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第二章

ライバル

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「どうかした?ソフィ」

「うーん…」

私と私の腕の中にいるユーリを交互に見比べたと思ったら


「ん~…セツはやっぱり困ったくらい魅力的な女性だと思ってね?」

「おっとー?なんだかよく分からないけど褒められちったぞー」


こんなこと言ってくれるのも思ってくれるのもソフィくらいしかいないけどやっぱ言われたら言われたで恥ずかしいけど嬉しいもんだね~
クロスの方を向いて褒められたぞアピールをすればクロスは苦笑いを浮かべながら"はいはい"といったように頷いてくれた

そして、私は気づかなかったが、ニヤニヤする私とは対照的に、ユーリはソフィのその言葉に眉を顰めていた


「どうやら手強いライバルが近くにいるみたいだしね」

「…どういう意味?」

「それは僕よりもユーリ殿が一番よく分かってるんじゃない?」


この愛らしくも熱く燃えているバチバチに気づいていたクロスはさらにため息をつくのであった







「それじゃあ、今日はこれで失礼するよ」


後ろにルーク様と馬車を待機させたソフィが柔らかな笑みを浮かべて言った


「今日は?今日はってことはこれからもあるってこと?」

そう言ったのはさっきから私に抱きついて離れないユーリだった

絶好調の反抗期中かと思ったら今度は一気に甘えん坊になった弟の声音に棘を感じたけどきっとそれは気のせいだよね??


「もちろんだよ!折角セツと再会出来たし、ユーリ殿とクロスとも仲良くなれたからね」

「僕はお前と仲良くなったつもりは無い」

「でも僕と君はライバルでしょ?」

「………」


真ん中に挟まれている私からしたらちんぷんかんぷんな会話を続ける二人
てか何ライバルって、あれか?好敵手と書いてライバルって読むあのthe青春の関係のことか?
おー!!なんかそれってただの友達より関係深いんじゃね!?

一国の王子に対してあまりにも砕けた(砕けすぎた)言葉で接してるからちょっと焦ったけど、そうかそうか、ライバルだったからなのか!!
いやあ~、なんか嬉しいね~!うちのユーリが私たち家族以外で素で話せる相手を見つけられるとはな~、うぅ、成長は嬉しいけどやっぱちょっと寂しい気持ちになっちゃうなぁ


「ユーリ、それでもお姉ちゃんはずっとユーリのお姉ちゃんだからね?」

「…何言ってんのこの人」

「ところでライバルってなんのライバル??」

「あぁ、それは」

「なんでもない!!!なんでもないから!!!セツ姉は入ってきちゃダメ!!」

「えー、仲間外れかよー!寂しいじゃーん!!クロスは?二人がなんのライバルか知ってる?」


ずっと私たちの後ろにいて会話を邪魔しないように静かにしていたクロスを振り返る

いきなり話しかけられたからなのか少し驚いた顔をしたクロスは私たち3人を見渡してから

「…さぁな、俺も詳しくは知らない。でも、ユーリが秘密にしたがってるんだから無理に聞くことでもねえだろ」

「もー!クロスってば大人ぶっちゃって!気にならないの!?」

「少なくとも俺はお前よりかは大人だ。それに、男同士にも色々あるからな、そっとしておいてやれ」

「……はーい」


そこまで言われちゃ私だって黙るしかない
事実、クロスの言ってることは正しいし、私だって無理矢理なことをユーリとソフィにしたくない

でも、ちょっとこういう時感じちゃうんだよね……クロスと私の差っていうの?
私これでも前世では10代半ばか後半くらいだったのにクロスは今の歳にしてとても達観しているし大人っぽい
それが少し……寂しいなんて………


「口が裂けても言えないわ」

「セツ?」

「セツ姉?」

「あっ」


ソフィとユーリから同時に声をかけられて我に返る

見れば二人とも少し心配そうにこっちを見ていた
ダメだダメだ!私って馬鹿正直に顔にも口にも出すから二人に心配をかけてしまった!


「な、なんでもないよ!そ、それよりソフィ!次来る時は一緒にお茶会をしよう!クロスの手作りお菓子は一流の美味しさだからぜひ食べてほしいの!」

「へぇ、そうなんだ!それは楽しみだなぁ!」

「おい、勝手にハードルを上げるな」

「クロス!僕の分もお願いしていいかな?」

「もちろんですよ殿下」

「んー??」

「………ソフィール」

「うん!ありがとう!!」


ちょっと照れくさそうにソフィの名前を呼ぶクロスと嬉しそうに笑うソフィを見て私の表情筋は緩みまくり

いいわ~微笑ましいわ~癒されるわ~

おっさんみたいなことを考えながらニヤける








「…ほんと、いつもクロスさんに向けてる表情も感情も僕にだけ向ければいいのに」


そんな私をユーリが面白くなさそうな顔で見つめていたなんてこれっぽっちも気づかなかった



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