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Act 3. 学園に入った鳥

先輩の正体

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「わがままでも何でもないだろ。この学園ではそうなのかもしれないが、普通の高校なら友達を作る事はわがままとは言わない。お前の親衛隊は、お前の言う事も聞いてくれないのか?」

「……」

「もし言う事を聞いてくれないと嘆いているのであれば、それはお前のファンである人に対して、自分の事を理解してもらおうとする努力はしたのか?」

「……してないかもしれへん」

「お前の事を好きだと言って親衛隊になってくれたんだろ? 言葉や精を尽くせば、よっぽどの事が無い限り理解してくれるんじゃないか?」

 それさえも理解してくれないなら、この学園の常識から疑ってかかるべきだが。

「お前は人生に諦めを作るなよ、日下」


 あの時、こうしていれば。

 なんて、昔死ぬほど考えた。

 靭帯を切った時だって。
 癌って分かった時だって。
 隆二の事だって。

 後悔する事なんて、生きていれば腐るほどある。
 でも、何もしないで諦める事程、後から後悔するものはない。

 俺はその事を2回目の生を受けてから、嫌という程感じた。だからこそ、反吐が出る程勉強したんだ。
 そうすれば、靭帯を切って人生に諦めてしまったあの瞬間が取り返せると思ったから。
 諦めなければ、何度でもやり直せる。

 現に、神様は俺に2度目のチャンスをくれたのだから。

「……伊織ちゃんは、人生諦めてんの?」

 日下はちゃらんぽらんなようだが、妙に鋭い所がある。今だって、俺の言葉の端にすぐに気付いて、ドキッとさせられる。

「昔に諦めたって経験があるだけ」

「そうやってんなぁ。道理で言葉の重みがちゃうわけや」

 普通に計算すれば、約倍の年数を生きている事になるからな。
 それは口に出さず、「そうか」とだけ答えた。

「今日の夜にでも、話してくるわ」

「頑張れ」

「おーきに、伊織ちゃん」

 日下は照れくさそうに、綺麗に笑った。

 親衛隊に夜に集まろう、とのメールを打っているようで、日下がメールを打ちながら「そういや、伊織ちゃん」と顔を上げた。

「ん?」

「迷子って言うてたけど、何処まで行っとったん?」

「地学研究室とか、科学研究室がある辺りかな」

「教室棟と真逆やんっ! よう帰って来れたなぁ」

「ああ、たまたま廊下で会った神先輩が送ってくれたんだ」

 2人の行動がぴたりと止まる。

「神? もしかして、桐生神か?」

「そんなわけあらへんて。あいつが人を送るとかありえへんやろ」

「なんだ2人共、知り合いだったのか」

「えっ!!!? ちょちょちょちょ、ほんまに桐生神やったん?」

 日下が俺の両肩をがっしり掴む。

「そうだけど」

「送ってくれたって言うとったけど」

「俺の携帯が教室にあったから、アドレス交換しようにも出来なくて、そのまま教室まで送ってもらった」

 2人のこの反応を見る限り、ある意味有名なのかも知れない。あの顔で、あのキモさだったら、有名になる理由も分からなくないが。

「桐生神とアドレス交換したのか?」

「ああ。別件で連絡とる用事があったから。それにしても、そんなに有名なのか?」

「桐生神って言うたら、この学園の生徒会長様やで」
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