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Act 5. 祭に興ずる鳥

巣立ち?

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 カフェテリアに寄っていかないか、という薫の提案で、カフェテリアに来た俺達はお茶を片手にテラスに座っていた。
 今くらいの陽気が一番丁度良い。
 暑すぎない日差しはゆっくりと沈み始め、時折ひんやりとした風が肌を撫でる。

「あれから喋っていないのか」

 急に話し始めた薫に、俺はお茶を飲んでいた手を止めた。
 心配気にこちらを気遣う薫を見て、俺は相当心配をかけていたんだと気付く。

「……そうなんだ。タイミング失ったみたいで……」

 学校が一緒だからいつでも会えると思っていた。

 だから、謝るのなんか簡単だと思っていたのに、向こうが避けているからなのか、はたまたタイミングが悪いだけなのか。昼休みもクラスの文化祭準備でゆっくりと食堂に食べに行けなかったりと、学園祭でバタバタとした学内で中々相見あいまみえる事が出来ないのが現状だった。

「そうか……」

「うん」

 桐生は話し合えば良いと言ったが、それは話し合いの場がある事が前提の事だ。

「薫が気にする事ない。きっとその内、仲直り出来るから」

「だが……」

「ただの兄弟喧嘩だから、大丈夫だ」

 ここ数日俺が落ち込んでいるのを知っている薫は、どこか煮え切らない表情で頷いた。

 ふと視線を巡らすと、カフェテリアの入り口に伊吹を見つける。
 テラスの方に出ていた俺達に気付いていないのか、クラスの友達らしき人と楽し気に話しているのが目に入った。

「巣立ちってこういう気分なのか」

 伊吹が俺がいない所で上手くやれている。今までも伊吹は人付き合いの良さで上手くやれていたが、俺が全く関与していない伊吹の友好関係を見るのは初めての様な気がした。
 良かったと安心する反面、何処か寂しい気もする。
 俺の視線の先にいる伊吹に気付いた薫も、一緒に伊吹を眺めながらお茶を飲んでいた。

「アメリカではずっと一緒にいたのか?」

「ああ、そうだな。それこそ生まれてからずっと一緒だったな」

「なら今の状態は寂しいんじゃないか?」

「そうだなぁ。寂しいと言えば寂しいけど……でも、安心した」

「そうか」

「もしかしたら、もうちょっとこのままで良いのかもしれないな」

「なら、お前ももっと楽しめばいいんじゃないか」

「俺?」

 何となくそこで自分が出てくるとは思わず、間延びした声で聞きかえしてしまう。

「一度きりの学生生活、楽しまなきゃ損だ」

 俺にとっては二度目だが、そういってくれる薫の優しさが嬉しくて思わず頬が緩んだ。

「そうだな」

 バスケに夢中だったあの頃とは違う二度目の学生生活。
 明日からの文化祭準備を思い描いて、俺は久しぶりに胸を弾ませたのだった。

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