、
 出来ることなら避けるべきだよね? もしバトルマニアだと、面倒くさくなりそうな予感がするんだよね。
 そういう気持ちもヒシヒシとわいてきた。
 相手が只の魔物だったり状況次第では全力だったりするだろうが、さらには花梨は昔よりそういうことを学習していた。すべては、幸せな西尾お兄ちゃんとの結婚生活の為だ。

「わたし魔力ゼロなんだよ。そんなわたしと模擬戦? ロベルト教師も助けてよ」

「花梨、頑張れ応援しているぞ」

 花梨は、ロベルト教師に助けを求めたのが馬鹿だと思った。

 けれどもそれは無理もない。ロベルト教師は、ロイが俺と同レベルと言ったその時から花梨の強さに興味津しんなのだから。
 魔力ゼロという花梨の発言を、嘘と思えないのもあるんだろう。現状、嘘を付いて意味があるように思えないからだ。

 花梨は逃げる方法を考える。

「そ、そうだ。こんなにきれいな場所を破壊する必要ないんじゃないかな? SSSランクの魔法って強力なんでしょう?」

 花梨の言うとおり、紫色のすみれのような花や様ざまな木や草は、花梨達のいる場所をきれいにいろどっていた。

「それもそうね」

 謎の美女Xはそう言うと指をパチンと鳴らして結界を解いて、現時点での全魔力解放、近寄って花梨の腕をつかみ上げ天高く大空へと飛翔する。
 そして、そのまま手を放された。

「酷いよ早苗さん。ちょっと痛かったよ!」

「魔力がないことは認めるけど」

「ん? なに?」

「魔力ゼロなのに、何で宙に浮かんでいるのかしら? 花梨? 本当に魔力はゼロだと思うけど、全魔力を解放したら強いんじゃないかしら?」

 ロベルト教師とロイは意味が分からず、ポカン。

 小春は一応、不思議そうに訊く。

「何をそんなにポカンとしているの?」

 やっぱりな。ロイはそう内心つぶいてから言う。

「小春お前も花梨と同じようなもんだったのか? 魔力ゼロで浮いていられるのを見て平然としていられるのだからな」

 小春は2メートルぐらい浮かびあがって、そのまま静止した。

「うん。元もとわたしの魔力は、西尾先輩から分け与えれたものだしね。それは花梨も同じ」

 意味が呑み込めず、ロベルト教師はやっぱり気になることを確かめる。

「魔力ゼロというのは、うそなのか?」

「それは、ね。この世界の魔力っていう意味だよ。わたしや花梨、西尾先輩の魔力は、異世界の魔力。言っとくけど、異界の闇や聖属性ともまったく質の違うね。だから、魔力を感じる訳がないの」

 ロベルト教師は感想とポツリともらす。

「突拍子もない話だな」

 ロイは、

「そう考えると納得は出来るが……とりあえず、ドラちゃんとの戦いを見守ってみるか」

 小春から花梨へと視線を移した。

 続いて謎の美女Xは、満面の笑みを向けた。

「そういう訳だから、頑張ってね花梨」

 そしてドラゴンとの戦いは、

「ヤメだ。ヤメだ。種が分かって、ロイも早苗も実力を認めているんだ。俺が戦ったところでもう意味はねぇ~~よ。許可するよ、魔白曜石の洞窟の探索を」

 始まらなかった。
 で、ことは進みそうだったが、ロベルト教師は発言する。

「俺は、見てみたい。SSSランクと同等の実力を」

「「ヤダ!」」

 見事にドラゴンと花梨がはもる。

 花梨は続ける。

「やっと主旨が分かったけどさ。戦わずしてせっかく許可が出ているのに、わざわざ戦う必要はないよ」

 けれどもロベルト教師はあきらめが悪い。

「SSSランクと同等の実力に興味はないのか?」

「「ない! それに面倒臭い!」」

 再びドラゴンと花梨はきれいにはもり。
 やっぱり、ドラゴンと花梨の戦いは始まらなかった。

 謎の美女Xは正体を明かす。

「戦いを見れなかったのはある意味、わたしもちょっと残念だったけど、目的は達したから。わたしの正体を明かすと、ギルド巡礼SSSランク・氷と風の狩人・早苗よ」

 いや、最初からバレバレじゃん。
「いや、最初からバレバレじゃん早苗さん」

 小春は心の中だけでとどめたが、花梨は思い切り声に出してしまった。

「ここは驚くところでしょう、花梨? そうだと思わない? 変なところで西尾君に似てきているんだから、まったく……」

 その早苗の笑みは、花梨いわく怖かった。

 そしてーー

「そういうことだから明日は、わたしと花梨、ロイと小春は休むから」

 早苗は、ロベルト教師にそう言う。

「ああ。問題ない。休んだ言い訳なら、こちらで適当に考えとくよ」

 *

 洗濯物を二階の窓から干しているマホレンガ造りの家。売られている剣や槍、鉄製の胸当てやローブなどが外から丸見えのお店。かるく見積もっても八人は並んでとおれそうな白い石畳。そこを、雑談や笑い話に花を咲かせて行き交う様ざまな人達。
 端的にいえば、ほとんど魔黒曜石の町と同じだった。

 小春は、あっちでうろちょろ、こっちでうろちょろ。
 早苗とロイは、ゆっくりとお店を見てまわって。
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