113 / 130
第四章
私は?
しおりを挟む場所は変わって私たちはシェリーが学園から与えられた研究室にいた
うちの学校は教科一つにつき一つ研究室が設けられている
歴史学の先生は新任のシェリーの他には今入院中のバルクン先生しかいないから、誰かに二人でいる所を見られる心配もないとのことからここに来たのである
別にやましいことなんてこれっぽっちもないけど、流石に新任の美人先生とある意味有名人のノワール家のお嬢様が二人でいる所を見られたらミーハーな子たちが黙ってないだろう
それであらぬ疑いをかけられたらめんどくさいことこの上ない
「今日散々されてきた質問だと思うけど、どう?この学園は」
「ふふ、先生方も皆さん優秀な方ばかりで優しくしてくれてますよ。生徒の皆さんも意欲的な子ばかりで教え甲斐があります!」
本当にそう思っているんだろうな
緩んだ顔からシェリーの楽しいという気持ちが伝わってくる
この微笑みだけを見るとなんて色っぽいお姉さまなんだ!って思うけど
「セツィーリア様、どうかしました?」
さっきのシェリーと今こうして顔を覗き込んでくるシェリーが重なって思わず顔を背ける
8年のブランクというのを舐めていた…!
耐性がついていると思っていたのに、あの声で話しかけられた時心臓止まるかと思ったわ…!!
あのまま固まってもおかしくなかったけど廊下ということもあり、他の生徒たちに誤解を与えないようにその場から離れることだけを考えていたら否が応でも我を保つことが出来た
にしても、生徒の私がこんなに色々考えてるってのに
「あっ、セツィーリア様、ユーリ様とクロスくんは元気ですか?」
こののほほん美人は呑気なこった
「二人とも元気だし、すっごい成長したよ、…アーレス先生もびっくりすると思う」
「……男の子ですもんね、きっと二人ともすごくかっこよくなってるんでしょうね」
「そうだねえ、クロスとはずっと一緒にいるから大きな変化とかにはあんまり気づけなかったりするけど、ユーリは少し見ない間に本当に大人になってて、もう子ども扱い出来ないなって思ったもん」
研究室にある本棚を流し見しながら今朝のことを振り返る
つい昨日のことのように思い出せるあの小さくて憎たらしくもかわいいユーリが、今じゃもうみんなを虜にするようなかっこいい男の子になるなんて
いやあ、月日が経つのは早いね~
しみじみと実感しながら一人で勝手に頷いていればシェリーの声がしないなと思い、顔をそっちに向ければ
「え、どうしたの!?」
なぜか少し悲しそうに顔を歪めているシェリーがいた
慌ててシェリーに駆け寄る
私何か傷つけるようなこと言った!?
「セツィーリア様…」
「うん!どうしたの?大丈夫?」
「私は?」
「え?」
「今の私はセツィーリア様の中ではどう変わりました?」
気づけば手を取られていた
寄せていた顔を下から覗き込まれて至近距離でシェリーの濡れた瞳に見つめられる
やばい
こんな風に見つめられたら
目を逸らしたくても逸らせない
0
お気に入りに追加
781
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる