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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*六十五・魔道具と魔鍛治士・ブルードボン
しおりを挟むツボミはと右の握りこぶしに闘気を集めて、闘気の剣を形成。それに風属性の魔力を纏わせて地を蹴った。
闘気と魔力の剣に驚きはしたものの、紗耶香は水属性の魔力を巨大な弓と矢へと具現化。水の矢を、氷の矢に変換。闘気もたっぷり込めて移動。ツボミとは別方向からブルードボンの脳天へ狙いをさだめて矢を放った。
それに気付いたツボミは一瞬だけ足を止め。矢は彼女を追い抜き、ブルードボンの操る二本の髭に叩き落とされた。
瞬間。
ツボミは体勢を低くしてさらに加速してせまり、ブルードボンの二本の脚目掛けて闘気と魔力の剣を真横に一直線へ振るう。けれども強い弾力にはじかれる。
ツボミさんだけでは勝てないです。やっぱり、怖いですけどーーそう思った咲希は両手に炎のナイフを纏って。
思った以上にやっかいな髭で遠距離攻撃は厳しいと判断した紗耶香は、意味の分からない怖さへ勇気を振りしぼり、水属性の弓を氷の弓に変換。闘気もたっぷり込めてから、形状を細長く伸ばして。
咲希と紗耶香も駆け出した。
ブルードボンは、紗耶香へ髭の一本を伸ばす。
脳天目掛けて一直線に振り落とされたそれを、紗耶香は闘気と氷の弓で受け止めて。
咲希は、もう一本真正面から伸ばされた髭を炎のナイフで受け止めた。
頭の芯へと響くような衝撃だったが咲希と紗耶香は、二本の髭を掴んで離さない。
さらには二人は左右から、ブルードボンを後ずさりさせる程の力で二本の髭を引っ張り。
紗耶香は氷の魔力を、髭からブルードボン本体へと伸ばして。
紗耶香と咲希は手を離した。
ブルードボンはしりもちを付く。けれど本体へとせまる氷は止まらず、口下を凍らす。
そこへ、ツボミは魔力と闘気の剣を叩き込み一気に引き裂いた。
ブルードボンが完全に動かなくなったのを確認すると、ツボミは剣を消した。
「姿自体はとっても可愛かったのですが、仕方ありませんよね」
そして振り返り、視線を咲希と紗耶香へ向ける。
「……それにしても組んだばかりとは思えない、凄い息の合ったコンビネーションですね。さすがはAランクです。けれどもあの人直伝の技があるから近い将来、わたしもAランクかもしれませんけど」
紗耶香は、ツボミへ顔と顔がふれそうな程に詰め寄った。
「もしかしてその人の髪の色って、深い青でしたか、長かったですか?」
「腰まである長い髪に、濃い青でしたが?」
「やっぱりその人、わたしのお兄さんさんです。その人は今どこへいるか分かりますか?」
「確か、南へ行くとしか」
「それだけ分かれば。ツボミさん、本当にありがとうございます。ありがとうございます」
「紗耶香さん、とりあえず落ち着いてください。まずは、紅月見草という目標から頑張りましょう。さいわい、紅月見草は大きな花を咲かせたのが、三つもあることですし」
「それを摘んで、ツボミさんは早く友人さんを助けてください」
「ですね」
ーーそして再び魔黒曜石の町へ。
その町の魔法薬を売っている店で、店主へ紅月見草を一つだけ渡して、それを加工して作られた液状のものを小さなビンへと入れてもらった。
それから宿屋・『カリントウ』へと、ツボミを連れて行った。
ツボミは、「ちょっとだけ待ってくれると嬉しいです」そう言って中へ、
やがて病人だったとは思えない程に顔色の良い女性と二人で出てきた。
ツボミの友人。桜色のノースリーブの上と短いスカートを身に付けている女性は、深ぶかと頭を下げた。
「アナタ達が、ツボミとわたしを助けてくれたんですね。本当にありがとうございます。正直言うと、アホな感性で、超方向音痴なツボミが紅月見草をとりに行ったときは絶望していましたから、本当にありがとうございます」
それから早苗が苦手なロイと別れてギルド巡礼へと戻り、今は広い食堂で、咲希・花梨・紗耶香は、早苗を交えて一休みという状況だ。
様ざまな人達が食事を楽しみ。いくつも並ぶテーブル。
紅茶を入れた白いカップと、その受け皿だけが用意されたテーブル。
白い椅子に腰掛けている早苗は紅茶を一口ふくんで、喉にとおす。
「紗耶香ちゃん。お兄さんの情報が入ったわ。このギルド巡礼から、ずっと南を目指しているみたいよ」
紗耶香は思わず笑顔になって、
「やっぱり、そうなんですね。早苗さん、ありがとうございます」
そう頭を下げた。
「何かしら、紗耶香さんも情報を得た口振りね」
「はい」
今が会話の途切れ目だと思って、咲希は言う。
「話は変わりますが早苗さん。ブラックドラゴンと闘った時から気になっていたことがあるんですが、あれって本当に普通の炎翼の指輪なんですか? 何かしら特別なことは、本当にほどこしてないんですか?」
「あの時も言ったけど咲希、あの炎翼の指輪はなんの細工なんてしてないわよ。するとしたら花梨だけど……」
咲希は断言する。
「いくらなんでも、魔力を失ったのにそんなこと出来る訳ないじゃないですか。おまけに能天気の固まりですし」
花梨はちょっとだけ傷ついて声には出さなかったが、同時に内心はクスリと笑っていた。
*
樹齢何百年もありそうな広葉樹と、数ミリから咲希や花梨の背丈と同等まで伸びた様ざま野草。それらが生い茂る広大な森。
赤いリンゴのような実をところ狭しと稔らせている、樹齢何百年はありそうな程に巨大な広葉樹。
火野はその位置を確認して、開けた場所を指差す。
「確か、あの辺りだったはずなんだが」
咲希はそのちょっと離れた場所へ視線を移して。
「あっ、いました。シロモコです」
紗耶香も三匹いるシロモコへ視線を移してから、腰に結びつけている月の鈴をはずして地面に置く。
それを1メートルぐらいまで巨大化させて紅月見草を取り出した。
それに気づいたのか、臆病なはずのシロモコが三匹ともいっせいに近づいてくる。
シロモコは、体長30センチぐらいと可愛らしい毛むくじゃらな丸い生き物だ。
三匹の中には、身体と同じぐらいの大きさの赤黒い石を身体に付けたシロモコがいた。
それを付たまま口を大きく開けて、紗耶香が手にしている紅月見草を口にパクりと含み。
そのとたん。
ほかの二匹のシロモコはどこかへワープをして、その場から消えた。
一匹残ったシロモコは、紅月見草を飲み込むと身体が膨らみ3メートルぐらいまで巨大化して、目がくらむような真っ白な光を放った。
まばゆいばかりの光景に、紗耶香は不安を口にする。
「もしかしたら、あのシロモコ。ホワイトドボンへ、一気に成長しようとしているところかもしれません」
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