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Act 10.戦う小鳥
もう逃げない
しおりを挟む斯波から言葉が無くなった。
「なんで毎週金曜10時に教会で会う事にしたんだ?」
言葉が無い斯波にどんどん言葉を投げかける。
「身体だけじゃない関係を望んでたからじゃないのか?」
「……黙れ」
「黙らない。秘密を通して繋がっていたものがなくなったら、なんの関係もなくなるのか?」
「黙れ!」
「黙らない! 俺は斯波と会うの楽しかったし、週末の楽しみでもあった。斯波は?」
「黙らないと、本当に犯す」
きっとユダにも譲れないものがあったんだ。
今ならイエスを裏切ったユダの気持ちが分かるような気がした。ユダは誰よりも人間臭くて、誰よりも一人だったんじゃないだろうか。
人を信用できない。信用出来るのは、形あるものだけ。
そして斯波も。
「一人で抱え込むなよ」
それは、かつて斯波に言われた言葉だった。
「斯波に話さなかったら、俺は前に進めなかった。斯波に話を聞いてもらって、アドバイスを貰って、伊吹にも兄にも話そうと思えたんだ」
「もう黙って」
「んっ」
口を塞がれた。
言葉の語気の荒さとは裏腹に、弱々しくて優しいキスだった。
唇が離れ、斯波が何かを言おうとした時、外から声がした。
『中に誰かいるのか?』
大きな声を出していたからか、夜の見回りが俺たちに気づいたようだった。自分の格好を見下ろして、さっと青ざめれば、斯波が自分のブレザーを脱いで下半身にかけてくれる。
「……ごめん」
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい声だった。斯波の言葉に気づいて顔を上げた時には、逃げるように斯波が教会から出て行った。
「斯波くん?」
隔てるものがなくなり、声の主が分かったときには別の意味で背筋が凍った。
「え、ちょっと、斯波くん!」
バタンと教会の扉が閉まる。
『行っちゃった……』
声はまた扉越しになり、斯波が走りさってしまった事へ呆然としている呟きが聞こえてきた。
駄目だ。扉を開けないで。
ホッとして腰が抜けたのか、座り込んだまま動けない。
お願いだから、扉を開けないでくれ。
そう懇願するも、現実はフィクションのように上手くいかなくて、結局は神の気まぐれにもう一度付き合わされる事になる。
扉が再び開いて、今最も会いたくない人物が姿を現した。
「伊織くん?」
あれだけ会いたいと願っていて2ヶ月間会えなかった隆二がそこに居た。
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