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第一章
謎は全て解けた
しおりを挟むとりあえず二人はエドさんとミリアーナさんに任せて私は一人クロスを探しに屋敷を歩き回った
そして、お目当ての人物がいたのは屋敷のフラワーガーデンだった
クロスはバラの手入れをしていて、駆け寄ってきた私に気づいたら手を止め体をこっちに向けてくれた
「どうだった?」
「どうもこうもないよ!!ちょっと聞いて!!」
言うなりクロスの腕を引っ張ってガーデンのテラスにクロスを引っ張って行って、さっきお父様から聞いたどぉーうしょうもない原因をクロスにぶちまけた
私はてっきり昼ドラ並みに波乱で重い理由があるのかと思って聞いていたら、開始数分で顔に青筋浮かべられるんじゃないかと思うくらい怒りが湧いてきた
まず大きな原因と思われていた目つき
てっきり昔からずっと目つきが悪いのかと思ったらなんとその理由はただ見えていなかったかららしい
それをまず聞いたときは自分でも分かるくらい間抜けな顔をしていたと思う
気持ちを強く持ちながら恐る恐るといった感じで口を開いた
「なんで、目が悪いのに眼鏡をかけないの?」
そう聞けば今まで見たこともないような顔をしたお父様が何度か躊躇ってから口を開いた
「なんだ、その、昔、アメリアに目を褒められたんだ」
そんなあいまいな言葉じゃ分かんないでしょ!!とつめ寄ったところ
どうやら昔新婚時代、お母様に"あなたのその鋭くて凛々しい瞳が好き…!見つめられただけで吸い込まれそう!"と言われて以来常に鋭い目つきを意識しているらしい
さらに眼鏡をかけないのはお母様が褒めてくれた目をレンズで遮りたくなかったからだという
その話をしている時ずっとお父様の顔を見ていてまさかとは思ったけど…
あなたそれ照れてる顔だったのおおおおおおおおお!!!??
妙に目線がそわそわしてるかと思ったら恥ずかしがってただけ!?乙女か!!ウブか!!かわいいか!!
さらに声に関しても同様だったらしい
"あなたの声は私の身体の奥の奥まで響いてくるわ。低く轟くその素敵な声を他の人に聞かせないで?嫉妬してしまいますわ"と言われてから、ずっと声を意識していたら、普通がこの状態になったという
そして昔は低音は低音でももっとまろやかな低音だと弁解された
いや、そういうことじゃねえよ
なんだよまろやかな低音って
私が弁解してほしいのそこじゃねえよ
と、心の中ではツッコミの嵐が巻き起こっていた
まあ、とにかく、話をまとめれば
お父様が周りから恐ろしいと思われていた物事が実は全部お母様への愛の表れであり、そしてその当の本人は恐らく自分が言ったことも忘れ、急に常時厳ついモードに突入した父を誤解してそのまま疎遠になってしまったらしい
どうやら最初はいきなり避けだしたお母様に驚いて話を聞こうとしたらしいが、そこであの母の被害妄想が炸裂し、全く話を聞き入れてもらえなかったという。父も暫くすれば収まるだろうと思い一度距離を置いて様子を見ようとしたが、それが逆に母の被害妄想をさらに広げる原因となり、気づいたときにはもう手遅れだったらしい。そうして拗れに拗れて今に至るという
もうね、なんと言うかね
「我が親ながら、なんっっっつうーバカなんだ!!って思ったよね」
「溜めたな」
そりゃ溜めたくもなるわ!!てかまだまだ怒りの方は溜まってて全然発散できてないから!!
「だって、そんなくだらない理由だって思わないでしょ!?これで誤解が解けないまま離縁なんかしちゃったら末代までの恥になるとこだったよ!!」
「まあ、でも良かったじゃん。実は単に二人のすれ違いだって分かって」
「うっ、それはそーだけどさー!…なんか焦ってた自分がバカみたいに思えてくるよ…」
だってつまりはただのバカップルに振り回されただけってことでしょ?あっ、結婚してるからバカ夫婦か
テラスのテーブルに顎を載せてため息をこぼす
もうなんか一気にドッと疲れたって思ったその時だった
「お疲れ。よく頑張ったよセツは」
「!っ」
頭にクロスの温かい手が触れ、そのまま頭を撫でられた
いきなりのことでびっくりして身体が固まる
さっきお父様にも頭を撫でられたのに、なんでクロスのときはこんなにもむず痒い気持ちになるんだろう…
あ、あれかな?やっぱり年齢が近いからかな?それにほら!父は父だし!クロスはクロスだし!違う人間なんだから違う反応ってのも妥当だよね!うん!きっと母やエドさん、ミリアーナさんに頭を撫でられても三者三様の反応が生まれるはず!!きっと!
「セツは自分が何かやっても何も変わらないって言ってたけどそんなことなかったじゃん。お前が行動を起こしたから旦那様と奥様はちゃんと話が出来るようになったんだし、そのきっかけを作ったのは大手柄だよ」
「う、うん」
「それと、俺は二人のために頑張ったお前をバカだとは思わないよ、むしろ尊敬する。気持ちはどうあれ、行動するってのは簡単に出来ることじゃない。それをお前は立派にやってのけたんだからもっと誇ってもいいと思うよ?」
「あ、ありが、とう…」
まっ、ちょ、ちょっと待ってって…
そんなに褒められたら反応にすっごい困るんですけど…
ていうか顔から火が出そうなんだけどどうしてくれるの!?
未だにクロスの手は私の頭を撫でてる
温かいって思ってた手が物凄く熱く感じるんだけど、この子手から熱でも放出してるわけ!?
絶対に赤くなってる顔を見られたくなくて下を向く
ヒンヤリとしたテーブルが額に触れて少しだけ気持ちよく感じたけど、それもすぐに私の熱と同化した
そんな時だった
「お嬢様」
ミリアーナさんの声が聞こえてパッと顔を上げた
事前にミリアーナさんにはあの二人のことが解決したら呼んでくださいって伝えておいたから、ここに来たってことは…
クロスと顔を見合わせてから一緒に駆け足で家の中へ戻った
いつの間にか戻されていたクロスの手は、私に安心したような少し残念なような、なんとも言えない気持ちを与えた
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