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第一章 ルード皇国 編

人ではない何か

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 目を覚ますと、俺はベビーベッドの上に横たわっていた。天井を見上げると、ガラス張りになっており、空が一望できた。そして、そのガラスの向こう側には、満点の星空が広がっていた。

同じ部屋には、他に2人の気配があった。会話が聞こえてくるのだが、どうやらまだまだ疲れているようで、気を抜くとすぐに深い眠りに落ちそうになる。

「・・・この地区で育てる許可が下りた。・・・・・。」

「・・・あんな子を利用するなんて、可哀そうだわ・・・」

「・・・・・あの森に人がいること自体考えられない・・・それも赤子だ・・・・・何か意味があるのかもしれない・・・」

「・・・可愛らしい子供にしか見えないわ。・・・私もこんな状態だし・・・・・」

「・・・その解決につながるかもしれない・・・・」

「・・・私のことはもう・・・そんなことよりあの子は我が子として育ててあげたいわ。・・・」

「・・・そうだな・・・」

 会話の流れとしては俺をひきとってくれることが決まったということか。何にしても良かった。俺は安心から再び深い眠りへとついた。

 赤ん坊の仕事は寝ることだとは、よく言ったもので俺は一日の大半を寝て過ごした。いろいろとしたいことはあったのだが、自分では体を動かすことができずに、仕方なく睡魔に負けて眠るということを繰り返した。
しかし、ただずっと眠っていたというわけではない。情報はどんどんと集めていった。
 あれから分かったのは、俺を助けてくれたイケメンはアギリスという名前で、その妻はルーラという名前だということ。そして、この夫婦は森で拾った俺を自分の子供として育ててくれることになったこと。どうやら、何かしらの助けとなることを期待しているようなのだが、それが何かまでは全くわからない。自分に何か能力を見出して、期待しているのであれば、それに応えたいと思っている。

 ルーラは、すごい美人で20歳くらいに見えた。髪の色は金髪というよりはやや黄色に近く、瞳の色は少し赤みがかっているのが、前の世界の常識とずれがあった。しかし、そんなことは気にならないほど美貌を彼女は持っていた。

「母さんのルーラですよ。あちらが父さんのアギリスです。そしてあなたは、私たちの息子、アギラです。元気に育ってくださいね。」

 俺はほぼ毎日、ルーラに抱かれてこの言葉をかけられた。
俺はこの新しい世界でアギラという名前をもらったのである。そして、まだ1歳にも満たない赤ん坊にとっては拾われたことを知っていてはいけないのである。ということは、2人のことを本当の父と母と思うことが最善であることに思えたのである。

そうして、まだ歯が生えそろってない俺は何とか発声できたのは、
「 マーマ、、、パーパ。」
という一言であった。

それを聞いたルーラは
「喋ったわ、私のことをママだと。あなたのこともパパと言ってるのよ。」
満面の笑顔で、俺のことを抱きかかえていた。

「マーマ、パーパ」
ルーラが嬉しそうにしてくれるので、俺も嬉しくなって何度も呼んだ。

 俺の食事はというと、牛のミルクを哺乳瓶で飲ましてもらっていたのだが、ルーラがそれだけでは足りないのではということで、近所の人を乳母として雇ったのだ。その乳母は、名前をシンディーといった。ルーラとは仲が良く、丁度シンディーにも子供が生まれたばかりで1人に乳をやるのも、2人にやるのも変わらないということで、俺にも乳をくれるということだった。俺としては恥ずかしいので哺乳瓶でもよかったのだが、断ることもできなかった。

 シンディーは、赤い髪で胸はかなり大きく、日に焼けた体は褐色で健康的だった。そして、ルーラとは違うタイプの美形だった。歳はルーラと同じく20歳くらいに見えた。

 俺は右手に抱えられ、シンディーの乳首を咥えて、乳を吸った。すごい恥ずかしかったが、いくらか飲むと睡魔が襲ってきて、心地よい気分で眠りについた。

 ルーラは、あまり元気な体ではなかった。というよりも、疲れやすい体質なのか、一日の大半をベッドで過ごしていた。そして、俺はそのベッドの隣に設置されたベビーベッドで寝たり、ルーラのベッドで一緒に寝たりしていた。

 こうして、俺の日常が過ぎていく中、俺は驚愕の事実に気づいてしまった。
それに気づいたのはシンディーが娘のウェンディーを抱いて、俺の世話をしに来てくれたときだった。
シンディーは椅子に座り、腕と膝を使い、俺を右手に、ウェンディーを左手に抱いて、同時に乳をあげようとした時に、俺は初めて気づいたのだ。

 ウェンディーの尻のあたりから、ドラゴンの尻尾のようなものが生えており、それが丸まってウェンディーのお腹のところまできていたのある。
 この時初めて理解したのである。自分が人ではない何かによって育ててもらっていることを・・・
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