上 下
46 / 123
第二章 魔導士学園 編

冒険者達・その1

しおりを挟む
~勇者(仮)・カーズの視点~

 俺は今年、騎士養成学校を卒業した。そして、冒険者ギルドで勇者として仮登録をした。依頼をこなして本登録となるらしい。

 俺はジーク先輩に憧れていた。ジーク先輩は在学中、剣の腕は学校内一で、学生の身でありながら冒険者ギルドの依頼を数多くこなしていたのは、今でも有名だ。そして、プライベートでは王国の姫と交際しているという噂もあった。

 俺は、在学中に依頼をこなす余裕などなかった。日々の訓練で精いっぱいだった。
しかし、卒業した今、俺は野望を持っていた。俺こそが次代の勇者として名を馳せるのだ。
3年前ジーク先輩は北の大陸へと旅立って、未だに帰ってきていない。もう死んでしまったという噂さえあった。

 だこらこそ、俺がジーク先輩の意思をつぐのだ。
 俺はまず手ごろな依頼を探すことにした。港町で暴れたというエルフとその仲間である人間と思われる少年の捕獲という依頼があった。

 難易度はDランク。冒険者ギルドの依頼はFランクからAランク、そしてその上にSランクととSSランクがある。仮登録で受ける依頼としては、通常F~Dランクが普通である。
 だから、仮登録で受ける一番上のDランクの依頼をまずこなすことにした。
俺はまず仲間を探した。最初の依頼で失敗するようなことはしたくなかったので、慎重を喫したのだ。決して1人で不安だったわけではない。

 しかし、仲間探しは思ったより難航した。俺が仮登録の勇者であるからだ。魔法使いや僧侶を受付で希望したが、なかなか新米の勇者に従ってくれるものはいなかった。

 俺は、同じように騎士養成学校を卒業した友達とパーティーを組むことにした。同じように仮登録を済ましていた。

 騎士養成学校を卒業しただけあって、全員勇者で登録をしていた。俺たちは勇者4人といういびつなパーティーを組むことになった。

 まあいい。この依頼を成功させて、少しずつ実績をつけていけば、おのずと向こうから魔法使いや僧侶が集まってくるだろう。

俺は4人に依頼内容を説明し、港町へと向かうことにした。

~勇者(仮)・レフの視点~

 カーズにパーティーに誘われて俺はほっとしていた。
 騎士養成学校を卒業すれば、すぐに理想の仲間を組むことができると思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。勇者というジョブはみんなのまとめ役となる存在。何も実績がない勇者には誰もついてくるはずがなかった。

 さすがに勇者ばかりのパーティーを自分から誘うのは抵抗があったが、誘われたのなら話は別だった。
まずこのパーティーを踏み台にすればいいのだ。

 俺たちはカーズの情報からククリという町にある冒険者ギルドへ行った。港町から日数的に考えれば、ククリという町にいる可能性が高かったからだ。

 俺たちが冒険者ギルドに到着した時、幸運なことに新情報が舞い込んだ。鍛冶師からの新情報であり、2重の依頼でもあった。

 エルフと思われる方はフードをかぶっててよくわからなかったが、少年の方が猫を頭にのせているという情報通りだったそうだ。それもついさっき鍛冶師のところを出て行ったらしい。

 そして、その少年は貴重な素材を持って行ったので取り返してほしいという依頼もあったのだ。
 つまり、エルフと少年を捕まえて引き渡せば、バロワ商会と鍛冶師双方から依頼料をもらえるという事だった。

 俺たちは、ついていた。絶好のタイミングでこの冒険者ギルドに訪れたのだ。俺は、この幸運を神に感謝した。

 俺たちは急いで町の出口へと向かった。出てくるのを待ち伏せしようと思ったが、どうやらそれらしきものが町を出て行くのを発見した。

頭の上に猫を乗せていたのだ。
俺は思わず叫んだ。

「おい、そこの2人。止まって、大人しく俺達について来い。じゃないと怪我をすることになるぞ。」
少年は振り返った。

 ローブを来た少女も続いて振り返った。なにやら魔法を詠唱しようとしているようだったが、少年が遮った。

 どうやら、俺達4人にびびって闘う意思がないようだ。

 これなら、楽勝に依頼をこなせる。そう思い安心した。

~勇者(仮)・ポールの視点~

やつを追うものに、言っておくっ!おれはあの時、やつの力を、ほんのちょっぴりだが体験した。
い・・いや・・体験したというよりは、まったく理解を越えていたのだが・・・
あ・・・ありのままあの時 起こったことを話すぜ!
「俺たちは、やつらを追い詰めたと思ったら、いつの間にか4人が全員木にくくりつけられていた。」
な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・催眠術だとか超スピードだとか、そんなちゃちなもんじゃあ、断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

~勇者(仮)・ジョナの視点~

 どうやら俺たちの初めての依頼は失敗に終わったようだった。俺たちが全員無傷であることが不幸中の幸いだった。

 レフとポールは冒険者の道を諦めようとしている。カーズは修行をして1から出直す旅にでるらしい。
この世の中には上には上がいる事がよく分かった。

 俺は勇者ではなく、サポート職に回るのがいいかもしれない。

 俺は今後について考えたが、いっこうに答えが出なかったので、そのうち俺は考えるのをやめた。

 こうして冒険者達の若き芽は摘み取られたのだった………


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ドグラマ3

小松菜
ファンタジー
悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。 異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。 *前作ドグラマ2の続編です。 毎日更新を目指しています。 ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

婚約破棄された悪役令嬢は男装騎士になって推しを護ります!―女嫌いの王太子が溺愛してくるのは気のせいでしょうか―

イトカワジンカイ
恋愛
「私が王都までお守りいたします!殿下は私を男だと思ってますからバレなきゃ大丈夫ですよ」 スカーレットは唖然とする父と義弟にそう言い放った。 事の経緯としては、先日婚約者デニスに婚約破棄された際にテンプレながら乙女ゲー「マジらぶプリンセス」の悪役令嬢に転生したことをスカーレットは思い出す。 騎士の家系に生まれたスカーレットは並みの騎士よりも強いため 「もうお嫁に行けないし、こうなったら騎士にでもなろうかしらハハハハハ…」 と思いながら、実家の屋敷で過ごしていた。 そんなある日、偶然賊に襲われていた前世の推しキャラである王太子レインフォードを助ける。 ゲーム内でレインフォードの死亡イベントを知っているスカーレットは、それを回避するため護衛を引き受けようとするのだが、 レインフォードはゲームの設定とは違い大の女嫌いになっていた。 推しを守りたい。だが女であることがバレたら嫌われてしまう。 そこでスカーレットは女であることを隠し、男装して護衛をすることに…。 スカーレットは女であることを隠し、レインフォードの死亡イベントを回避することができるのか!? ※世界観はゆるゆる設定ですのでご了承ください ※たぶん不定期更新です ※小説家になろうでも掲載

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

処理中です...