上 下
101 / 123
第二章 魔導士学園 編

マリアージュ ~ドーナツふたたび~

しおりを挟む
~料理店店長・ワルテールの視点~

休日目が覚めた時から、今日は何だかおかしいなー、みょうだなーという気分でした。
というのも、普段は寝つきがいいあたしが昨日はなかなか寝付くことができず、眠るまでに2時間くらいかかってしまったのです。
そして朝起きたら首のあたりが、まるで何か重りをつけているかの如く重く感じたのです。

首が回らないなー、重いなー。

そんな何かの予兆を感じる朝だったのですが、あたしは気にせず街に出る事にしました。普段通るルートを歩いていると、なんだか違和感を感じました。
変だなー、変だなー。
あたしはその違和感について考えると、ふとその違和感の正体に気付いてしまったのです。

普段通る見慣れた街並みに一つの見慣れない建物があったのです。
私は看板を見て少し迷ったあと、その扉を開けることにしたのです。

チリリーン、チリリーン

冷たい鈴の音が店内に鳴り響きました。

あたしはドキッとしながらも私は店内を見回しました。ソファには少女が一人何かを夢中に食べていました。そして奥にも目をやるともう一人少女がいました。その少女も何かを食べているようです。

なにかなー、なにかなー

あたしが考えていると、猫があたしのところへやってきました。

ふわふわふわ、ふわふわふわと飛んでいるのです。あたしは驚きました。さらに驚いたことにその猫はあたしを席へと案内するのです。

あたしはこれが現実なのか、それともまだ夢の中なのか分かりませんでした。これは夢でまだベッドの中かななんて錯覚に囚われました。

あたしはひとまず誘われるままにソファに座りました。

「これがメニューにゃ。どれにするにゃ。」

猫があたしに尋ねました。あたしはメニューを見ました。なじみのある料理から聞いたことのないような料理までいろいろと書かれてありました。あたしはどれにしようか迷っていると、後ろから微かな音が聞こえてきました。

むしゃむしゃむしゃ、むしゃむしゃむしゃ

ばっと振り返ってみると少女が一心不乱に丸い輪っかのようなものを食べていました。
あたしはその丸い食べ物に興味が出たんです。

「あちらと同じものをくれんかね。」
あたしは猫に注文しました。
すると、すーっとどこかへ行ったかと思うと、皿を持って再びあたしの前へとやってきました。
「こちらになりますにゃ。」
あたしはテーブルに置かれた料理を見ました。
どうやらパン生地のようなものに独自のソースをかけているのですね。
あたしはこう見えて料理店の店長を勤めていますから、見ただけである程度のことは分かるのです。

あたしは少女たちが夢中になっているこの料理を手に取り、口に運びました。

一口、また一口

へんだなー、おかしいなー
こんな味は食べたことがないなー。あたしの経験上味わった事のない味がしたのです。

あたしはそこで自分のスキルを使ってみました。

あたしはこう見えて魔眼を持っているのです。その魔眼によって『鑑定スキル』というものを使う事できます。料理の材料などを一目で分かるのです。今まで、このスキルを使ってライバル店のレシピを盗み、繁盛させてきたのです。

あたしは『鑑定スキル』を使いました。

砂糖  30g
卵   1個
バター  50g
薄力粉   40g
油     適量
スライム  1匹

マッ??????????

あたしは自分の目を疑いました。目をこすりもう一度見直しましたが、やっぱり最後の一行におかしな材料が表示されたのです。

おかしいなー、おかしいなー。

あたしはもう一度魔眼の能力を使いました。


砂糖  30g
卵   1個
バター  50g
薄力粉   40g
油     適量
スライム  1匹

ムマッ??????????

腕で目をこすった後、何度も確認しました。どうやら、この料理にはスライムが隠し味として使われているというのです。

魔物を食べる………たしかにそれを実行したものはいるのですが、不味過ぎて食えたものじゃないと言われているのです。
しかし、これはどうしたことか。実際にはこれほど美味しいのです。今まで言われてきた事が実は嘘なんじゃないかと疑い始めました。そして、ここの店主はそれに気付き誰にも知られずに儲けようと考えているのです。あたしが魔眼でその秘密を暴いたとも知らず・・・・

あたしはいてもたってもいられなくなりました。席を立ち、会計をすませようとしました。すると、入口付近に先ほどまではいなかった女性がスーッと現れたのです。一切の気配が感じられませんでした。

「ドーナツ6個で銅貨42枚になります。」

その霊のような女性の前へ言われた額を置きました。
そして、支払いを済ませたあたしは薄気味の悪い店を後にしました。店に帰って、早速スライムの遺体を冒険者ギルドに発注することにしました。
そして、料理に使う事にしたんです。

周りからはあたしが狂ったとか何かの呪いにかかったとか噂していましたが、このあたしの料理を食べれば皆黙るはずです。

あたしは来る日も来る日も試行錯誤を続け、あのおかしな店で食べた料理を再現しようと研究を重ねました。何度も食べているとあたしの味覚は狂い始め、これで大丈夫なのかどうかが分からなくなりました。そこで、何度か客にあたしの料理を出して反応を確かめたりもしました。もちろんスライムのソースをかけましたよ・・・

そうして何週間かすぎた頃、寝つきの良いあたしがなかなか眠ることができない日がありました。
なんだかおかしいなー、みょうだなー。

あたしは家を出て普段通るルート歩いていると、またもや、なんだか違和感を感じて立ち止まりました。

なんだかおかしいな~、おかしいな~

そこにあったはずの建物が無くなっているのです。そこで私は気付いてしまったんです。

お店が潰れてなくなっていたのです…………………………………………あたしのお店が………


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界転生しちゃったら☆みんなにイタズラされてしまいました!

TS少女 18歳
ファンタジー
わけもわからず、目覚めた場所は異世界でした。 この世界で、わたしは冒険者のひとりとして生きることになったようです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

処理中です...