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お弁当
しおりを挟むルナから解放されたのは顔面を掴まれてから数分後だった
しかもこいつ人の顔面掴んどいてなんて言ったと思う??
「あーあ、トモのせいで余計な力使っちゃって疲れちゃったんだけどー」
本当にこのガキンチョとんでもないサイコパスだよ…!
しかもこんなかわいい見た目して相変らず力はゴリラだし!!これ以上見れない顔になったら全部ルナのせいなんだから!
それに疲れたのはこっちのセリフだっての!
「もう二人共自分の教室に戻ってよ!忍も教科書借りれたから用は済んだでしょ?ルナも、何しに来たのかは分からないけど散々人のこといじめたんだから教室に戻って!」
「んな冷たいこと言うなよー!ただでさえクラス離れて寂しいってのによー」
口を尖がらせるな口を!
お前がそれやっても私には通用しないからね!?
「トモのくせにルナに命令しないでよね~!だいたい、用がないって一言も言ってないんですけど」
「じゃあ何かあるっていうの?」
「あるからわざわざこうして会いに来てあげたんじゃない」
「まるで感謝しなさいとでも言いたげな口ぶりね」
「感謝しなさいよ」
……そうだよこいつは昔からそういう奴だったわ
「はいはい、わざわざありがとう。それで?用って?」
私が適当にお礼を言ったことに対してちょっとムッとしていたルナだったが、話を長引かせるつもりはないらしく本題に入った
「ハルがトモの分のお弁当を作ったから味の感想を聞かせてほしいんだって~」
「ハルが?」
ハル、もとい真田 陽はルナの一個下の妹だ
兄の影響を受けたのかルナとは反対にハルはいつも男装をしているが、料理掃除裁縫が大得意なれっきととした乙女だ
小さいときから懐いてくれて私にとってもかわいい妹だ
「え!?ハルお弁当作ったの!?俺は!?俺の分は!?」
「あるわけねえだろすっこんでろ、ってハルからの伝言」
「なんで俺にだけそんな厳しいんだよ!!」
横でぶーぶー言ってる忍を無視してルナに手を差し出す
「?……」
ペチンッ!
「痛っ!何してんの!?」
「いきなり手を出してきたから叩いて欲しかったんじゃないのー?」
「そんなわけないでしょ!?ハルのお弁当を貰うための手だよ!!」
叩かれた手を摩りながらルナに怒る
信じらんないよこの子思考回路バイオレンスすぎでしょ!!
「お弁当はお昼に一緒に食べる時に持ってきてあげる」
「…え、ちょっと待ってよ!一緒に食べるの!?」
「何よ、なんか文句あるわけ?」
「いや…」
そんなの文句しかないに決まってんじゃん!なんのために私があんたらを避けてると思うわけ!?折角クラス離れてもう学校ではそんなに関わらないと思ったのにお昼なんか一緒に食べたらまたややこしくなるじゃん!
「それにハルから直接トモと一緒に食べて感想聞いてきてって言われたしね~」
「うぐっ」
ルナならともかく、ハルにそんな風に言われたら断れない
厄介なのは私がハルに弱いってのを知っててルナがわざわざそういうとこを強調してくるとこだ
「そしたら屋上で食べようぜ!なあなあトモ!俺の弁当のおかず一個とトモのおかず一個交換こしようぜ!」
「何しれっとあんたも混ざってきてんのよ」
「え!?だってトモもルナもいんのにそこに俺がいないのはおかしくない!?仲間はずれは良くねーぞ!!なっ!トモもそう思うだろ!?」
「もう勝手にしろ」
何もかも諦めきった私はやけくそにそう言い捨ててから二人に背を向けた
「トモー、お昼休みにルナのこと迎えに来なかったら吊るすからねー」
「トモー!一緒に行こーなー!!」
後ろからかかる声に返事をすることもなく、私はそそくさと自分の教室に逃げ帰った
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