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Act 3. 学園に入った鳥

夢と期限(side:Ibuki)※※

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(side:Ibuki)

 くたりと力が抜け、ベットに横たわる織を見て、僕は体中が、心が満たされたように感じた。
 嬉しさに頬が緩む。

 ずっと夢見ていた事が叶った。
 下心とかそういうのではなくて、一つになりたい。

 そう思ったのはきっと、生まれたときからだ。 

 このままずっと織と一つでありたいと思ったが、無理はさせられない。名残惜しく思いながらも、己の欲望を引き抜いた。

「んっ」

 俄に織が反応するが、目が覚める気配は無かった。
 中から溢れ出す残滓が、織のひくつく秘孔から溢れ出す。

「エロっ」

 一発じゃ治まってくれる程大人しくない自身は、織の痴態に再び起立する。思わず、深くため息をついた。
 なんとか自身を落ち着かせ、クローゼットの中からタオルを数枚取り出す。

 後処理しておかなければ、腹を下して辛い思いをするのは織だ。
 そもそもの原因は、余裕がなくて中出しした僕にある。

 タオルを温めようと、部屋から出た時、目の前で固まる薫と呼ばれていた同室と鉢合わせた。

 凍り付く空気。
 しばらく無言のまま、対峙し合う。

「……」

「……」

「台所借りるから」

 仮にも部屋の家主に断りを入れないのはまずいと思い、通り過ぎざまにそれだけ言った。

「そっちが素か」

 昼間会った時とは違い、顔に笑顔なんか貼り付けてない。

「別に」

 いつもはここまで愛想は悪くない。

 見返りが望める、もしくはその必要がある相手や余計な軋轢を作らず綺麗に生きていく為には、最大限の愛想を振りまいているつもりだ。その方が遥かに生きやすい事も、経験的に知っているし、織に好意を向けられる頻度も減る。

 だけど、そんな僕が愛想をよく出来ない相手がいる。
 それは、織に好意を寄せる奴等だ。

 もちろん、この好意というのは恋愛的な意味的での事だ。

 全て直感だが、この直感は恐ろしく当たる。
 薫という男も、今は人畜無害な立ち位置に居るが、やがて知らぬ間のうちに織にのめり込んで行くタイプだ。

「立ち聞きする奴に、愛想振り撒く必要がないだけ」

「……ならそれなりの努力をすれば良い」

「聞けないのは嫌だ」

「余裕ないんだな」

 核心を突かれてカッと苛立ちが込み上げる。

 お前に分かる訳ない。

 その言葉を飲み込み、僕はさっさと台所で用事を済ませ、部屋の戸に手をかけた。

「織は俺だけを見てればいい」

「そんな愛し方じゃ、終わりは、」

「うるさい」

 全てを聞く前に、部屋の戸を閉めた。

 そんな愛し方じゃ、終わりは見えている。

 そんな事、僕が一番分かっている。


 でも、この方法でしか、愛する術を知らないんだ。
 収まりきらない溢れる想いを、留める術なんか、知らないんだ。

 再び不安で埋め尽くされる心。
 濡れたタオルを抱えながら、僕は織の元に戻ったのだった。

(Ibuki side end...)
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