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第三章

オフモード

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「ソ、ソフィ?」

名前を呼べばぎゅーっと抱き締める力が強まる


「会いたかった…!」

私の肩に顔をうずめて切実にそう呟くソフィの声に胸が熱くなる
思えば、ソフィに会うのは実に久しぶりだ

一年前、ソフィもこの学院に入学するため寮に入ることになった
手続きをすれば外出も可能だから頻繁にこっちに顔を出すと言っていたソフィだったけど、結局最後に会えたのは半年も前だ

それまでほぼ毎日会っていたのにいきなり会えなくなったから、こうして近くにいる今、気にしないようにしていた寂しさが一気に蘇ったみたいだ


「ソフィ…私も、私も会いたかったよ」


腕をソフィの背中に回して抱き締め返せばまた力が強まった


「あはは、ソフィ、そんなに力を入れたら潰れちゃうよ」

「あっ!!ご、ごめん!!」


笑いながらそう言えば慌てて体を離すソフィ

そうして漸く私は今のソフィをちゃんと見ることが出来た

半年前に比べて随分と背が伸びた
体つきも心なしかしっかりとした気がする
相変らず天使みたいな輝く髪に吸い込まれそうな程綺麗で澄んでいる瞳
顔つきもますます綺麗になってるけど、ちょっと前までは国宝級のかわいさだったのに、久々に見るソフィはなんだか…かわいいっていうより…


「かっこよくなったわ…」


「……え!?」

「ん?どうかした?ソフィ」

「い、今、セツ、僕のことなんて…?」

「え?てか今私何か喋ってた?」

もしかしてまた変なことでも口走ったとか!?やだー!最近は気を引き締めてたのにいくらソフィの前だとは言え油断しすぎた!!

「僕のこと、かっこいいって…かっこいいって思ってくれるようになったの!?」

少し興奮した様子のソフィの言葉で漸くさっき自分が何を口にしたのか気づいた
けど、気づいても…ソフィのこの反応は少々大げさではないだろうか

ソフィなら何をしていても、いや、なんなら何もしていなくても回りからかっこいいや美しいや天使だ!などと言われている存在なのに

「何言ってるの?ソフィは元々超絶度級にかわいくて美人で天使でかっ」

「でもセツからかっこいいって言われたことはないよ!!」

すごい食い気味に詰め寄られて思わず一歩引いてしまう

「そ、そうだっけ?」

「そうだよ!!いつもセツは僕のことかわいいや綺麗って言ってくれるけど、かっこいいって言ってくれたのは今が初めてだよ!だから!だから……セツがそう言ってくれたの、すごく嬉しい…!」

本当に幸せそうに笑ったその顔に思わず息を止めてしまうくらいに見惚れてしまった

ソフィは天使級にかわいい!それは今でも変わらない!!だから私はそのかわいすぎる笑顔に悶えてるだけ!そう!!いつもと同じように悶えてるだけ!!……のはずなのに…どうして妙にドキドキしているんだろう…


「…私が言わなくてもソフィは充分かっこいいわよ」

「それでも、俺はセツの口からそう言ってくれるのが一番嬉しいから」

あぁ、またそんな風に恥ずかしげもなくそんなこと言っちゃって!…こっちの表情筋のことも考慮してほしいんだけど!!

もう!このままではいかん!!こんな緩んだ姿でい続けたらこれからの学校生活でどんどんボロが出てしまうかもしれない!
一刻も早く令嬢のセツィーリアに戻らないと…ソフィしかここにいないうちに!













あれ?待って??


ここにいるのって、私とソフィの二人だけ………







じゃない!!!!




バッ!!とそこにいるであろう方に顔を向けると
案の定そこにいた奴は私と目を合わせて


「やぁっと俺のこと思い出した~?」


ニヤッと笑った






この瞬間ほど、私は自分のオフモードを恨んだことはない





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