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第二章 魔導士学園 編

勇者一行の帰路・その6

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帰路360日目
~勇者・ジークの視点~

 俺たちは、また立往生をしていた。山脈を越え、麓に広がる森林を越えて砂漠地帯へと差し掛かったのだが、時期的に灼熱の暑さだった。どうやら、2つの太陽が重なっている特殊な気候になっていた。俺たちは、森林地帯でまたもや、この気候が治まるのを待ってから行動することにした。

 砂漠地帯では、水はティーエの魔法で何とかなるが、食糧がなかなか確保しづらかった。だから、この森林で保存できる食糧を調達することにした。


帰路420日目
~ドワーフ・ガラフの視点~

 2カ月ほど足止めされたが、ようやく砂漠を出発できたわい。途中で蟻地獄のような魔獣やゴーレムに出くわしたが、新しい装備のおかげでなんとか乗り切ることができたんじゃ。行きはオリハルコンの装備とティーエの杖で難なく乗り越えていけたのじゃ。帰りの装備は少々劣ってはいたんじゃが、単独の敵ならばなんとか対処することができたんじゃ。

 それが、砂漠もあとちょっとで抜けるというところで、あんな奴らに襲われることになろうとは………

帰路500日目
~魔法使い・ティーエの視点~

 あと少しで砂漠も抜け切ろうというところで、油断してしまいました。ガラフを先頭に、私、ジーク、マヤカの順で隊列を組んで進んでいました。
 私の魔力感知に、またしても強い魔力の反応がありました。それも1つではなく、複数です。

「魔力の反応があります。気をつけてください。」
辺りを見回しても砂ばかり。平原の時のように、空からかと思い、見上げたが何もいませんでした。
そして、地中の可能性に思い当たった瞬間。私はジークに横へと突き飛ばされました。

 そして、下から舞い上がる土煙と共に、ガラフと私を庇ったジークが空中に吹き飛ばされました。
私とマヤカは空中に舞い上がった2人を見上げ、視線を下へと向けると、そこには巨大な魔獣がいました。

 モグラのようなフォルムをしていましたが、その頭には大きな1本の角があり、その体格は20mくらいありました。

 その大型の魔獣は姿を現したと思ったら、地中に角を突き刺し、そのまま地中へと潜り込んでいきました。

 どうやら、同じような魔獣が地中に複数いることが分かりました。

 私とマヤカは、ガラフとジークに『奇跡の水』を飲ませて、大きな1枚岩に逃げ込みました。その岩を取り囲むように、さっきの魔獣が地中を徘徊しているようでした。

 私は仕方がないので、1枚岩の中腹に土魔法で洞窟を作り出して、魔獣たちが去るまで籠城する作戦をとりました。

帰路???日目
~僧侶・マヤカの視点~

 岩の内部に籠城してから、何日が過ぎたでしょうか。ここに、籠城した最初の頃は、すぐに魔獣はどこかへ行くだろうと楽観視していましたが、どうやら魔獣たちはこの場所を離れようとしませんでした。

 どうやら、このあたり一帯は地中に蠢く魔獣の巣のような場所のようです。

 あともう少しで密林に辿り着き、そこを通れば後は海を越えるだけで南の大陸へと戻ることができるというのに。

 私たちはこの岩の中で何日か過ごしていたので、日にちの感覚がおかしくなってしまいました。

 魔獣たちに襲われる覚悟で突き抜けるかという案もありましたが、『奇跡の水』が後2本となってしまった今では、そのような危険な賭けにでるの最後の手段でした。

 そもそも、2本のうち1本は女王に届けるものと考えるなら、実質後1本なのです。
 私たちは、暗い洞窟の中で身を潜めるようにして過ごしました。
奇跡を信じて………

 そして、その奇跡は起きたのです。

  『 奇跡の水 』 残数 2本

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