上 下
126 / 130
第四章

緋色

しおりを挟む



私が一歩一歩進んでいく度に息を呑み後ずさっていく人が横目で見える

そうだ
それでいい

今この瞬間、誰であっても、


私の邪魔をすることは許さない



拳を握り締めながら、それでも乱暴な歩き方にならないように進む
幸い当事者の誰も私の存在にはまだ気づいていないみたいだ


丁度いい
いきなり現れるほうが恐怖を植え付けられるから


脳内で未だに下品に笑っている3人組が無様な姿になってそこにくたばる様子を想像しながら歩いていた時だった



「はいはーい、とんでもないお顔になってますよ~セツィーリアちゃ~ん」


いきなり手首を掴まれて歩みを止めさせられた



「何かしら、ハル。今の私を邪魔したら後悔することになるわよ」

「だ~って、今のセツィーリアちゃんの顔殺人鬼みたいだったから、流石に止めないと人命に関わると思って~」

「私がこんな公衆の面前で物理的に何かをすると思って??流石にそこまで理性は失っていないわ。それに………ああいうのは人命に加えなくていいただの汚物よ」

「おぉ、、いいねぇその顔、俺までゾクゾクしちゃう」

「とにかく放してちょうだい。…これからもっと面白いこと見せてあげるわよ?」


言いながら腕を振りほどこうとするもハルは一切力を緩めない


いい加減に本気の本気で忠告してやろうかと思った時だった



「どうやら、ヒーロー気取りは一人だけじゃなかったみたいだね~」


意味深なハルの言葉に疑問を持ち、奴の見ている先、クロスの方を見れば


クロスの顔よりも先に飛び込んできたのは赤、美しい緋色だった




「え…」

「まあまあまあ!!なんの騒ぎなのでしょう!!?名門校と聞いていたのに、スラムにいるような輩と対して変わらないですわね!!」



私の困惑の声に被せるように、堂々とした、響き渡る声が耳に届いた

見れば、クロスも驚いたのか珍しく目を見開いてびっくり顔だ
かく言う、驚いたのはクロスだけじゃない
この場にいる全員、彼女の声を聞いた全員があっけにとられたのは間違いないだろう

行動もそうだが、口調がなんというか、芝居じみているのだ
明らかに使い慣れていないようなお嬢様言葉、、
彼女は一体…


「これは一体なんの騒ぎだ!」


はっきりと彼女の顔を見ようと目を凝らしてもいい具合に人と重なって顔がいまいちよく見えない
そして、彼女の登場とほぼ同時くらいに、ソフィが数人の生徒を引き連れて現れた

恐らく生徒会の面々だろう
その後ろから息を切らしたコレットとユーリも見える

多分急いで呼びに行ってくれたんだろう
きっと傍観者からしたらそれが正しい選択肢だったんだろうなあ


キョロキョロと辺りを見回していたユーリがクロスを見て目を見開いて、そしてすぐに目が合った私の所へ駆け寄ってきた


「セツ姉、一体何が」

「待って、ユーリ。全部終わってから説明する」

「…うん、、ていうか誰この人」

「あ、俺?俺はセツィーリアちゃんの愛じ「隣の席に座っているだけの人よ」せめてクラスメートって言ってよ~」

うるさいハルの声を遮断して全神経をクロスと見知らぬ少女に向ける


さっきから妙に心臓がざわついている


ここは元々ゲームの世界だから見渡せば奇抜な髪色が飛び込んでくるが、
あの少女のような目を惹く緋色の髪は初めて見る
でも、以前にも、どこかであれに似たような髪を見たことがあるよう気がする
どこだ、、思い出せそうで思い出せない




「君たちは一体何をしているんだ!」


素早くクロスたちのほうに向かって行くソフィの顔には明らかな怒気が表れ出ていた


「へえ…どうやらフィーも君のクロスくんを気に入ってるみたいだね」

「嫉妬は後にしてくれない?今はその時じゃないって分からない?空気読んでくださる?」

「はいはい、ハリネズミお嬢様」


心の中で舌打ちをしてから、意識を再びクロスたちのほうに戻す


生徒会であり王子のソフィが出てくることは予想していなかったのか、明らかにクズ野郎どもは焦りの表情を浮かべていた
それに反してクロスはソフィの顔を見て漸く表情が少し和らいだように見えた


