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第一章 ルード皇国 編
勇者一行の帰路・その4
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帰路83日目
~勇者・ジークの視点~
俺たちは平原を順調に進んでいた。しかし、そいつは唐突に空から現れた。
「何か大きな魔力を持つものが近くにいます。」
ティーエが皆に注意を呼びかけた。
俺は剣を構え、あたりを見回す。それらしい生物はいなかった。気のせいかと思ったら、空から大きな獅子が舞い降りた。いや、よく見ると獅子ではなかった。ライオンの頭を持ち山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ生物。その胴体には翼が生えていた。その口は人間を一飲みできるほどの大きさだった。
俺はそいつの名前を知っていた。神話の世界で語られるキマイラという生物だった。
『こいつは、やばい。』
1目見てわかった。俺は退却を指示しようとした。そのときである。
「動ける。ワシは動けるんじゃーー!」
ガラフが斧を振り上げて、キマイラに突っ込んでいった。
「待てガラフ、戻れ。」
俺の言葉と同時に、キマイラの口から炎が出た。俺とティーエとマヤカは回避した。ガラフは盾でガードをした。しかし、その盾はドロドロと溶かされていた。
それを見てティーエは魔法の詠唱を開始した。
「 水精よ 万物を産みし力を以って 天地を洗い流せ アクアフラッド 」
ティーエの手から水の魔法が打ち出され、ガラフの周りを炎から守る。
それでも、火の勢いは止まらなかった。ガラフはたまらず盾を捨てて、右へと回転して火から遠ざかる。
キマイラの視線が、ガラフの方をチラリとむける。
俺はそのすきに、左の方へと移動して、キマイラの右前足を切りつけた。
キマイラは俺に気づき、俺に噛みつこうと大きく口を開けて俺に襲い掛かった。
俺は剣を振り、頭を切ろうとした。その剣は、キマイラの牙にぶつかり、折れてしまった。
『まずい。』
その時、キマイラの左前足が地中に落ちて、バランスを崩した。ティーエの土魔法だった。俺は折れた剣を口の中に投げ入れた。キマイラは苦しんで雄たけびをあげた。
「今だ、逃げろ。」
後方にいたティーエとマヤカに指示を出す。俺はガラフのところへ駆け寄り、ガラフを担いでその場を去った。キマイラは両方の前足が自由にならず、すぐには追いかけてはこなかった。
俺達は離れた場所まで移動して、ティーエの土魔法で、地中に隠れてやり過ごした。
どうやらキマイラは俺達を見失ったようだった。
それよりも、ガラフの状態が危なかった。全身酷い火傷を負っていた。マヤカの回復魔法で危険な状態を脱する事ができたが、盾を持っていた指が3本ほど失われてしまった。損傷した部位があれば、マヤカの回復魔法で何とかすることができただろうが、どうやら指は盾の持つ部分に引っ付いたまま失われてしまったようだった。そこで、俺は奇跡の水を飲ませてみた。噂では失われた腕を復元したということだったからだ。
その効果は驚くべきものだった。
ガラフがその薬を飲むと一瞬光に包まれたかと思うと、失われた指が再生されたのだ。
「すまない。ワシのために……」
ガラフは申し訳なさそうにしていた。
「いや、ガラフ以外の皆は1本ずつ飲んでいる。それに、こんな時のための薬じゃないか。まだ、全部で6本残ってるから大丈夫だ。気にするな。」
「それが………ワシも一本飲んでしまっておるんじゃ。ワシも呪いにかかっておったからのぅ。」
それは初耳だった。ティーエもマヤカも言っていたが呪いとは一体……
「それでもまだ5本残っている。この薬の効果は本物だという事が分かった。1本持ち帰ればいいと考えれば、あと4本も余ってるんだ。絶対にみんなで無事に帰ろう。」
俺は皆を鼓舞した。ここでギクシャクするよりは、団結して前に進んでいくべきだ。
帰路125日目
~魔法使い・ティーエの視点~
キマイラの戦闘の後、ジークは剣をすべて失い、ガラフは盾を失い、私たちのパーティーの戦力は激減しました。
私たちは平原を慎重に進みました。平原には丘や木々もあったので、私たちは隠れるようにして進んでいきました。その進路は目的地まで直線的に進むのではなく、物陰に隠れるために、蛇行しながら進みました。
そのせいで、行きよりもかなりの日数を使い進んでいきました。
そして、なんとか、砂漠地帯一歩手前の山脈地帯に辿り着きました。
