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Act 6 .迷える小鳥

伸ばされた手

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「こんなところに教会があるなんて、知らなかったな」

 薫と別れ、第二体育館を後にした俺は、まるでフランスにあるようなロマネスク建築様式の小さな教会見つけた。
 錆びれていない所を見ると、人の手でちゃんと管理されているのであろう。

 俺は誘われるように立ち入った教会の中には、誰もいなかった。
 荘厳で洗練された空気。石の壁に、立ち並んだ色の濃い椅子。昼下がりの暖かな光が教会全体をオレンジ色に染め変えていた。

 まるで神が祝福しているような錯覚に陥る。
 俺は祭壇がよく見える、真ん中辺りの席に座った。

「俺の存在は、許されるものなのだろうか。……転生は意味のあるものなのだろうか」

 今まで何度となく問いかけた。その問いに答えてくれる神など現存するわけもなく、教会内に虚しく声が反響しては、消えた。
 途端に襲われる不安。

 転生した人間など、聞いた事がない。
 そういう意味で、俺はいつだって1人だ。伊吹が居ても、伊吹の存在と交わる事が出来ない異端。

「………俺はなんの為に、此処にいる?」

 バスケをする為?
 隆二にもう一度会う為?
 伊吹に会う為?
 もう一度学生生活をする為?
 それとも、神の悪戯か?

「See the birds of the sky, that they don't sow, neither do they reap, nor gather into barns. Your heavenly Father feeds them. (空の鳥たちを見なさい。種をまいたり,刈り入れたり,倉に集め入れたりしない。あなた方の天の父がそれらを養っておられる。)」

 聖書の通りなら、ただの慈悲で生かされているのだろうか。
 だとしたら、重ねた嘘の代償は何で払えば良いのだろうか。

「I must not answer the any quenstions.(答えが分かるはずがない)」

 身体からは力が抜け、ずるずると長椅子に横に倒れ込んだ。
 頭上の光に右手を伸ばす。

「……My God, have you forsaken me?(神よ、私を見捨てたのですか)」

 光を握り込む。手からすり抜ける光。

「Please……just tell me.(どうか教えて下さい)」

 眩しさに目を閉じた。
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