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Act 11.思い出の青い鳥
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しおりを挟む聞きたいことは沢山ある。
きっとこの機会を逃せば、次に雅人に会えるのはいつになるだろう。そんなことを待っていられるほど、時間はないと瞬間的に感じた。
雅人の手を掴めば、虚を突かれたように目を見開いた。
「どうした?」
「今知りたい、どうしても」
「急ぐ必要ないだろ。またいつでも会える」
「いつでもっていつ? また2.3ヶ月後?」
「多分な、冬休みも来るだろう?」
「時間がないんだ」
息苦しさで咳き込んだ。
痰がきれないからか、ごほごほと長引く咳に雅人が焦ったように背中をさすってくれる。
ようやく息が落ち着いて、雅人を見上げれば、眉間に深い皺を刻んだ雅人の顔がそこにあった。
「時間がないってどういうことだ?」
「あ……」
そう言われて、タイミングの悪いところで咳き込んでしまったと気づいた。
寛人の時の状況を知ってる人間からしたら、笑えない状況だ。
「ごめん、タイミングの悪いところで咳き込んで。身体はなんともないから大丈夫。ただ、伊吹と約束したんだ……」
「約束?」
「卒業までに、隆二が俺に気づかなかったら、隆二のことを忘れて生きるっていう約束」
「そういうことか」
安堵した表情を雅人が浮かべる。
俺が見つめていることに気づいたのか、「またお前を失うのかと思った」とバツが悪そうに呟いた。
「ごめん」
この不器用で優しい兄にかけた心労は計り知れないものだったのだと、改めて思い知った。
そしてそれは、隆二も同じなのかもしれないと、そう思った。
胸が苦しくなったのは、息苦しさだけじゃない。
身体の辛さに気づいたのか、布団の中に入るように促され、雅人に支えられながら身体を横にする。
俺の呼吸が整ったことを確認すると、「さてと」と傍にあった椅子に雅人も座った。
「何から知りたい?」
「俺が死んだあと、隆二は何をしてたの?」
「ざっくりした質問だな。そうだな……良く言うと絵に描いたようなエリートコースだったな」
昔から隆二は頭が良くて器用だったから、その姿は簡単に想像が出来た。
「良くいうとってことは、悪い言い方があるのか?」
「ああ。悪くいうなら決められたコースを歩く機械みたいだった。さすがに経営者ともなればそれが許されるほど甘い世界じゃないから昔程ではないが、それでもあいつから情熱を感じたことは一度も無かったな」
「機械…………」
想像が出来なかった。
冷たい印象のするその言葉に困惑する。
「この先あいつが人生で熱くなることなんてないと思っていたが、それも杞憂だったとさっき分かった」
さっき、と言われて記憶を辿る。
「あんな取り乱した隆二を久々に見たな」
くつくつと楽しそうに雅人が笑った。雅人が人の焦る様を喜ぶ節は相変わらず変わっていないらしい。
脳裏に浮かぶのは困惑した隆二の顔。
感情が揺れていたのは見るに容易かったが、今までの隆二はそれさえも無かったというのだろうか?
「そんなに昔と変わったのか? 感情の変化が無くなったようには感じなかったけど……」
雅人に髪をぐしゃっとかき混ぜられた。
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