129 / 130
第四章
害悪
しおりを挟む「ごきげんよう、皆さん」
思っている以上ににこやかな私の様子に少し安心した表情を浮かべる奴も、余計に顔色を悪くする奴もいた
その中で、明確に敵意を持っているであろう眼差しを私に向けている奴がいる
こいつ、なんか妙に記憶に新しい顔をしているような……
「ノ、ノワール嬢!お目に掛かれて光栄です!私は」
「あら、自己紹介は必要ございませんわ。ロイス・ターヘン卿。そして、そちらのお二方も。左のあなたがデインリー・ベッチ卿。そして、真ん中のあなたはべスパル・ノスカ卿でしょう?皆様のことは存じておりますわ」
「!!本当ですか!?ノワール嬢に覚えて頂けてたなんて!こんな嬉しいことはありません!」
「自分も!まさかあなた様に知ってもらえてたなんて、この上ない誉れです!」
「ふふっ」
果たして本当にそうかしら
さっきまで覚えていた男も呑気に喜んでいる男と同じように喜びだした
よほど、ノワール家の人間に知られていたことが嬉しかったのだろう
あぁ、なんと滑稽なのだろう
こいつらはどうして自分たちが私に覚えられているのかをその腐った脳みそで考えた事はないのだろうか
まあ、そもそもが腐っているから考えた所で碌な答えが出てくるわけもないのだけど
まず、ロイス・ターヘン
男尊女卑が激しい一家、ターヘン子爵の三男坊
主に商いを生業とする一家だが、少し掘れば裏での違法取引や薬物売買など、叩けば埃やごみしか出てこないような一族だ
そして、ずっと怯えていたくせに、いきなり現金になり喜びだしたのはデインリー・ベッチ
ベッチ男爵は表では宝石商を生業としている一族かと思いきや、街での違法賭博場の多くはこの家が絡んでいると言われている
信じられる筋からの情報なので間違いはないだろう
最後に、ずっと私を睨みつけているのはベスパル・ノスカ
ノスカ伯爵の一人息子であり、派手な女遊び、女性や平民への暴行、飲酒喫煙、暴力沙汰などなど、今までの二人以上に素行の悪さが群を抜いているクズ野郎
しかし、それでもこんな風に堂々とした態度でこの学園に居られるのは、彼を溺愛するノスカ伯爵がそれら全てを金でもみ消しているからだ
この3人の共通点
つまり、私に覚えられてしまった理由は
極度に平民を嫌い、貴族である自分たちの家の権力を笠に着て好き放題にしている背景があったからだ
ちなみに、この学園にはこういう奴らは腐るほどいる
だからこそ、私はそういう奴らの情報を全て頭の中に叩き込んだのだ
そいつらがクロスや他の生徒たちに何かした時に
徹底的に潰すために
「それより、ベスパル・ノスカ卿はいつまで私のことを睨みつけるのでしょうか?レディに対してあまりにも失礼ではなくって?悪態をつきたくとも、相手はきちんと選んだほうが賢明では?」
訳:お前誰に向かってそんな態度取ってんねん、身の程を知れボケが
「ハッ……これは失礼いたしました。ノワール嬢のあまりの美しさにに目が離せずにいたもので」
鼻で笑ったことを隠そうともせずによくもまあそんな白々しい言葉を並べられるものだ
「あら、そうでしたの?私ったらてっきりノスカ卿は私に何か不満があるのかと思ってましたわ!まるで親の仇のような目で見てくるから、恐怖を覚えてしまいましたわ」
「そんな、とんでもない!お慕いしているノワール嬢をそんな風に思うわけがありません!…まあ、ノワール嬢は覚えていないかもしれませんがね」
まるで吐き捨てるような言い方をする姿に既視感を覚える
覚えてない?あと、なんだって?お慕いしているだと?
表情に出さないようにちゃんとベスパル・ノスカの顔を人の顔として認識を始める
正直、今までこいつらのことを人として認識せずに顔にモザイクが掛かった人の形をした害悪としてしか見てなかったから、今初めて顔を見たと言っても過言ではない
そして、初めてちゃんと認識したからこそ思い出せたけど
こいつ、前に私を口説こうとした奴じゃん
0
お気に入りに追加
781
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる