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忘れたくても
しおりを挟む「なんで教室にまで来たのさ忍!」
あんたのせいで私はまた女子たちから蜂の巣にされるかもしれないんだよ!!
場所は移動して、教室から一番近い階段近くで私は忍と向かい合っていた
「いやぁ、次の英語の教科書忘れちまってさ!だからトモに借りようと思って!」
「ルナのとこに行けばいいじゃん!」
「あいつが俺に貸してくれるわけねえじゃん!!」
「確かにな!!」
コントみたいなテンポで受け答えすれば一気に疲れが押し寄せてきた
はあ…朝から気が休まらない…
「分かった分かった、貸してあげるから落書きしないでちゃんと返してよね?」
「俺がそんなことするわけねえじゃん!」
「どの口が言ってんだどの口が!」
「いっ、いひゃいいひゃい!」
忍の整った顔に手を伸ばし頬っぺを引っ張る
私は忘れもしないぞ高1の時のことを!
私が風邪で休みだったから勝手に教科書借りたあのときの事を!
別に教科書を貸すのはいい、生まれたときから一緒に居るみたいなもんだから一言なくても別に怒るつもりもない
ただ…ただな…分かるか?後日その授業の時、教科書を開いた私の気持ちが…!
開いた瞬間BLの、しかもクオリティの高いBLの濃厚ラブシーン四コマ漫画を見た私の気持ちが!!!
一瞬で気絶しそうになったけど、それでもなんとか気力を振り絞って元凶である忍に目を向けたらこいつ何したと思う?
私に向かってグッドサインとウィンクをしてきやがったのだ
私はあの時ほどこいつに殺意を抱いた覚えはない
当時のことを思い出してさらに力を込めて抓ってやった後手を離せば、忍の整った顔の右頬だけ赤くなっていて妙に笑える顔になった
ふはは、これで少しは男前さも軽減されただろう!
「トモ酷ぇよー!本気でやっただろー!」
頬を摩りながら抗議する忍の声を一切無視して、少しすっきりした気持ちで教室に向かいロッカーにある教科書を忍に手渡そうとした瞬間
「なぁ~に~?二人でこそこそと会っちゃって~、ルナのこと仲間はずれにしてんの?」
私達が歩いてきた反対側から、嫌味たっぷりなかわいい声が聞こえてきた
「おっ、ルナ~!」
暢気に奴に手を振っている馬鹿を無視して、私はギギギッと壊れたロボットみたいな遅い動作で振り返った
そこに立っていたのは、案の定というか、当然というか、ルナがいた
腕組みをしてこっちをに、睨み付けているルナ様が
なんでお前まで来たああああああああああああ!!!
「ル、ルナ」
「どうしたのトモ~?顔色が悪いけど大丈夫~?」
心の中で絶叫する私を知って知らずか、私の頬に手を当て顔を近づかせるルナ
傍から見たらうらやまけしからん状態なんだろうけど、皆さん目を覚ましてください
この子の性格をご存知でしょう!?
「ルナにまた会えたのに笑顔の一つもないってどういうこと?ふざけてんの?吊るすよ?」
耳元でこんなこと囁かれて恐怖を感じない奴がどこにいる!!
あとお前ー!!
「おぉう、我ながらナイスショット」
なーに写真なんか撮ってんだよおい!!
元はと言えばお前がうちのクラスに来なきゃ起きてなかった恐怖なんだよこれは!!
脳内で忍をボッコボコに殴りながら至近距離にいるルナに意識を戻す
「ルナ、ち、近いから一回離れて?」
「へ?どうして?ルナのかわいさを目に焼き付けるチャンスなのに何馬鹿なこと言ってんの?トモ」
いや、お前こそ何馬鹿なこと言ってんの?
別にお前のかわいさはもう死ぬほど目にしてきたからもう充分なんだよ容量オーバーなんだよこれ以上いらないんだよ!!
「いや、もうルナのかわいさは充分目に焼き付けてるから、何年あんたのこと見てると思ってんの、忘れろって言われても忘れられないから」
それに忘れたくても忘れた時の報復が恐ろしくてそんなこと出来やしないっつの
また何か言い返されるんだろうな~、なんて諦め半分の気持ちで目を逸らしながらルナの次の言葉を待っていたら思いの外何も返って来ない
ん?
ちゃんと前を向いて近くてもルナのことを見ようとしたらいきなり視界が真っ暗になった
ついでに顔面も痛くなった
「いっ!痛い!ちょっ、潰れる!鼻も顔面も潰れる!」
「トモのくせに生意気なんだけどー」
な、生意気!?どこが!!?どの辺が!!?
ルナに視界を遮られて(顔面を潰されて)たせいで見えなかったが
忍はばっちりとルナの赤くなった耳に気づいていたという
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