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第四章

いけない先生

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四時間目が終わりお昼休みになった
けど教壇では朝と変わらない騒ぎがそこにはあった

なぜなら四限目の授業が今日の話題の中心であるシェリーの授業だからだ

シェリーの担当教科は歴史学であり、私たちのクラスでも苦手が人が多いと聞いた
けど、今日のシェリーの授業はびっくりするくらい分かりやすかった
昔から教えるのは上手いと思っていたけど、歴史学をここまで分かりやすく、しかも苦手な人でも理解し易いように教えるなんて並大抵のことじゃないと思う
それをやってのけたシェリーを本当に尊敬するし、これがこの8年間の努力の証だと思ったらなぜか無性に頭をよしよしして褒め倒してやりたい気持ちになった

だからこそ、今日はなんとか話す機会が欲しかったんだけど…


「アーレス先生!僕は感動しました!アーレス先生のおかげで初めて歴史学の授業を楽しいと思うことが出来ました!」
「これからお昼ですわよね?よろしければ私が食堂まで案内致しますわ!」
「ちょっとあなた!一人で抜け駆けなんて許さないわよ!アーレス先生!学園には慣れましたか?一緒に昼食を取った後に学園も案内致しますわ!」
「アーレス先生!俺ここの問題ずっと分かんなかったんですけど教えてもらえませんか?」


素晴らしい授業によってさらにファンを増やした人気者にプライベートな時間は当分の間ないみたいだ


まっ


「皆さんありがとうございます、質問があればいつでも言ってくださいね」


あんなキラキラな笑顔で対応できてる時点で余裕だろうから助ける気も起きやしない
いや、むしろ私のこの"助ける"っていう認識すら間違いなのかもしれない
若い女の子たち(男の子もいるけど)に囲まれていい気分にならないほうがおかしいもんな


ちぇっ


「コレット、ご飯食べに行きましょ」

「あっ、セッちゃんごめんね!今日委員の集まりがあるみたいで一緒にお昼ご飯食べられないの」

「そっか、委員は仕方ないから気にしないで!」

申し訳なさそうな顔で謝るコレットの頭を撫でる

「ごめんね!明日は一緒に食べようね!」

そう言ってコレットは同じ委員だと思われる子と一緒に足早に出て行った




コレットを見送った後どうしようと考える

とりあえずクロスかユーリのとこに行こうかな
んー、でもなあ、クロスにはクロスの時間があるし、ユーリも新しい環境に慣れようとしてるのに私がそれの邪魔をするのも嫌だしなあ


とりあえず食堂に行ってみるしかないかな


そう思って教室から出て食堂に向かっている途中




「待って!」




慌てたような声と共に後ろから腕を引っ張られた




振り向けばそこにいたのは少し息の切れた今日の人気者がいた




さっきまであんなに人に囲まれていた人物が今こうして息を切らしながら私を追いかけてきたことに驚きが隠せない
ていうかよくあの輪から抜け出せたな



「シェリー…どうして」

「教頭先生に呼ばれていると言って抜け出して来ちゃいました」

ばつが悪そうに笑う姿に私のよく知ってるシェリーが重なる
やっぱり、いくら年月が経っていたとしてもシェリーはシェリーのままだよね

「いけない先生だねアーレス先生は」

からかうようにそう言えばシェリーは、綺麗な笑みを浮かべて私の腕を掴んでいた手を滑らしたと思ったら

手を握られた

「え」

と小さく呟いた私の声は



「自分でもそう思います。だって私はセツィーリア様と話したくて皆さんに嘘をついてまで追いかけてきてしまったので」



勘違いをしてしまいそうなくらいの甘い声にかき消された




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