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第四章

宣言

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真面目な顔で私の顔を褒めてくれるヒロインちゃん
お世辞を言っているようには思えないけど、自分より全然美しくてかわいいヒロインちゃんから真顔でそう言われるのはなんだか変な感じでしかない


「ありがとうございます。あなたもとても美しいですよ。それと…」


一度クロスを見てからヒロインちゃんのハンカチを差し出した手に自分の手を重ねて少しその手を下げる


「あなたのその綺麗なハンカチが汚れてしまうのはもったいないわ。それに、こちらの者は私の大切な方なので、お気持ちだけ受け取りますわ。ありがとう」

大切な方、という言葉を強調して今私たちに注目してる人全員の耳に入るように言う


ちなみに彼女のハンカチが汚れてしまうことを気にしてるのは本当だし、クロスのことを助けてくれようとしたことも本当に感謝してる。
決して、、決して!!!!私よりも先にクロスに手を差し伸べたことに対して悔しいとか思ってないから!!!






思ってないんだから!!!!!!少ししか!!!!!!!




私の言葉にパチパチと大きな目を2度瞬いてからヒロインちゃんはゆっくりとハンカチを持っていた手を下した
それに対しもう一度お礼を述べてからクロスに向き合う

ポケットから自分の薄紫のハンカチを出して濡れているクロスの顔を拭こうと手を伸せば、伸ばした私の手首をクロスが掴んだ


「…自分のがあるので大丈夫です」


他人行儀の声や言い方にムカつかなかったと言ったら嘘になる
でも、それよりも、寂しさのほうが上回った

「!うわっっ!」

だからこそ、ムキになってハンカチを別の手に持ち替えて無理やりクロスの顔にそれを押し付けた
ほぼ張り手みたいになったのはレディとしてはしたなかったと反省だ


「ちょっ、お嬢さ」

「お嬢様なんかじゃない!」

「…」

「ここにいる私はお嬢様じゃなくて、ただのセツィーリアよ。あなたの友で、家族で、あなたのことが大好きなただの一人の女の子よ」

真っ直ぐとクロスを睨みつけるように見上げる
距離を取ろうだなんてそんなのは許さない

脳みその腐った奴らがクロスにこんなことをするなら、もう何も偽ったり取り繕ったりなんかしない
ここにいる全員、学園中の奴らに知らしめてやる


クロス・ウェルシーはノワール家の人間であり



「だからよく覚えておいて。あなた自身がなんと思おうと、あなたに手を出す者がいたら、それは私に対する侮辱であり、ノワール家を敵に回すことになるということを。絶対に忘れないで」



私の人だ









空いている手をクロスの頬に添える

クロスからしたら、力のある私と親しいということが広まるのはあまり良くないのかもしれない
私に近づくためにクロスを利用しようとする者、クロスを盾に私に危害を加えようとする者、そういった輩がいないとは言い切れない
むしろ、この権力社会の中じゃそういったことを考える者のほうが多いと断言できる

私よりも頭が良いクロスのことだ
そういった可能性を考えた結果、自分に関する下僕の噂や罵倒の数々も否定しなかったのかもしれない
自分がノワール家の、私の弱みにならないように、言葉で悪く言えば、そう弁えていたのかもしれない
だからこそ、さっきも余所余所しい態度を取り続けていたのだろう


だけど、私はそんなのは嫌だ
だから面と向かって否定してやりたいし、ここにいる全員の前で宣言してやりたい



クロスは私たちの弱みなんかじゃなくて誇りだと
クロスを利用しようとしたり、害を成そうとするものがいたら、私が徹底的に潰して、クロスを何からも守ると
だから、何も心配しないで、ただ隣に居て欲しいと







隣にいなきゃ嫌だと






いつか

そう伝えられる日が来るといいな、、、











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