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王族の集まりと真実

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 兄に話をしたあと、王族のみ一室に集められた。側近すらいない。

 事態はそれほどに良くないことらしい。

「水龍がこの地を去った」

 父が口を開く。その言葉に皆は苦い表情になる。誰一人驚いているものはいない。 ディサンテは知らなかったが、王族の人数の多さに目を見張る。そして老いているものもいない。

 いつも閑散としていた城には、これだけの王族がいた。そしてそれぞれが国の各地に出向いていたと知る。

「水龍が去ったなら、我らの加護もなくなった。力があってもそれぞれ警戒をして欲しい。急ぎで調査したことがこの紙に記されているから、皆も見て事態の把握をお願いする」

 一枚の紙には、事細かに字が書かれている。急ぎで調査といっても昨日今日ではないことに思えた。

「――兄さん、王族の王って誰なの?」

 兄に声を潜めて聞く。兄は丁寧に答えてくれた。

「この国は王制になっている。民を守るのが王族の義務。しかし王族の中では上下はない。ここでの最年長は父だから支持を出したりする」

「最年長? え、でも……」

「ディサンテ、俺たちの本当の父はこの国を出た。だから最年長のいまの父が俺たちの父になっている」

 予想していなかったことにディサンテは動揺した。

「母は王族の血を引いていないから、この場にはいない。父は成人したけど、力の解放を水龍にされていない。水龍が認めなかったから……心に闇を持つものを水龍は認めない」

 結婚して子を成しても、王族の一員として弾かれた父は異国へ旅立ったという。

 最年長の者が父の代わりになっていた。

 ――いやでも、どう見ても四十歳以上に見えない。

「力の解放をされた王族は、老いてしまうことはないんだ」

 この一室に集められた者たちは、三十人ほどいる。皆見た目は二十際から三十歳くらいにしか見えない。

「民に紛れ、各地を視察することで、この体質を秘匿している。だから城にいるのは、見た目に近い年齢の者が多い」

「側近の者たちは知っているんですか?」

「側近でも知られないようにしている。だけどそれは大した問題じゃない。いま一番問題なのは、水龍がこの地を去ったということ。王族は水龍の加護がなくなった」

 兄が眉を顰めた。めったに見せないその表情にディサンテは、水龍がいないということがそれほどまでに大きな問題だと理解する。

「ともかく、いま自分たちにできることは……民を守ること。この先どんなことが起きるかわからない。先読みの者が水龍が去るのを予見していたからこそ、ディサンテの成人の儀を急ぎ、力の解放を求めた。幸いにも王族はこれですべて解放された」

 水龍に開放を許されなかった者たち以外は。

 ディサンテはこの中で最年少。十二歳の成人は前例のないことだという。

「これから何が始まるのですか?」

「混乱、争い、不作による飢え……天候はさすがに水龍がいないとどうにもならない。――なぁ、ディサンテはこの国が好きか?」

「好きです。市場の人たちなど楽しい人が多くいるので」

 そうか、と兄はため息をついた。

「先日、ディサンテがもらったという物を調べた。やはり国外から入ってきたものだった。いま、国は他国と交流をしていない。……もし王族の力が他国に知れ渡ることになれば、恐れを抱く国もあるだろう」

 普通の人ではありえない力を秘めた、王族は他国から……あるいは民からどう見られるのか。考えてみれば忌避されることだろう。

 もともと体が細いというだけで、不思議だと思われている。他国でなくても異端者として王族をみる可能性が高い。

「ディサンテ、この国はもう少しで崩壊する。他国からの侵入者が、聖域の湖に呪詛が込められた小石を投げ入れた」

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