この山脈を越えると、少し樹海が広がっており、その後は砂漠地帯になります。そこさえ抜ければ、あとは密林を抜けて船で南の大陸へと帰るだけでした。
しかし、この山脈越えには2つ問題がありました。1つは季節の問題でした。当初の予定と違い、季節は冬になっていました。山頂は凍えるような寒さとなっているでしょう。
そして、2つ目は、この山頂付近には飛竜が生息しているということです。行きは、私の魔法とジークのオリハルコンの剣があったおかげでなんとか倒せましたが、今の杖のない私と剣を持たないジークではどうしようもありませんでした。
1つ目の問題は春まで待って、この山脈を越えようということで解決しました。山の麓付近に、私の土魔法で家の土台や大まかな部分を作り出して、ガラフが木や岩などを使い玄関や窓などの細かい部分を作りました。私とマヤカ専用のお風呂もちゃんと作りました。
水や火は私がいる限り不自由することがありません。あとはジークの武器です。なんとかしないといけません………
帰路140日目
~ドワーフ・ガラフの視点~
ここで、待機したのは幸運だったとしか言えない。ワシがそれを発見したのは偶然じゃった。
ここで春まで待機しようと決めて、ワシは食料を狩りに出かけた時じゃ。なにやら、洞窟のような入り口を見つけたのじゃ。その洞窟の先から微かに白く光るものを見た。その微かな光をみただけでワシには十分じゃった。
その光の正体はプラチナじゃった。プラチナはミスリルよりも上位に位置する鉱物じゃ。その性能もミスリルより上じゃ。それに、プラチナなら1800℃もあれば融解するはずじゃ。だから、ティーエの火の魔法があれば、ここでも加工することできるはずじゃ。
オリハルコンよりは劣るが、オリハルコンはどうせここでは加工することができん。ジークの鎧を直すことができないのはそのためじゃ。オリハルコンを加工するには、複数の術師により炎を100万℃にまで達することができなければいけない。
そういう意味では、オリハルコンを見つけるよりも今のワシ達には幸運な事じゃった。
ワシはさっそくジークの剣の制作にとりかかった。春までには時間はある。防具やワシの斧なども制作してやろう。
帰路157日目
~僧侶・マヤカの視点~
私は最近ティーエと一緒にお風呂に入る。私とティーエの間に何かあるかと言えば、全くそうではない。私の心は魔王様の事でいっぱいなのだ。
ではなぜ一緒に入るかといえば、ティーエの魔法で、水も出るし、火の魔法で水を沸かすこともできるから、一緒に入った方が効率がいいからである。体を綺麗にしたあと、魔法で洗い流してもらえるし、温度の調節も頼めばやってくれるからだ。
ティーエはこの冒険に出たのが14歳の時だった。しかし、今は16歳になっていた。そして、最近ある悩みを抱えており、私と2人きりになるお風呂でよく相談に乗っていた。
「私はこの旅に出たのは失敗だったかと後悔しています。」
ティーエは最近ある悩みのせいで悲観的になっていた。
「いや、こうして、薬も手に入ったし。この薬を王様に届ければ一生遊んで暮らせるよ。それに、南の大陸を渡った勇者の一行としてみんなから声援をもらえるよ。ティーエの言ってた大魔導士としての伝説の1ページを彩ってくれるよ。」
私はティーエを慰める。
「いえ、そのために失った代償はあまりにも大きかった……」
「いや、でもまだ大丈夫だよ。希望はあるって聞くよ。」
「まだ、大丈夫ですかね?どうすればいいんですか?」
目を輝かせて、私に詰め寄ってくる。
「その……マヤカさんが羨ましいです。」
ティーエは私の胸を見ながら続けた。
そう、ティーエは自分の胸が成長しない事に悩んでいたのだ。ティーエの胸は膨らみがまったくない絶壁だった。
私はそれを見て気の毒に思った。その体では一部のマニアには受けるでしょうが………
そして、ティーエはその胸の成長しないのがこの過酷な旅に原因があると思い込んでいたのだ。成長期にこの旅に出たために、胸に栄養がいかなかったと嘆いていたのだ。
私は思いつく解決策を口に出した。
「胸を揉むと大きくなるって聞くよ。」
「えっ?!」
ティーエは顔を赤らめていた。しかし、自分の胸を見て、おそるおそる自分の胸に両手を伸ばしていた。
「こうですか?」
2、3回軽く揉んだ後聞いてきた。
何かいけない事を教えているような気がした。
「けど、揉んだから大きくなるってのは迷信かもしれないし。」
私は慌てた。
「それに、ティーエもこれからきっと大きくなるって。」
「そうだといいんですが………本当に私はこの旅で大切なものを失ってしまいましたよ………」
「それは何?」
聞くまでもない事だった………