さて、焦っているところに追い打ちでもかけてあげよう


手首を掴んでいるハルの手を叩いて拘束から逃れる
そうして、騒ぎの中心のへと足を踏み入れた時だった



「ほらあなた、美しい顔が台無しですわよ?これでも使ってくださいな!」


クロスに向かって真っ白なハンカチを差し出す少女


近づいていくにつれてどんどん少女の顔がはっきりと見えていく
それにつれて心臓のざわつきもどんどん増していく



ああ、思い出した



「セツ…」

「あら?どなたかしら?」



ハンカチを差し出した状態のまま少女とクロス、そして、その場にいる全員が私の存在に気づく


それでも、私の視線は少女一人に向かっていた
この子、話し方はともかく

緋色のロングストレートの髪に夕暮れ色の瞳
以前にも感じた美が殴ってくるようなこの顔





「?私の顔に何か?…それにしても、あなたも美しい顔をしておりますわね!」




















このゲームのヒロインちゃんに間違いない











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの世界に転生した!攻略対象興味ないので自分のレベル上げしていたら何故か隠しキャラクターに溺愛されていた

ノアにゃん
恋愛
私、アリスティーネ・スティアート、 侯爵家であるスティアート家の第5子であり第2女です そして転生者、笹壁 愛里寿(ささかべ ありす)です、 はっきり言ってこの乙女ゲーム楽しかった! 乙女ゲームの名は【熱愛!育ててプリンセス!】 約して【熱プリ】 この乙女ゲームは好感度を上げるだけではなく、 最初に自分好みに設定したり、特化魔法を選べたり、 RPGみたいにヒロインのレベルを上げたりできる、 個人的に最高の乙女ゲームだった! ちなみにセーブしても一度死んだらやり直しという悲しい設定も有った、 私は熱プリ世界のモブに転生したのでレベルを上げを堪能しますか! ステータスオープン! あれ?  アイテムボックスオープン! あれれ? メイクボックスオープン! あれれれれ? 私、前世の熱プリのやり込んだステータスや容姿、アイテム、ある‼ テイム以外すべて引き継いでる、 それにレベルMAX超えてもモンスター狩ってた分のステータス上乗せ、 何故か神々に寵愛されし子、王に寵愛されし子、 あ、この世界MAX99じゃないんだ、、、 あ、チートですわ、、、 ※2019/ 7/23 21:00 小説投稿ランキングHOT 8位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 6:00 小説投稿ランキングHOT 4位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 12:00 小説投稿ランキングHOT 3位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 21:00 小説投稿ランキングHOT 2位ありがとうございます‼ お気に入り登録1,000突破ありがとうございます‼ 初めてHOT 10位以内入れた!嬉しい‼

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。 そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。 悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。 「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」 こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。 新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!? ⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎

【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めのか
恋愛
セヴィリエ伯爵令嬢クララは、幼馴染であるノランサス伯爵子息アランと婚約していたが、アランの女遊びに悩まされてきた。 ある日、アランの浮気相手から「アランは私と結婚したいと言っている」と言われ、アランからの手紙を渡される。そこには婚約を破棄すると書かれていた。 失意のクララは、国一番の変わり者と言われているドラヴァレン辺境伯ロイドからの求婚を受けることにした。 主人公が本当の愛を手に入れる話。 独自設定のファンタジーです。 さくっと読める短編です。 ※完結しました。ありがとうございました。 閲覧・いいね・お気に入り・感想などありがとうございます。 ご感想へのお返事は、執筆優先・ネタバレ防止のため控えさせていただきますが、大切に拝見しております。 本当にありがとうございます。

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。 前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。 やばい!やばい!やばい! 確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。 だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。 前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね! うんうん! 要らない!要らない! さっさと婚約解消して2人を応援するよ! だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。 ※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。

処理中です...