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Act 3. 学園に入った鳥
同室者
しおりを挟む目が覚めると、時計の針は朝の5時を指していた。どうやらあの後、寝てしまったらしい。
二重窓になっている寮は、小鳥達の声はあまり聴こえてこない。
静かな朝だった。
部屋から出ると、こじんまりしたリビングに台所。2DKの学生にしては、十分の部屋の広さだ。テレビとソファがあり、俺はソファに座ってテレビをつけた。薄型の大画面。スピーカーまで用意してある所を見ると、この部屋の住人は映画好きなのだろうか。
ぼんやりとしながら、朝のニュースを眺める。
しばらくすると、隣の部屋からドスンと大きな物音が聞こえてきた。そうかと思うと、部屋の扉が開いて、出てきた部屋の主と目が合う。
水無瀬だった時の俺と同じ位の背丈だろうか。男前と分類される顔立ちに、への字に結ばれた口。愛想は悪そうだが、一目見て、俺と気が合いそうだと感じた。
背の高いその男はまだ目が覚めていないのか、ぼんやりと俺の事を眺めている。
「ご挨拶が遅れました。昨日から編入してきた、小鳥遊伊織です」
立ち上がって言った俺に、「薫」と一言告げると、洗面所の方に向かっていってしまった。
家族や伊吹以外の他の人と一緒に生活した事が無かった為、少し不安だったが。あんまり干渉してこないタイプで安心した。
自室に帰ってまで休まる時が無いような相手だったらと思うとぞっとする。
どうやら身支度が終わったらしい。
先ほどのぼさぼさ頭はキチンとワックスでセットされていて、眠そうな顔もいくらかすっきりした顔をしていた。
「さっきは悪い。俺、寝起き悪いんだ」
「大丈夫です」
「薫で良い。同室だから、敬語もなしで」
「分かった。俺も伊織で良い」
「伊織、朝ご飯食べたか?」
「まだ」
「食堂の使い方とかは説明されたか?」
「昨日疲れててすぐ寝たから、食堂の場所さえ把握してない」
夕食も食べ損ねた。これだけの設備の整った学校だから、食堂があるのは予想していたが、場所はわからない。
「今の時間だったら、そんなに混んでないはずだ。一緒に行かないか?」
「ああ、ありがとう」
薫にカードキーをとってくるように言われた為、自室からとってくる。
服装は寝間着のジャージのままで問題はないらしかった。
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