「それは、私の胸です……」
風呂場に静寂が流れた………
『 奇跡の水 』 残数 5 本
~勇者・ジークの視点~
俺たちは平原を順調に進んでいた。しかし、そいつは唐突に空から現れた。
「何か大きな魔力を持つものが近くにいます。」
ティーエが皆に注意を呼びかけた。
俺は剣を構え、あたりを見回す。それらしい生物はいなかった。気のせいかと思ったら、空から大きな獅子が舞い降りた。いや、よく見ると獅子ではなかった。ライオンの頭を持ち山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ生物。その胴体には翼が生えていた。その口は人間を一飲みできるほどの大きさだった。
俺はそいつの名前を知っていた。神話の世界で語られるキマイラという生物だった。
『こいつは、やばい。』
1目見てわかった。俺は退却を指示しようとした。そのときである。
「動ける。ワシは動けるんじゃーー!」
ガラフが斧を振り上げて、キマイラに突っ込んでいった。
「待てガラフ、戻れ。」
俺の言葉と同時に、キマイラの口から炎が出た。俺とティーエとマヤカは回避した。ガラフは盾でガードをした。しかし、その盾はドロドロと溶かされていた。
それを見てティーエは魔法の詠唱を開始した。
「 水精よ 万物を産みし力を以って 天地を洗い流せ アクアフラッド 」
ティーエの手から水の魔法が打ち出され、ガラフの周りを炎から守る。
それでも、火の勢いは止まらなかった。ガラフはたまらず盾を捨てて、右へと回転して火から遠ざかる。
キマイラの視線が、ガラフの方をチラリとむける。
俺はそのすきに、左の方へと移動して、キマイラの右前足を切りつけた。
キマイラは俺に気づき、俺に噛みつこうと大きく口を開けて俺に襲い掛かった。
俺は剣を振り、頭を切ろうとした。その剣は、キマイラの牙にぶつかり、折れてしまった。
『まずい。』
その時、キマイラの左前足が地中に落ちて、バランスを崩した。ティーエの土魔法だった。俺は折れた剣を口の中に投げ入れた。キマイラは苦しんで雄たけびをあげた。
「今だ、逃げろ。」
後方にいたティーエとマヤカに指示を出す。俺はガラフのところへ駆け寄り、ガラフを担いでその場を去った。キマイラは両方の前足が自由にならず、すぐには追いかけてはこなかった。
俺達は離れた場所まで移動して、ティーエの土魔法で、地中に隠れてやり過ごした。
どうやらキマイラは俺達を見失ったようだった。
それよりも、ガラフの状態が危なかった。全身酷い火傷を負っていた。マヤカの回復魔法で危険な状態を脱する事ができたが、盾を持っていた指が3本ほど失われてしまった。損傷した部位があれば、マヤカの回復魔法で何とかすることができただろうが、どうやら指は盾の持つ部分に引っ付いたまま失われてしまったようだった。そこで、俺は奇跡の水を飲ませてみた。噂では失われた腕を復元したということだったからだ。
その効果は驚くべきものだった。
ガラフがその薬を飲むと一瞬光に包まれたかと思うと、失われた指が再生されたのだ。
「すまない。ワシのために……」
ガラフは申し訳なさそうにしていた。
「いや、ガラフ以外の皆は1本ずつ飲んでいる。それに、こんな時のための薬じゃないか。まだ、全部で6本残ってるから大丈夫だ。気にするな。」
「それが………ワシも一本飲んでしまっておるんじゃ。ワシも呪いにかかっておったからのぅ。」
それは初耳だった。ティーエもマヤカも言っていたが呪いとは一体……
「それでもまだ5本残っている。この薬の効果は本物だという事が分かった。1本持ち帰ればいいと考えれば、あと4本も余ってるんだ。絶対にみんなで無事に帰ろう。」
俺は皆を鼓舞した。ここでギクシャクするよりは、団結して前に進んでいくべきだ。
帰路125日目
~魔法使い・ティーエの視点~
キマイラの戦闘の後、ジークは剣をすべて失い、ガラフは盾を失い、私たちのパーティーの戦力は激減しました。
私たちは平原を慎重に進みました。平原には丘や木々もあったので、私たちは隠れるようにして進んでいきました。その進路は目的地まで直線的に進むのではなく、物陰に隠れるために、蛇行しながら進みました。
そのせいで、行きよりもかなりの日数を使い進んでいきました。
そして、なんとか、砂漠地帯一歩手前の山脈地帯に辿り着きました。
この山脈を越えると、少し樹海が広がっており、その後は砂漠地帯になります。そこさえ抜ければ、あとは密林を抜けて船で南の大陸へと帰るだけでした。
しかし、この山脈越えには2つ問題がありました。1つは季節の問題でした。当初の予定と違い、季節は冬になっていました。山頂は凍えるような寒さとなっているでしょう。
