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Act 13.邂逅する小鳥

年明けの挨拶と願い

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 日本に着くなり、そのまま寮へと戻った。ギリギリまでイングランドに居たからか、時差ボケでボーッとする頭を抱えながら戻れば、薫がいつものように映画を観ているところだった。

「おかえり、あけましておめでとう」

「ただいま。こちらこそあけましておめでとうございます」

 記憶によると、薫は昨日あたりには寮に戻って居たはずだ。机の上に積み重なった映画のDVDの量が、滞在日数を物語っているかのようだった。
 冬休みは夏休みに比べて宿題も少ない。薫のことだから、すぐに済ませてしまってしまったのだろう。
 寛人の時は部活でいつも追われて、ギリギリに宿題をしていた記憶があるが、最近では宿題は律儀に前もってこなすらしい。公立と私立の違いかもしれないが。

「イングランドはどうだった?」

「寒かったよ。日本は?」

「雪も降らない静かなお正月だったな。お土産あるけど食べるか?」

「お土産? どこか行ったのか?」

「叔母が蜜柑を送ってくれたのが、沢山余っている」

「蜜柑!」

 コタツに蜜柑。冬の代名詞たるものを久しぶりに見聞きし、思わず嬉しくなった。

「イングランドに蜜柑あるだろ?」

「うーん、あるけど日本のコタツと蜜柑っていう組み合わせが年明けって感じがするんだよな」

 なるほど、と薫が頷いた。水無瀬の家ではコタツに蜜柑で年明けが構成されてきたのだろう。特に疑問も抱く様子はなく、差し出された蜜柑をもらい、コタツに入り込んだ。
 あったかい。

「やっぱり、こたつだなぁ」

「そうか」

 言いながら、薫が笑う。
 案に含まれている見た目とのアンマッチさはおいておくことにしよう。
 コタツで映画を観ながらのんびりしていると、ピンポーンと音とともにけたたましい声の主が入ってきた。

「あけましておめっとーーーーーーさん!」

「おめでとう。新年早々相変わらず煩いな」

「酷い、伊織ちゃんあけおめ」

「あ、ああ。あけおめ」

 相変わらず、日下のメンタルは鋼だ。

「いやぁー新年早々二人の顔見てたら元気出てくるわあ」

「俺は元気が吸い取られる気がするよ」

「同意だな」

「そんな酷いこと言わんといてーや」

「今日はカフェテリアにでも行くか?」

 珍しい薫の提案に乗っかる。いつもは自室で食べて行っているが、今日からカフェテリアも食堂もあくのだ。始まるとわかると、なんとなく足を運びたくなる。

「今日からやってるんだっけか。それもいいな。いつも作ってもらって悪いし、今日は俺が奢るよ」

「おーきに、伊織ちゃん」

「いや、日下は自分で払え」

「えーそれぐらいええやんかー」

 ぶつくさ言う日下。これも冬休み明けての久々だと思うと、やはり学園生活は楽しいと感じる。日下はこの冬は帰省してのんびりしていたらしい。そんな会っていない間の話をしながら、3人で和気藹々とカフェテリアに向かっている途中、日下が深刻な顔で空を見上げていた。

「どうした?」

「いや、勘違いやったらええんやけど、」

 煮え切らない日下の返答に疑問に思って日下視線の先を追うと、教室棟の屋上に1人の生徒が立っているように見えた。
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