そして、2つ目は、この山頂付近には飛竜が生息しているということです。行きは、私の魔法とジークのオリハルコンの剣があったおかげでなんとか倒せましたが、今の杖のない私と剣を持たないジークではどうしようもありませんでした。
1つ目の問題は春まで待って、この山脈を越えようということで解決しました。山の麓付近に、私の土魔法で家の土台や大まかな部分を作り出して、ガラフが木や岩などを使い玄関や窓などの細かい部分を作りました。私とマヤカ専用のお風呂もちゃんと作りました。
水や火は私がいる限り不自由することがありません。あとはジークの武器です。なんとかしないといけません………
帰路140日目
~ドワーフ・ガラフの視点~
ここで、待機したのは幸運だったとしか言えない。ワシがそれを発見したのは偶然じゃった。
ここで春まで待機しようと決めて、ワシは食料を狩りに出かけた時じゃ。なにやら、洞窟のような入り口を見つけたのじゃ。その洞窟の先から微かに白く光るものを見た。その微かな光をみただけでワシには十分じゃった。
その光の正体はプラチナじゃった。プラチナはミスリルよりも上位に位置する鉱物じゃ。その性能もミスリルより上じゃ。それに、プラチナなら1800℃もあれば融解するはずじゃ。だから、ティーエの火の魔法があれば、ここでも加工することできるはずじゃ。
オリハルコンよりは劣るが、オリハルコンはどうせここでは加工することができん。ジークの鎧を直すことができないのはそのためじゃ。オリハルコンを加工するには、複数の術師により炎を100万℃にまで達することができなければいけない。
そういう意味では、オリハルコンを見つけるよりも今のワシ達には幸運な事じゃった。
ワシはさっそくジークの剣の制作にとりかかった。春までには時間はある。防具やワシの斧なども制作してやろう。
帰路157日目
~僧侶・マヤカの視点~
私は最近ティーエと一緒にお風呂に入る。私とティーエの間に何かあるかと言えば、全くそうではない。私の心は魔王様の事でいっぱいなのだ。
ではなぜ一緒に入るかといえば、ティーエの魔法で、水も出るし、火の魔法で水を沸かすこともできるから、一緒に入った方が効率がいいからである。体を綺麗にしたあと、魔法で洗い流してもらえるし、温度の調節も頼めばやってくれるからだ。
ティーエはこの冒険に出たのが14歳の時だった。しかし、今は16歳になっていた。そして、最近ある悩みを抱えており、私と2人きりになるお風呂でよく相談に乗っていた。
「私はこの旅に出たのは失敗だったかと後悔しています。」
ティーエは最近ある悩みのせいで悲観的になっていた。
「いや、こうして、薬も手に入ったし。この薬を王様に届ければ一生遊んで暮らせるよ。それに、南の大陸を渡った勇者の一行としてみんなから声援をもらえるよ。ティーエの言ってた大魔導士としての伝説の1ページを彩ってくれるよ。」
私はティーエを慰める。
「いえ、そのために失った代償はあまりにも大きかった……」
「いや、でもまだ大丈夫だよ。希望はあるって聞くよ。」
「まだ、大丈夫ですかね?どうすればいいんですか?」
目を輝かせて、私に詰め寄ってくる。
「その……マヤカさんが羨ましいです。」
ティーエは私の胸を見ながら続けた。
そう、ティーエは自分の胸が成長しない事に悩んでいたのだ。ティーエの胸は膨らみがまったくない絶壁だった。
私はそれを見て気の毒に思った。その体では一部のマニアには受けるでしょうが………
そして、ティーエはその胸の成長しないのがこの過酷な旅に原因があると思い込んでいたのだ。成長期にこの旅に出たために、胸に栄養がいかなかったと嘆いていたのだ。
私は思いつく解決策を口に出した。
「胸を揉むと大きくなるって聞くよ。」
「えっ?!」
ティーエは顔を赤らめていた。しかし、自分の胸を見て、おそるおそる自分の胸に両手を伸ばしていた。
「こうですか?」
2、3回軽く揉んだ後聞いてきた。
何かいけない事を教えているような気がした。
「けど、揉んだから大きくなるってのは迷信かもしれないし。」
私は慌てた。
「それに、ティーエもこれからきっと大きくなるって。」
「そうだといいんですが………本当に私はこの旅で大切なものを失ってしまいましたよ………」
「それは何?」
聞くまでもない事だった………
「それは、私の胸です……」
風呂場に静寂が流れた………
『 奇跡の水 』 残数 5 本
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